シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

城北中学校

2017年06月掲載

城北中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.自由研究や校外学習の取り組みも熱心

インタビュー3/3

中1の最初の顕微鏡観察は「漢字一字」を“観察”

竹村先生 本校では実験・観察を積極的に取り入れています。中学は週4時間、実験・観察はだいたい月2回です。私が教えている高2の地学は、3回に1回程度は実験の形式に限らず何らかの作業をさせています。
実験室は、中学棟に2つ、高校棟に6つ(物理2、化学2、生物1、地学1)あります。3名の実験助手は実験準備だけでなく、チームティーチングとして実験を指導しています。
中1の最初の顕微鏡観察は、生物ではなく紙に書かれた漢字一字を“観察”します。漢字だと上下左右が逆に見える顕微鏡の特徴がよくわかるからです。どのように見えたかもスケッチします。

城北中学校 実験室

城北中学校 実験室

グループワークで活躍しそうな「iRoom」

竹村先生 今年度から、中学棟の既存の教室を改修した「iRoom」の運用を始めました。人数に合わせて組み合わせ自由な勾玉型のテーブルや、ディスカッションの内容を書き込める小型のホワイトボードなど、グループワークがしやすくなっています。

壁三面のホワイトボード、複数の大型モニターやプロジェクター、生徒用iPadが160セット(40×4カート)など、教科問わずいろいろな活用ができそうです。
iRoomをはじめ、校内のICT環境は整っています。今後は、この環境を教員がどう活かすか、アイデアをどんどん出し合って授業に反映させていく段階に入っていると思います。
中1はどの教科でも積極的に発表の機会を増やしています。理科は、実験・観察した結果をレポートにまとめて、iPadを使って発表するところまで行うようにしています。

城北中学校 iRoom

城北中学校 iRoom

iPadなら実験を即、動画で振り返られる

授業でどのようにiPadを活用していらっしゃいますか。

竹村先生 私は物理も教えていて、波の実験で用いました。ダイナミックな波の動きを表現するウェーブマシンを使って波の様子をiPadで撮影しました。その動画を即、教室のモニターでスロー再生します。波の実験はあっという間に終わってしまいますが、今、目の前で行った実験をすぐに見られるのはiPadならではでしょう。印象に残りやすく、学習効果も高いと思います。

モニターに水性ペンで直接かくこともできるので、動画を停止して波をペンでなぞり、波が数秒後にどう変わるか予測したり、比較したりもしています。
生徒が実験できない現象については、生徒の想像に頼るところがありましたが、動画はイメージする助けになると思います。iPadありきではなく、生徒にどんな力をつけたいか、そのためにどこでiPadを使うか、手段として考えています。

特に優秀な自由研究は中学全員の前で発表

竹村先生 本校が長年取り組んでいるのが、夏休みに中学生に課している理科の自由研究です。
教員はサポートしますが、生徒が自分で研究テーマを見つけて、実験を組み立てて実行し、結果を考察してレポートにまとめます。生徒が一からテーマを見つけるのは難しいので、過去の先輩たちの研究テーマや、自由研究のアイデア本を参考にします。ただし、それをそっくりそのままやるのではなく、その生徒なりの視点を加えるよう指導しています。

例えば、自由研究のアイデア本に、「紙の長さによってどのように強度が変わるのか」を調べた実験があったとします。「紙の太さを変えたら?」「紙の種類を変えたら?」「ぬらしたら?」というように、アイデア本をヒントにオリジナルの考えを加えます。
優秀な自由研究は、その要約を冊子にまとめて中学生全員に配布します。金賞の研究は文化祭で発表し、特に優秀なものは中学生全員の前で口頭発表をします。学内での発表のほかにも外部のコンテストに応募しています。

城北中学校 自由研究優秀作品集

城北中学校 自由研究優秀作品集

生徒のユニークな着眼点、発想力に教員も刺激

自由研究の内容をいくつか教えていただけますか。

竹村先生 都市化が進み空き地が少なくなったために洪水などの災害が増えている、というニュースを見た生徒が、それは本当か確かめる実験を行いました。都市の模型を作り、土を敷いた部分を空き地に見立てて、じょうろで雨を降らせて水の流れ方を観察しました。発想力が光るおもしろい実験です。

砂防ダムを取り上げた生徒もいました。砂防ダムは、通常は水をためず、土砂災害が起きた際に土砂をせき止める山岳部にあるダムです。牛乳パックと割り箸で作った砂防ダムの配置をいろいろと変えて、最も土砂を防ぐことができる条件を探りました。
これに似た発想に津波があります。津波に目をつける生徒は一定数いますが、防波堤に着目した生徒がいて、ユニークな着眼点だと思いました。
彼らの研究を見ると、自分で実験装置を作り、心から楽しんでいるなということが伝わってきます。「楽しめる」こともとても大事なことだと思います。

理科の展示コーナー(高校棟)

理科の展示コーナー(高校棟)

校外学習は実物を見て触れるいいチャンス

竹村先生 中学では校外学習も行っています。普段の授業では学べない事柄を、生徒が展示を見たり、実物に触れることで、自ら体験し、新たな興味・関心を引き出します。
中1は上野動物園で、水辺の動物、草原の動物などテーマに沿った動物の相違点を観察し、スケッチします。上野動物園のスタッフの方にご協力いただき、ミニ講演会も開いてもらっています。
中2は、国立科学博物館で地学・化学を中心とした地史や物質の探求をします。巨大なフーコーの振り子で地球の自転を目で確かめることができます。
中3も国立科学博物館で、進化の分野を中心に探究します。ほ乳類や鳥類の剥製の展示が充実しているので、系統や多様性を感じながら生態系を考えるワンランク上の思考を求めています。

名称がついて分類できると「違い」が見える

竹村先生 地学の学習では「自分で考える」ことを大事にしたいと思っています。地層の単元では地層をつくる岩石を学習しますが、ここで大事なことは、学ぶ前はただの「岩」や「石」だったものが、名称で分類できるようになり、成因(でき方)や成分など「違い」が見えてきます。
名称は覚えるためのものではありません。分類することで様々なことが見えてきて、いろいろなことに応用できます。このように、理科の学びを通して様々なことに応用できる考え方を身につけさせたいと思っています。

城北中学校 中庭

城北中学校 中庭

インタビュー3/3

城北中学校
城北中学校都立城北中央公園と石神井川に沿った緑豊かな環境に、約4万平方メートルもの広大なキャンパスが広がり、創立50周年を記念して建設された校舎には充実した学習・スポーツ・文化施設が整備されている。厳しい寒さにも耐え、春を告げる花の代表格である桜の花をあしらったデザインが。城北学園のマーク。創立からの、着実・勤勉・自主の精神と質実厳正の姿を象徴しています。
6年間を2年ずつ「基礎期」「錬成期」「習熟期」の3期間に分けて連携させる「3期体制」。その経験とノウハウから生まれた理想の教育プログラムは、難関大学への高い実績を生み出し、各界で活躍する卒業生の輩出している。各期間で生徒の発達段階に応じた目標を掲げ、一人ひとりの生徒が目標の達成に向かって努力し、成長を遂げられるように指導が行われている。
活発なクラブ活動は城北学園の伝統。全国レベルにある部活動も多く、運動部では、ラグビー部、少林寺拳法部、水泳部(水球競技)、文化部では、ラジオ部や囲碁将棋部が過去に全国優勝を果たしている。運動部や文化部。すべてがひとつになって城北学園の圧倒的なムーブメントを生み出している。