出題校にインタビュー!
田園調布学園中等部
2017年06月掲載
田園調布学園中等部の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.言葉を学ぶ国語。それだけに人間的な成長につながる教育を意識している。
インタビュー2/3
記述問題が多いのが特徴
国語の問題全体を通して大事にしていることを教えてください。
佐藤先生 全体的に記述問題が多いです。なぜかというと、自分の言葉でまとめて伝える力と結論だけでなく思考の過程も見たいからです。それは「文章をきちんと読めているか」ということだけでなく、「どうまとめるか」というところも含みます。
今回は作文を入れたので、そちらでは主に表現力を見ていますが、従来型の読解問題では文章を組み立て直す力を重視しています。そういう力を問う問題も、何問か記述問題で出しています。
男の子が出てくる物語が多いですよね。
佐藤先生 性別は特に意識していません。登場人物が受験生に近いほうが心情を追いやすいと思うので、できれば同年代の女の子がいいとは思いますが、物語文では登場人物が受験生の年齢に近いかどうかだけではなく、心情の変化や成長が見られる場面があるかといったことなどを総合的に見ています。
田園調布学園中等部 先生
小学校時代に言葉を増やそう
小学生時代に学習してきてほしいことはありますか。
佐藤先生 2つあります。1つは、言葉が豊かになるように勉強してきてほしいということです。表現力を支えるのは語彙力です。ですので言葉を増やすために、たとえば、なんでも「かわいい」という言葉で片付けるのではなくて、一歩立ち止まり、表現するにふさわしい言葉を探してみる、ということをしてほしいのです。
細野先生 昨年、受験生を対象に行った授業体験というイベントで、佐藤が行った授業は言葉を探すというテーマで行いました。
佐藤先生 授業体験では、7つのグループをつくり、それぞれのグループに違う花を1輪ずつ用意しました。そして「担当した花の魅力を表す言葉を言ってみましょう」という課題を出したのです。ただし「かわいい」「美しい」「きれい」「すごい」は言ってはいけない、というルールを設けました。「それ以外の言葉で、ぴったり当てはまる言葉を探してください」と言うと、受験生は「えっ」となって、「『かわいい』以外になにがあるの?」という表情をしていましたが、たとえばコスモスのグループには、「茎が細いけど、これをどう表現する?」と聞くと、「華奢(きゃしゃ)」「健気(けなげ)」などの言葉が出てきました。ユリのグループは「清楚」など、立ち止まって考えると、少しずつ言葉が出てくるようになりました。
言葉を引き出す花選びがポイント
教室に入ったらさまざまな花があって、小学生は喜んだでしょうね。
細野先生 生花を教材で使う国語の授業は、体験したことがない受験生がほとんどですからね。
佐藤先生 この授業のいいところは、花選びを間違えなければ、言葉が出てこないということがないところです。トルコキキョウのように個性を見つけにくい花は難しいので、かすみ草、ユリなど、個性があり、趣の異なる花選びを心がけました。1人が発言すると、他の生徒もつられて言葉が増えていきます。
他のグループの花と比べて、「どちらもかわいいという表現が浮かぶけど、よく見ると違うよね」と問いかけると、「なるほど」「そうだな」と気づいて、考えるようになります。辞書を引けば類義語が出ていますから、そういうことも教えながら言葉を増やしていきました。
普段の生活の中でも、「かわいい」という意味の広い言葉で済ませてしまうのではなく、立ち止まって「なにかいい言葉はないかな」と考え、「こんな言葉があった」とひらめく。そんな体験を積み重ねていくと、言葉に対する関心が高まりますし、少しずつ言葉が豊かになっていくのではないかと思います。
そうやって言葉を増やしたうえで適切な言葉で読む人にとってわかりやすい文章を書く練習をすると表現力が磨かれていくと思います。
田園調布学園中等部 図書館
読書でも筆者の主張を正確に読む
佐藤先生 もう1つ、小学生時代に学習してきてほしいことは、筆者の主張を正確に読み取るために筆者の主張を謙虚な姿勢で読む体験です。文章を書く人は、読む人に伝えるために表現の工夫をしているわけですよね。それを受け取るには、読み手も書き手に寄り添い、謙虚に読んでいく姿勢をもつことが大切だと思います。読書=筆者と読者との対話。相手は書かれている以上には言葉を発してこないので、その分、素直な姿勢で向き合うことが大切だと思っています。
個とグループによる学習をバランスよく組み合わせる
グループ学習は、授業でもよく行いますか。
細野先生 グループ学習は授業の中でも行いますが、それだけで終わることはないですね。思考させるには基礎基本をインプットする授業が必要なので、65分の授業の中でバランスよく行うようにしています。
佐藤先生 私も、授業では最初からグループにしません。個人で考える時間を必ず取り、次にみんなで考える、というように、時間で区切って段階を踏むことを大切にしています。グループにすると、逆に主体性が削がれることがあります。主体性を確保するには、個の時間が大切だと思います。
田園調布学園中等部 授業の様子
柔軟な対応で力を引き出す
細野先生 数学は、個でやっていると詰まることがあります。そういうときに周りに聞いて教えてもらうと、詰まりの原因になっていたものがなくなって、スラスラスラッと解けることがあります。それが自信になることもあるので、生徒の様子を見ながら、うまく使い分けることを心がけています。また、生徒には「できなくても大丈夫。練習すれば必ずできるようになるから、わからなかったらいつでも聞いて」と伝えています。
国語の論理性が数学にもつながっているのかもしれませんね。
細野先生 数学では「行間を説明できるようにしなさい」と言っています。「なぜその一文が出てきたのか」と投げかけて、考えさせています。
よく読むための授業が待っている
入学後、中高6年間の国語の授業で大切にしていることを教えてください。
佐藤先生 中高6年間では文章の読む方を身につけてほしいと思っています。たとえば文章を読めない生徒は、どういう視点で読めばいいのかをわかっていません。ですから、視点を与えたり、方法を問いかけたりしていきます。
「なぜ、具体例が2つも入っているのか」「具体・抽象、具体・抽象と繰り返しているのはなぜか」そんなことを問いかけると、生徒は「なぜだろう」と考えて、文章の構成に気づきます。そういう体験を重ねることにより、読み方が身についていきます。
ほかの文章を読んだときに、具体例がいくつも出てきたら「なぜだろう」と立ち止まり、文章の構成に気づくことができる。授業では、そういう視点を身につけていってほしいと思っています。思考のくせをつくるというか、考える道筋をつくることが大事なことだと思っています。
田園調布学園中等部
インタビュー2/3