シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

カリタス女子中学校

2017年05月掲載

カリタス女子中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.中高は「女子校がいい」という生徒たち。授業でもよく話し、盛り上がる!

インタビュー3/3

信用できる情報か否かを判断する方法を身につけさせたい

中高時代に身につけさせたいことを教えてください。

大瀧先生 最近、社会科で話題になっているのは、インターネット上の情報をどう取捨選択するべきか、ということです。その方法を学校で教えたほうがいいのかなと思っています。本校では、高1の現代社会の授業と並行して、レポートを書かせています。そのときに、インターネットで情報を引っ張ってくる生徒が少なくありません。いまどき大学生もそうなのかもしれませんが、この情報は信用できる、できないという判断をどのようにするのかを、学校として教えるべきなのではないかと思うのです。

先日、インターネットで「教育勅語ってなにが悪いの?」という記事を目にしました。「この人は読んだのかな?」と思い、調べてみると、現代語訳しか読んでいないよう。自分が読んだ本を紹介しているのですが、かなりの意訳で、大切な部分が意訳になっているような気がしました。天皇家、皇室という部分がカットされていて、「大変なことになったら国家のために頑張りなさい」というところだけになっているのです。現代語訳だけを読んだら、それほど悪いものに思えませんし、歴史的な勉強をそれほどしていなければ、「なぜ、これが悪いと言われているのか」と、言いたくなるかもしれません。
これは一例ですが、自分で本当のところを確かめるという姿勢は必要なのではないでしょうか。せめて「現代語訳をそのまま受けとめていいのか」と、一度は疑問に思ってほしいと思います。

カリタス女子中学校 校舎

カリタス女子中学校 校舎

1年がかりで取り組む「年間研究レポート」は34年目

その姿勢を身につける方法として、どのようなことが考えられますか。

大瀧先生 きちんと勉強する、研究する、ということでは、本を読むべきだと思います。ご存知のとおり、本当に本を読まなくなってきています。新聞記事によると、大学生の半分くらいが本を読まなくなっているようです。本を読まずして、どう勉強しているのかと思うのですが、それが現状なら中高のうちに本を読むように仕向けていきたいと思っています。

水島先生 30年以上続いている「年間研究レポート」が、鍛錬の場になっていると思います。

大瀧先生 そうですね。インターネットの情報をそのまま貼りつけて提出する生徒もいますが、基本的には「本を読んで考えをまとめていきなさい」という指導をしていますから。

水島先生 1つのテーマに絞り込み、1年間を通して研究し、レポートを書き上げます。今年で34年目になります。2020年以降の大学入試改革が盛んにいわれていますが、本校の場合、30年以上も前からやっています。

カリタス女子中学校

カリタス女子中学校

授業の課題として本を読ませる

大瀧先生 高校では、授業が地歴公民に分れているので、担当者の判断で本を読ませて、書かせるという課題を出しています。私も、本を読ませる課題を出しています。原稿用紙に自分の考えを書かせると、「課題でなければこの本を読んでいなかったと思うけど、読んでみると意外と面白かった」などと書いてきます。そういう地道なことを続けていかなければいけないと思っています。

どのような本を課題に出すのでしょうか。

大瀧先生 私は日本史をメインに担当しているので、例を挙げると『義経記』とか。この本は義経の死後、かなり時が経ってから書かれたもので、現代語訳を読ませると、「ものすごくおもしろかった」という意見が多く寄せられる1冊です。効果を出すには、本当におもしろいものを選んで読ませなければいけません。そういう意味で間違いないのは『きけ、わだつみのこえ』です。生徒が書いてきた文章を読むと、真剣に受けとめている生徒が多いです。

生徒は知識が豊富。自由に披露できる場をつくるとよく話す

水島先生 私は、高校生が中心ですが、中2の授業も担当しています。印象としては、意外といろいろなことを知っていて、問いかけるとワーッと知っていることを話してくれます。たとえば「ヨーロッパの中世の人々の生活はルネッサンスや大航海時代を経てどう変わっていったか」をテーマに授業を行うときに、シンデレラを題材にします。「なぜシンデレラは12時に脱出できたのかな?」などと聞くと、「自分がシンデレラだったら、ずっと踊っている。だから12時になったことに気づかない」など、いろいろなことを言ってくれます。近代ではドイツの統一が教科書に入っていますが、ドイツの統一にグリム兄弟がものすごく関わっています。グリム童話の成立はドイツの統一と切っても切り離せないので、そんな話をすると乗ってきます。

中学レベルの世界史は、今の学習指導要領だと日本史メインの中に細切れのように入っています。下手をすると「あれはなんなの?」となりかねないので、日常の、知っているけれどあまり考えてこなかったであろうことと、そのときの授業のお題を結びつけて聞くと、本当にいろいろなことを知っているなと感心させられるほど意見が出ます。「そうなの?」と、私が教えてもらうこともよくあります。こちらから知識として教えるよりも、自由に話しをさせて、正解に近づくようまとめていくほうが、生徒にとってもいいような気がしています。彼女たちがすでにいろいろ知っていることを、6年間かけて、うまくアウトプットできるように育てていけたらいいなと思っています。

大瀧先生 その子たちが中1のときに私も授業を担当しましたが、同じことを思いました。みんな思い思いに思っていることを言ってくれます。

水島先生 周囲を気にすることなく話せるのが女子校のよさだと思います。

大瀧先生 そうですね。私は時々高3生や卒業生に「女子校ってどうなの?」と聞いてみることがありますが、たいていみんな「よかった」と言います。「大学は共学がいい」と言いますが、中高は女子校肯定派のほうが多いです。勉強だけでなく、いろいろな面で楽しいのだろうと思います。

カリタス女子中学校 校舎

カリタス女子中学校 校舎

インタビュー3/3

カリタス女子中学校
カリタス女子中学校ラテン語で「愛」を意味するカリタス。カナダで、聖マルグリット・デュービルが創立したケベック・カリタス修道女会を母体に、1961(昭和36)年にカリタス女子中学・高校が創設された。62年に幼稚園、63年には小学校が創設されている。
多摩川沿いの閑静な住宅街にあり、緑にも恵まれた環境。2階建てアリーナ、人工芝の広いグラウンド、テニスコート、屋内プールなど、スポーツ施設も充実している。生徒に人気のある図書室は蔵書も豊富で明るくきれい。専用回線で常時インターネットに接続されているコンピュータ室も完備。聖堂や1200名収容の講堂もある。カフェテリアでは飲み物、パン・弁当を販売。06年4月に「教科センター方式」の校舎が完成した。
キリスト教の愛と真理の原理に基づく教育方針。祈る心、学ぶ心、交わりの心、奉仕の心の「4つの心」をもった人間を育成することを目指す。また、異なる文化を理解する力を育み、国際的なセンスを身につけるため、中1から英語とフランス語の2つの外国語を導入。
中1から古典学習や体系的な作文教育を行い、豊かな国語力を育成する。独自の教材も含めて進められる英・仏2つの外国語教育は密度の濃い内容。中1から2時間の授業が設けられた仏語は、高校で第一外国語として履修も可能で、大学入試にも対応する。英語は中学が週6時間のうちネイティブ教員によるオーラル1時間、さらに2016年度より始まった英語既習者クラスではネイティブ教員の時間が2時間ある。中1・中2の理科実験や、英・仏・数の授業は、1クラスを2つに分けたハーフクラスで行われる。補習は必要に応じて実施。高校2年から私立文系・国公立文系・理数の3コース制。大学受験に的を絞った意欲的なカリキュラムで、国公立大、難関私大に多数の合格者を輩出。現役進学率も着実に伸びている。
制服は「カリタスブルー」を基調としたスーツスタイル。放送を通じての「朝の祈り」で1日が始まり、全学年で聖書の心を学ぶ「カトリック倫理」の授業がある。奉仕活動を行うアンジェラスの会を中心に、教育里親の会、バザー、施設訪問など幅広いボランティア活動を展開。球技大会や体育祭、文化祭など学年を越えた交流があるほか、1月の外国語発表会は、学年ごとに劇、歌、スピーチなどで日ごろの語学学習の成果を発表する。中2で2泊3日のイングリッシュキャンプがあり、高1の希望者には、カナダ研修が実施されている。またターム留学やセブ島英語研修も参加者が増えている。高2の修学旅行は九州北部。クラブ活動は、運動部8、文化部14あり、中高合同で活動。