シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

カリタス女子中学校

2017年05月掲載

カリタス女子中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.覚えるのではなく理解することが大切。自分の言葉で説明できる力をつけよう

インタビュー2/3

空欄は少なかった

この時代を選んだのはなぜですか。

大瀧先生 他の時代でもおそらく作れたと思うのですが、歴史の勉強は古い時代から始まります。先生方もそこに力を入れていますが、実はこういうことまでは扱われていないのではないかと思い、出題しました。

採点はどのように行いましたか。

大瀧先生 採点基準が違ってはいけませんので、正解を2点とし、私が全部見ました。判断がつかない解答については、他の者に相談して行いました。結果は、2点が27%、1点が20%強。0点が半分程度でした。採点をしているときから、何かを書いてくれている印象はありましたが、改めて調べると、何も書いていない受験生は2人でしたが、中学入試の問題としては難しかったのかなと反省しています。

大瀧先生 どういう答案が0点になったかというと、この問題文でちらっと埴輪に触れています。それを勘違いして、「土偶や埴輪が作られなくなった」と書いている子がいました。これは事実を間違っているので0点にしました。
また、「卑弥呼」を登場させている解答もありました。卑弥呼は弥生の最後のほうの人。この問題で対象としている縄文時代から弥生時代へ移り変わる時期には関係がないので0点にしました。
もう1つ、0点にしたのは「お祈りをする必要がなくなったから」という解答です。日本の歴史を見渡してみると、お祈りをする人がいなくなった時期があったのか。おそらく仏教が伝わった後、鎌倉、室町、江戸にしても、なにかしらお祈りはしていたはずなので、弥生時代だけお祈りをしなかったと言えるだけの証拠はないと判断し、0点にしました。

カリタス女子中学校

カリタス女子中学校

想定を超えるよい解答もあった

大瀧先生 わりと多かったのは「土偶の代わりに銅剣や銅鐸が作られるようになったから」という解答でした。これはたしかに出てきやすい解答だと思います。しかし土偶が作られなくなったという説明はしていないので、「土偶の代わりに」と言える理由を答えていないと判断できます。ただ、問題文を読んで自分で考えたということを評価して、1点にしました。
そして2点を取った受験生の解答を改めて見直すと、10人くらいがよい解答をしていました。こちらの想定を超える解答で、素晴らしいと思いました。

おもしろい問題なので、書きたくなったのだと思います。

大瀧先生 小学生もなかなかやるなと思いました。たとえば「縄文時代までは土偶で祈り事をしていたが、弥生時代に広まった文化は銅剣や銅鐸を使って祈り事をするので、土偶の文化がなくなっていった」。この解答は、文化という言葉を使いながら非常にわかりやすく説明していると思いました。また「渡来人が来て稲作や宗教、鉄などが入ってきたので、土偶などの壊れやすいものではなく、壊れにくい鉄などが利用された。また、縄文時代とは違う、稲がたくさん実るようになどという祈りをしていて、渡来人がもともといた国の宗教も混ざっていることが推測できる」。この解答は、宗教という言葉を使っていいのかはわかりませんが、きちんと考えて書いているなと思いました。

カリタス女子中学校

カリタス女子中学校

記述問題ではなにを聞かれているのかを読み取ることが大切

大瀧先生 他にも記述問題があったので、参考までに正答率をお話しますね。
【大問1/問5(1)】兵庫の明石を通る経線がなぜ重要か。そういう趣旨の問題でした。これも配点は2点ですが、2点、1点、0点ともに3分の1ずつでした。わりと勉強しているところだったのかなと思いました。
【大問2/問1】予想外によかったのは、養殖業と栽培漁業の違いを聞いた問題でした。この問題の正答率は2点が約57%、1点が約18%、0点が約26%でした。

違いを具体的に書いていたということでしょうか。

大瀧先生 そうですね。作問をしながら「ここは勉強してきているところだよね」と言いながら作ったのですが、実際にきちんと書いてくれていました。わかって書いているなという印象でした。
【大問3/問9】できがよくなかったのは、徳川吉宗が将軍になったころ、江戸幕府が問題を抱えていた大きな問題とはなにか、という問題でした。江戸時代は、米がお金と同じような意味をもっているということを思い出してくれればできたはずなのですが……。例えば「江戸幕府の収入を増やすため」という解答がありました。これは問題の趣旨(収入が足りなくなっていた)から外れているんですよね。なんのためにやったかではなく、なにが問題だったのか、という設問だったのですが、そこに意外とひっかかってしまい、できない子が多かったです。この問題は2点と1点を合わせても、20%に届かなかったです。問題文とともに、問題を解決するために行われた政治を5つ挙げていました。書いてあることを見て、なにが問題だったのかだけを考えればいい問題だったので、これは意外でした。もう少し取ってくれると思っていました。

カリタス女子中学校

カリタス女子中学校

学んだことを自分の言葉で説明できるようにしよう

記述問題を通してどういう力を見ようとしているのでしょうか。

大瀧先生 もっている知識をわかりやすく説明する力、自分なりに考えたことをわかりやすく表現する力です。社会科のテストでよくありがちなのは語句選びですが、それだけだと、なんとなくわかっている、あるいは曖昧に理解している子でも点数が取れます。「点数を取れればそれでいい」と思っている子もいますが、それではいけないと思ってほしいのです。勉強とはそういうものではありません。そういう勉強の仕方では、社会に出て役立たないので、身につけた知識や自分の考えを自分の言葉で説明できる、ということを意識して勉強してほしいと思っています。そういう意味では、記述問題は受験生へのメッセージです。私たちは、記述問題を通して本当にわかっているかどうかを聞きたいということです。

配点はあえて少なくしているのですか。

大瀧先生 難しいことを聞いて、配点を大きくするという方法もありますが、限られた時間で採点しなければいけない入試では、2点がちょうどいいのです。2点だと、いいか、悪いか、中間か。3つの選択肢で済みますが、1点増やして配点を3点にすると、採点基準が細かくなります。採点しやすいという事情で2点にしています。

今回、取り上げた問題以外の記述問題でも空欄はあまりなかったですか。

大瀧先生 先ほどの江戸時代の問題は空欄が目立ちました。空欄以外の印象では、たくさん書いてくれる子が意外と多いということです。解答欄は3行程度のスペースですが、小さな字で4行、5行書いている子もいました。書くこと自体には、ある程度慣れているのかもしれません。

カリタス女子中学校

カリタス女子中学校

時事問題が多いのが特徴

社会科の入試全体で大切にしていることを教えてください。

大瀧先生 2年前に地理の問題を取り上げていただいたときにお話したことと、あまり変わっていません。大きく5つのことを作問のポイントとして共有しています。

1つ目は、基本的な知識や理解
2つ目は、初めて見るものから、その傾向や現象を読み取る力
3つ目は、読み取ったことと、身につけていた知識、理解を結びつけて考える力
4つ目は、自分なりの考えを引き出して、わかりやすく書く力
5つ目は、時事問題 以上です。

社会科の教員が集まって問題を作りますが、入試問題は受験生と我々との対話のようなもの。こちらが「これを知っていますか?」と聞いたことに対して、「それはこういうことですよね」と答えてくれる。そういうことを意識して作っています。入試問題は「こういう勉強をしてきてほしい」というメッセージでもあるので、過去問を通して、我々が求めていることを理解していただくということも意識して作っています。

時事問題が多いですよね。

大瀧先生 時事的なテーマを意識して作るというのは、1つの特徴です。今、起きていることを自分なりに受けとめることができる子どもであってほしいという、期待を込めて出題しています。考えるためには、幅広く情報を集めることが重要です。情報の幅が少ないと、考えが偏って間違った方向に行くことがあるので、幅広く情報をキャッチするということを意識してほしいです。

カリタス女子中学校

カリタス女子中学校

インタビュー2/3

カリタス女子中学校
カリタス女子中学校ラテン語で「愛」を意味するカリタス。カナダで、聖マルグリット・デュービルが創立したケベック・カリタス修道女会を母体に、1961(昭和36)年にカリタス女子中学・高校が創設された。62年に幼稚園、63年には小学校が創設されている。
多摩川沿いの閑静な住宅街にあり、緑にも恵まれた環境。2階建てアリーナ、人工芝の広いグラウンド、テニスコート、屋内プールなど、スポーツ施設も充実している。生徒に人気のある図書室は蔵書も豊富で明るくきれい。専用回線で常時インターネットに接続されているコンピュータ室も完備。聖堂や1200名収容の講堂もある。カフェテリアでは飲み物、パン・弁当を販売。06年4月に「教科センター方式」の校舎が完成した。
キリスト教の愛と真理の原理に基づく教育方針。祈る心、学ぶ心、交わりの心、奉仕の心の「4つの心」をもった人間を育成することを目指す。また、異なる文化を理解する力を育み、国際的なセンスを身につけるため、中1から英語とフランス語の2つの外国語を導入。
中1から古典学習や体系的な作文教育を行い、豊かな国語力を育成する。独自の教材も含めて進められる英・仏2つの外国語教育は密度の濃い内容。中1から2時間の授業が設けられた仏語は、高校で第一外国語として履修も可能で、大学入試にも対応する。英語は中学が週6時間のうちネイティブ教員によるオーラル1時間、さらに2016年度より始まった英語既習者クラスではネイティブ教員の時間が2時間ある。中1・中2の理科実験や、英・仏・数の授業は、1クラスを2つに分けたハーフクラスで行われる。補習は必要に応じて実施。高校2年から私立文系・国公立文系・理数の3コース制。大学受験に的を絞った意欲的なカリキュラムで、国公立大、難関私大に多数の合格者を輩出。現役進学率も着実に伸びている。
制服は「カリタスブルー」を基調としたスーツスタイル。放送を通じての「朝の祈り」で1日が始まり、全学年で聖書の心を学ぶ「カトリック倫理」の授業がある。奉仕活動を行うアンジェラスの会を中心に、教育里親の会、バザー、施設訪問など幅広いボランティア活動を展開。球技大会や体育祭、文化祭など学年を越えた交流があるほか、1月の外国語発表会は、学年ごとに劇、歌、スピーチなどで日ごろの語学学習の成果を発表する。中2で2泊3日のイングリッシュキャンプがあり、高1の希望者には、カナダ研修が実施されている。またターム留学やセブ島英語研修も参加者が増えている。高2の修学旅行は九州北部。クラブ活動は、運動部8、文化部14あり、中高合同で活動。