出題校にインタビュー!
栄光学園中学校
2017年05月掲載
栄光学園中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.「こうなるはず」の理屈でちゃんとわかる
インタビュー1/3
「空間認識力」の半分は理屈で理解している
井本先生 入試問題は、子どもたちが解いて楽しい、入試が終わってからも考えたくなるような問題を作りたいと思っています。この問題は頭の中でサイコロを動かし、イメージしながら解いていきます。頭を使う、楽しめる問題だと思います。
空間図形が苦手な理由の1つは、頭の中で三次元空間をイメージできないことが挙げられます。頭の中でパッとイメージできるのは、ごく限られた力のある子どもだけです。それでも成長するにつれて、イメージできないところを「こうなるはず」と理屈で補えるようになります。
「空間認識力」と言われる半分は、理屈で理解しているのではないかと私は思います。例えば、立方体を対角線で切断すると、切断面は正方形ではなく長方形です。その際、頭の中で切断面を思い浮かべるだけではなく、「立方体の一辺の長さと対角線の長さは違う」という理屈でも補います。
この問題では、「こうなるはず」という理屈をつかみ取る力が求められます。理屈は1つだけではありません。正解にたどり着くには、「こうなるはず」という理屈を「すべて」すくい取る必要があります。
数学科/井本陽久先生
ちゃんとわかったかどうか、別の角度から確認する
井本先生 この問題の解き方はいろいろあると思います。数字の面と面に「共通する線」に着目した受験生もいれば、3つの面に「共通する点」に着目した受験生もいたでしょう。
この問題は、実際にサイコロを作って答えを確かめられます。受験後、帰ってから確認した受験生がいたかもしれません。わかったかどうか実際に確かめることは、小学生や中学生にとって大事です。
この問題を通して多面的に理解する力も養うことができます。理屈を当てはめて導き出した結果が、別の考え方でも、実際に作ってみても同じになるか、いろいろな角度から確認できると「ちゃんとわかった」と言えます。
採点は受験生の考え方を最大限くみ取る
この問題の出来具合はいかがでしたか。
井本先生 点差がつく、合否にかかわる問題になりました。採点基準は、採点前に受験生の答えを予想して設けたものと、実際に受験生の答案を見て設けた基準があり、途中点も付けています。
答案はかなり丁寧に見ているつもりです。単純に○×だけで判断せず、受験生の考え方を最大限くみ取るように努めています。誤答には誤答なりの理由があります。想定外の誤答を見つけたときは、誤答の理由をとことん考えます。
それだけ丁寧に答案を見て採点してもらえるというのは、受験生の励みになると思います。
井本先生 中1を見ると、ロジカルな考えを言語化するのは時間がかかります。ですから小学6年生の力量を測るのに、記述させればいいわけではないと思います。わかっているのは読み取れるけれど、伝わらない書き方だから点数をあげないというのはもったいないし、子どもはやる気を失っています。小学生や中学生の答案は、こちらができるだけくみ取るようにしています。
栄光学園中学校 校舎
多面的にとらえられる子どもは「まね上手」
井本先生 空間図形の問題で、まれに“正解が見える”子どもがいます。幼い頃から自分で手を動かしてものを作る経験が豊富な子どもは、理屈で考える前に、頭の中で三次元空間を思い描くことができます。考えたことを頭の中で整理する力と、理屈をのぞく真の意味での空間認識力は共通部分が多い。空間認識力が高い生徒は三次元的に情報を整理できるため思考力も高く、地頭もいい。ただ、そうした生徒は本校でもごく少数です。
イメージできないところは理屈で補えばいいのです。理屈として「AならばB、BならばC、ゆえにAならばC」という論理だけでなく、「こうなるはず」という要素をどれだけ見つけられるかどうか。言い換えると、多面的にとらえる力があるかどうかということです。
物事を多面的にとらえる力の有無は、証明問題の答案を見るとよくわかります。書き方の手本を参考に、類似問題の答案をきちんと書ける生徒はかなり頭がいい。なぜかというと、「まねる」というのは簡単なようで実は難しいからです。
「①、②、③……の番号を付ける」「タイトルを付ける」といった目に見える表記のルールだけでなく、「計算式ごとに改行する」「1行空けて段落の区切りをはっきりさせる」など、直接的な表現以外のところも気づけると、より手本に近い答案になります。
栄光学園中学校 教室
インタビュー1/3