シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

成蹊中学校

2017年04月掲載

成蹊中学校【理科】

2017年 成蹊中学校入試問題より

太郎君はお父さんと一緒に千葉の習志野市にある谷津干潟(やつひがた)<写真>に自然観察に来ました。

写真

(問1)お父さんは干潟がなくなっていくことに危機感を抱いています。昔から干潟は干拓(かんたく)され、農地化されました。高度経済成長期には多くの干潟がうめ立てられ、農地となりました。どうして干潟は干拓されやすいのか、その理由を答えなさい。

(問2)干潟を守る上で何が重要か、あなたの考える「干潟の保護」を1行で述べなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この成蹊中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(問1)干潟は遠浅なので広い平地が得やすいから。

(問2)(解答例)
干潟の持つ役割や価値を学ぶ。
ゴミの埋め立てを減らすためにリサイクルを積極的に行う。

解説

干潟は細かい泥や砂がある程度の広さにたい積することによってつくられます。干潟は遠浅で傾きがゆるやかなので、まとまった広い平地を得られるという点で干拓するのに都合がよい土地だったといえます。高度経済成長期には人口が増加したこともあり、食糧生産量を増やすための農地造成として干拓が進められてきました。

しかし、近年では、干潟の持つさまざまな役割や価値(生物多様性の保全、漁業生産の場、水質を浄化する作用、渡り鳥の飛来地など)が見直され、干潟を守っていくことが重要であるという認識が社会全体に浸透してきています。

干潟を守っていくうえで大切なことはさまざまな視点から考えることができます。干潟の持つ役割や価値を多角的に学ぶことから始め、学んだことをもとに具体的にできる行動を考えていくことができるでしょう。たとえば、漂流しているゴミの回収を行う、普段からゴミを減らすためにリサイクルを積極的に行う、干潟を保護する活動をする団体の活動に参加するなどです。

これらの他に、どのようなことが「干潟の保護」につながるでしょうか。私たちひとりひとりが考え続けていく課題といえそうです。

日能研がこの問題を選んだ理由

干潟が干拓などによって開発される理由をとらえ、干潟を今後保護していくために重要なことを「自分ごと」として考え、説明する問題です。

問題に取り組むことで、子どもたちは、あまりなじみのない干潟というテーマについて、科目の枠を超えて多角的な視点から見つめ直す過程を体験します。また、自分なりの考えを説明することによって、自分の考えだけでなく、他の人の考えにも興味を持つなど、自分とは異なる意見に触れたり、新しい答えをつくり出したりすることにも目が向いていきます。

子どもたちがこの問題に取り組むことは、今後さまざまな未知の課題に出あったときに、課題を「自分ごと」としてとらえて考えるきっかけになることでしょう。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 6 安全な水とトイレを世界中に
  • 14 海を豊かさを守ろう

干潟の持つ役割や価値(生物多様性の保全、漁業生産の場、水質を浄化する作用など)は、目標6「すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」や目標14「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」とつながっています。
干潟について学ぶことから始め、それをもとに具体的にできる行動を考える。たとえば、漂流しているゴミを回収する、普段からゴミを減らすためにリサイクルを積極的に行う、干潟を保護する団体の活動に参加するなどなど。他にもどんなことができるでしょうか。

私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから

日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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