シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

明治大学付属中野中学校

2017年04月掲載

明治大学付属中野中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.できる解釈・できない解釈両方押さえる

インタビュー3/3

読解力は読書量に必ずしも比例しない?

読解力をつけるには、ある程度の読書量が必要でしょうか。

齋藤先生 読書量が大事なことは間違いではないと思いますが、最近それだけではないと感じています。
ある生徒は、読書が好きでたくさん本を読んでいるし、結構難しい内容も読んでいるのに、読解力が伴いません。推測ですが、字面を追っているだけ、自分の都合のいいところだけを“つまみ食い”しているのではないか。文脈に沿って読んでいなければ、読んでいないのと同じです。どうすれば読書好きという長所を読解に反映させられるか、模索しているところです。

明治大学付属中野中学校/校舎

明治大学付属中野中学校/校舎

「国語②」の授業でいろいろな国語の力を鍛える

齋藤先生 中学の授業は、教科書中心の「国語①」と、言葉や聞くこと、話すことをを目標にした「国語②」があります。「国語②」は週2時間で、漢字や文法、スピーチ、ディベート聞き書き、意見文などを扱います。私は中1・中2では聞き取りやビブリオバトルを中心に行いました。
聞き取りは、3~5分の短い物語を読んで質問に答えてもらいました。質問は読む前に配ることもあれば、読んだ後の場合もあります。物語は星新一の作品や、イタリアの児童文学作品『パパの電話を待ちながら』など(小品を)用いました。情報収集はとかく視覚に頼る傾向にあります。視覚を遮断することで集中して話を聞く姿勢が養われます。

グループワークを通して「聞く力」を養う

齋藤先生 先日、中3の研究授業で昔話法廷の「カチカチ山裁判」を行いました。映像を見て、ウサギの言い分、タヌキの言い分から実刑か執行猶予かを決めて、その理由を書きます。
生徒の意見を回収し、次の時間は班(7人×6班)で話し合いました。班編成は同じ意見の生徒だけにならないように、また各班に議長役ができる生徒を振り分けました。私は班を巡回して、話し合いが進まない班に助け船を出します。生徒は予想以上におもしろがってくれて、「またやりたい」と言います。
とかく「日本人は発表が苦手」と言われますが、インターネットの普及で、表現は未熟でも発信意欲は高いように思います。一方、聞く力は乏しいと感じます。このときは「他者が話しているときは、自分を我慢して最後まで聞く」など、話し合いのルールを設けました。この授業を通して、相手の話に耳を傾ける姿勢が少しでも身についたのではないかと思います。

明治大学付属中野中学校/階段教室

明治大学付属中野中学校/階段教室

マンガで誘導して読書の入口に立たせる

齋藤先生 私は中1の担任になってから3年間、「本を読む」「字を丁寧に書く」「他者の話をきちんと聞く」という3点に力を入れてきました。
まったく本を読まない生徒が1冊でも読んでくれたらという思いから、学級文庫を設けました。本は読まないより読んだ方がいい。おもしろいことに出会えるし、自分の世界も広がります。読書の習慣がない生徒に、読書の入口に立ってもらうために、『風の谷のナウシカ』のマンガを入れました。マンガなら手を伸ばしやすく、深いテーマでも読めるからです。他に、見ておもしろい『サム・ロイドの考えるパズル』や『MAPS』なども採用しました。『ゲド戦記』を読んでくれたのはうれしかったですね。
字を丁寧に書くことについては、コツコツやるしかありません。毎週漢字のプリントを提出、チェックして返し、不十分ならやり直しをさせました。「この字はまちがいやすいよね」とあえてみんなに公開して、自覚を促したりします。
中学国語はカリキュラムが国語①と国語②にわかれているため、学期に1回しか試験のない国語②に関しては、漢字として指示した範囲の中から約3分の1を出題し、100点中の約40点分を漢字から出題したこともあります。漢字学習は中学入試でやればできるとわかっているので、生徒にとっては取り組みやすい。コツコツ取り組む漢字学習は、家庭学習習慣の定着にも役立ったと思います。
「中3全員漢検3級合格」という目標はほぼ達成し、2級合格者も10%以上になりました。ある生徒は準1級の合格まであと3問ほどでした。

明治大学付属中野中学校/コンピュータ教室

明治大学付属中野中学校/コンピュータ教室

質実剛毅の明治らしい、男子校ならではの教育を継続

海老澤先生 創立80周年記念事業である校舎の全面的な建て替えが進行中です。2014年8月に中学棟が、2016年3月に高校棟が完成し、2017年に図書館などを含む共用棟と、講堂を兼ねた第二体育館が完成する予定です。
本校生徒の約4分の3が明治大学に進学します。卒業生の話を聞くと、受験で大学に入学して目標を見失う学生もいるようですが、本校の卒業生は中学・高校のうちから進学してからのことを考えています。
社会で活躍している卒業生も多いのは、成長の伸びしろがあるからでしょう。それは、本校の6年間で部活動や学校行事などたくさんのことを経験していることが大きいと思います。周囲の目を気にせず好きなことにとことん打ち込める環境は、男子校の長所でもあります。
明治大学の付属3校のうち男子校は本校だけです。「中高6年間を男子校で」と希望される明治ファンの親御さんも多くいらっしゃいます。そうした方々の期待を裏切らないように、これからも質実剛毅の明治らしい、男子校ならではの教育を続けていきます。

明治大学付属中野中学校/櫻山ホール

明治大学付属中野中学校/櫻山ホール

インタビュー3/3

明治大学付属中野中学校
明治大学付属中野中学校1929(昭和4)年に、御木徳一により旧制中野中学校開設。1949年に明治大学の付属校となって再出発した。2009(平成21)年に創立80周年記念式典を挙行。
「質実剛毅」「協同自治」の精神にのっとり、知・徳・体のバランスの取れた教育を実践。生徒一人ひとりの自我と個性を尊重する姿勢は、「完責・修学・研心・錬身」を校訓としていればこそ。付属校の利点を生かし、のびのびとした学園生活のなかでさまざまな可能性が伸ばせる。他大学への進学に対応できる指導も実施。
中学では、高校との関連を重視。特に英語に重点をおき、中1・中2では外国人講師による少人数制の英会話を実施。高1から外進生と混合し、高2から文系・理系のコース別クラスを編成して他大学受験も意識したカリキュラムを展開する。平常講習は全学年が対象で早朝・放課後に。全学年対象の夏期講習は希望者制で行われるが、指名制補習もある。全体の75%近い生徒が併設大学へ進学。一方、他大学受験をする生徒も増えており、早慶上智大など難関大学への合格実績も徐々に上昇。明治大推薦希望者の国公立大併願も認められているので、国公立大進学者も増えている。
クラブ活動はとても盛んで、加入率は中学で約9割。柔・剣道などの武道や水球、ラグビーなど運動部の活躍ぶりや実績は有名。文化部を含めるとその数は35におよび、ほとんどは中高合同で活動しているので上級生・下級生の団結力も強い。高1の11月には全生徒に向けて、明治大学キャンパスでの特別進学講座(各学部紹介)を実施。各学部の公開授業の聴講、理工・農学部の実験・実習見学会なども行い、付属校ならではの進路指導をしている。