シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

渋谷教育学園幕張中学校

2017年03月掲載

渋谷教育学園幕張中学校【算数】

2017年 渋谷教育学園幕張中学校入試問題より

次の問いに答えなさい。ただし、図は正確とは限りません。

図

(問)図のように、1つの円の周上に5つの点A、B、C、D、Eがあります。
三角形BDEは1辺の長さが7cmの正三角形です。
また、辺ABとCDの長さはそれぞれ5cmで、辺BCとAEの長さはそれぞれ3㎝です。
このとき、辺ADの長さは何cmですか。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この渋谷教育学園幕張中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

8cm

解説

この問題の図に補助線を加えると、下の図1のようになり、答えはすぐに3+5=8(cm)とわかります。
しかし、なぜ下の図のように、長さや角の大きさが決まるのか、その理由を正確に示そうとすると、過程は複雑です。
その説明は、以下のようになります。

図1

(説明)

下の図2のように、円の中心Oをとり、OとB、OとC、OとDをそれぞれ直線で結びます。
このとき、三角形ODBは、正三角形EDBを三等分した形なので、図のアの大きさは360÷3=120(度)です。
また、OB、OC、ODは円の半径にあたるので、すべて長さが等しいことがわかります。

図2

次に、下の図3のように、三角形OCB三角形ODCに着目します。
すると、OB=OCより、三角形OCBは二等辺三角形とわかります。
また、OD=OCより、三角形ODCも二等辺三角形とわかります。
そこで、下の図3のように、角の大きさが等しいところの角を、イとウとします。

図3

ここで、四角形ODCBに目を移します。
四角形ODCBの内角の和は、120度+イ+イ+ウ+ウ=360度です。
360-120=240(度)……イ+イ+ウ+ウ→「イ+ウ」2つ分
つまり、イ+ウは、240÷2=120(度)であることがわかります。

イ+ウ=120度とわかったので、下の図4のように、角DCBは120度です。
これと同じように考えると、角CBAも120度です。

図4

次に、下の図5のように、ABとDCを延長し、交わった点をFとし、新たにできた角をエ、オ、カとします。
すると、エ=180-120=60(度)、オ=180-120=60(度)とわかります。
さらに、三角形BCFに着目すると、カ=180-60-60=60(度)より、三角形BCFが正三角形であることがわかります。

図5

三角形BCFは正三角形なので、BC=BF=CF=3cmです。
次に、三角形ADFに着目します。
すると、AF=5+3=8(cm)、DF=5+3=8(cm)、角AFD=60度です。つまり、三角形ADFは、1つの角の大きさが60度の二等辺三角形なので、正三角形とわかります。

以上より、AD=AF=DF=8cmとわかります。

図6

(参考)

まず、EとCを直線で結び、ADとの交点をFとします。
中学以降に数学で学ぶ「円周角の定理」を利用すると、下の図7のように、角の大きさが等しいところがわかります。
図7の同じ記号をつけた角は、大きさが等しい角です。
図より、●と○の角の大きさの和が60度であることがわかります。

図7

次に、次の図8のように三角形AEF三角形FDCに着目します。
すると、どちらの三角形もすべての内角の大きさが60度なので、いずれも正三角形とわかります。
よって、AD=AF+FD=3+5=8(cm)とわかります。

図8

日能研がこの問題を選んだ理由

答えの数値は、察しがついた人も少なくないかもしれません。
しかし、どのように求めたのかを説明しようとすると、簡単ではないことにすぐに気づくでしょう。「辺の長さの比が3:5:7である三角形の角の大きさが120度であること」や「円周角の定理」といった、数学の知識を用いて説明することもできますが、これらの知識の有無を問うている問題とは思えません。子ども達が入試当日までに算数で学んできた知識や見方・考え方を駆使して考えることが求められているのでしょう。
おそらく、入試当日にこの問題に取り組んだ子ども達も、
「答えは、たぶんわかったけど、確実に正解とはいいきれない。」
といった想いを抱いたはずです。
「試験時間中に取り組んでおしまい」にするのではなく、試験時間が終わった後にも「なぜそういえるのか」を考えたくなる、そんないつまでも考え続けたくなるような問題だったのではないでしょうか。
これはまさに、「自調自考」という渋谷教育学園幕張中の教育理念と結びついているといえそうです。
選抜試験の場で、その後の学びの姿勢を示唆するこの問題を多くの人に紹介したいと考えました。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。