シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

カリタス女子中学校

2017年02月掲載

カリタス女子中学校【算数】

2016年 カリタス女子中学校入試問題より

ある国では、2035年末に人口が1億1700万人で、国民の3人に1人が高齢者になり、2060年末に人口が8700万人で、国民の2.5人に1人が高齢者になると予想されています。この予想通りになった場合について、次の問いに答えなさい。ただし、65歳以上の人を高齢者と呼ぶことにします。

(問)2035年末以降、この国の人口と高齢者の1年ごとの増加数または減少数が一定であるとすると、初めて高齢者が国民の半分より多くなるのは何年末ですか。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、このカリタス女子中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

2081(年末)

解説

2035年末、この国の高齢者の人数は、1億1700万人÷3=3900万人になっています。

2060年末には、この国の高齢者の人数は、8700万人÷2.5=3480万人になってます。

2035年から2060年までの25年間で、この国の人口は1億1700万人-8700万人=3000万人減り、高齢者の人数は、3900万人-3480万人=420万人減ることがわかります。

ですから、この25年間で、1年あたりの人口の減少人数は3000万人÷25=120万人、1年あたりの高齢者の減少人数は420万人÷25=16.8万人となります。

「高齢者の人数」が「人口(国民)の半分」より多くなる年を求めるので、「高齢者の人数」と「人口(国民)の半分」が同じになる年を求めます。

2060年末の「人口(国民)の半分」は、8700万人÷2=4350万人です。このとき、1年あたりの人口の減少人数の半分は、120万人÷2=60万人になります。

1年間で「人口(国民)の半分」と「高齢者の人数」の差は60万人-16.8万人=43.2万人ずつ縮まります。2060年末での人口の半分と高齢者の人数の差は4350万人-3480万人=870万人です。

870万人÷43.2万人=20.1388…

以上より、2060+20+1=2081(年末)に初めて高齢者の人数が、人口(国民)の半分より多くなります。

日能研がこの問題を選んだ理由

今年も、多くの学校で割合に関する問題が出題されました。この問題は、割合の考え方を使って、「高齢化社会」の問題を数値でとらえることがテーマとなっています。この問題のように、算数で学んだことと、生活の中で見聞きすることとを結び付けた出題が、近年、しばしば見られます。

この問題には「ある国」とありますが、数値設定から「おそらく日本のことだろう」と推測ができます。受験生は、実際に自分で計算することにより、そう遠くない未来に「高齢者が人口(国民)の半分より多くなる」ことがあり得るという事実を実感したかもしれません。つまり、この問題は、「学んだことを社会のために使っていく」一歩となっている問題といえるでしょう。この問題から、カリタス女子中学高等学校の教育で大切にしている「自律」という考え方が垣間見えました。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。