出題校にインタビュー!
明治大学付属明治中学校
2017年01月掲載
明治大学付属明治中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3. 古今東西の社会と自分はつながっている
インタビュー3/3
「今」を切り取る授業に生徒は興味津々
齊藤先生 本校のカリキュラムは、古今東西の社会と自分の「つながり」を発見していく過程を大切にしています。中1の地理で同時代に生きる人々の暮らしに目を向け、中2の歴史で異なる時代を生きた人々の考え方を知り、中3の公民で自分をとりまく「世の中」への興味につなげています。
生徒が社会に関心を持てるように、各教員は新聞や映像資料、オリジナルプリントなどを駆使しています。例えば、中1の地理で台湾の政権交代を取り上げた教員は、新聞記事やプリントを使って、その背景や現状から日台中の関係まで掘り下げて説明していました。授業をきっかけに台湾に興味を持った生徒も多かったようです。
宮下先生 それは中1の地理の範囲を超えていますが、中1の「同時代に目を向ける」というテーマに沿った授業と言えます。生徒が知らない日本と台湾の関係や、台湾と中国の微妙な関係などを整理して解説すると、ニュースの見方がわかるようになります。
齊藤先生 授業では「今」というところにもこだわっていますよね。
宮下先生 私が中1のとき、55年体制が崩壊しました。細川連立政権が成立しようかというタイミングで、先生が「これは今とても大事なことだから」と、地理の授業が1時間ニュースの解説になりました。「今、こんなふうに世の中が動いているんだよ」とレクチャーされたことをよく覚えています。
明治大学付属明治中学校/図書館
旅行行事では現地での学びが大切
齊藤先生 社会科では「今」とともに「本物」ということも大切にしています。実物に勝る説得力はありません。例えば、沖縄戦の悲惨さを映像で見せることもありますが、現地へ足を運び、戦争体験者から直接話をうかがうことでしか得られないこともあります。本校ではそのような学びを大切にしています。
高2の沖縄修学旅行など、本校では中1から高2まで学年ごとに旅行行事があり、そのときフィールドワークを行います。中1の林間学校は、事前学習で地形図を配布して等高線をたどらせ、地形をある程度イメージさせます。現地で自分が引いた等高線の形と目の前にある地形を比べることで、教室の学びが実体験とつながります。こうした学習成果をまとめて、文化祭で学年ごとに発表することもあります。
宮下先生 今年度の中2の旅行行事(静岡方面)は私が担当しました。「旅行のしおり」には登呂遺跡などについて、その場所でなければ絶対に解けない課題が示されています。受け身の姿勢では解決できないので、生徒たちは現地で学芸員の方にインタビューするなどして、班で協力して調べます。調べたことを壁プレゼンテーションとしてクラス内で発表して、どの班のプレゼンが最もよかったかというところまで行いました。
最初は積極的な生徒が動き出して、それに他の生徒が続き、そのうち各々がメモを取るなど自発的に動くようになりました。
カウンター前に「今、生徒に読ませたい本」が並ぶ
齊藤先生 図書館は本校自慢の1つです。特徴は約6万冊の蔵書の内容にあります。
江竜先生(司書教諭) ほとんどの生徒が明治大学に進学することから、それら進学先学部との関連の深い法律、経済、政治、商業などの本がたくさん並んでいることが、特徴の1つです。法律の棚が、憲法、民法、商法、刑法などに分かれて並んでいる学校図書館は、そう多くありません。企業経営やマーケティング、ブランディングも充実しています。
「大学推薦図書」のコーナーには、大学の先生方が推薦する本、大学1、2年生が使う教科書の中から高校生でも読めそうな本を紹介しています。
齊藤先生 図書館では「生徒に今読ませたい本」として新刊も積極的に入れていますね。
江竜先生 ほぼ毎週、約100冊の新着図書を配架し、「図書館だより」で紹介しています。本選びは、司書教諭の私が中心になっていますが、教科教員による「選書会」で決めることもあります。
旅行行事の関連本は「企画棚」として、ブックトラックに並べてカウンター前に別置きすることもあります。
齊藤先生 図書館と各教科の連携も緊密です。社会科でも授業で取り上げるテーマに関する本をピックアップして紹介してもらい、授業をサポートしてもらっています。まさに図書館は学校の学びの中心です。
明治大学付属明治中学校/図書館
司書教諭が生徒の英語多読の本選びをアドバイス
江竜先生 洋書も約6000冊あり、生徒のほとんどが学校図書館を利用して洋書を読んでいます。
齊藤先生 本校の中3は全員が英検準2級以上に合格しています。全学年に英語多読を奨励していますが、江竜先生は図書館に来る生徒のことをよく見ていて、絶妙なタイミングで声をかけていますね。
江竜先生 本を手にとってパラパラとめくっている生徒は大丈夫なので、本の背表紙を眺めたまま、本が探し切れていない生徒に声をかけます。
英語多読本のレベル分けは、都立高校や多くの私立一貫校はSSS英語多読研究会の9段階の読みやすさレベルを採用していますが、本校は「英検の級」で5段階に分けています。同じレベルでも読みやすさの幅が大きいのが特徴で、5段階という見た目のレベルほどハードルは高くありません。
上のレベルに進むのに躊躇している生徒には、そのレベルの中でも易しい本を勧めます。すると「上のレベルでも読めた」という達成感から、そのレベルの本をどんどん読むようになります。
高校生は正解のないテーマの討論にもチャレンジ
宮下先生 高校の選択授業では、習った知識をもとに自分たちで探求したり、教員を交えてディスカッションするなど、正解がないテーマにも向き合って考えたこともあります。「高校生は大人か否か」という身近なテーマから始めて、徐々に話題を広げていきます。再生医療などの医療倫理・生命倫理の課題に踏み込んだり、戦争責任に及ぶこともありますので、生徒に予備知識がないテーマは講義をして、ある程度理解したところでグループワークやディスカッションに移ります。討論に慣れるまでは、2人組や4人組で、発言しないと進まない設定にします。高校生は知識量が増えているので、発言する状況をつくれば自分の考えを述べられるようになります。
ゲーム形式を通して、自分1人で考えるよりも何人かで話し合う方がよりよい答えを出せることを体感します。グループワークで発言することに慣れると、最終的には15名程度のディスカッションでも自分の意見を堂々と述べられるようになります。
さらに、討論の着地点が見えてきたところで、それをぶち壊すような真逆の視点を提示します。生徒たちは当惑、混乱しながらも食らいついて考えます。積み上げたものを一度破壊して再構築することで、物事をより深く考えられるようになります。卒業生からは、「社会科のディスカッションがゼミでもかなり役に立っている」と言われます。
齊藤先生 高校では社会科系で配当される科目群はほぼすべて、全生徒が履修します。ゼミで発言するときも、すべての分野を踏まえて厚みのある発言ができる点は、本校の卒業生の強みではないかと思います。
社会科の学びで重要なのは、自分が生きている社会を理解し、自分なりの考えを持ち、どのような行動を選択するのか、その方法を学ぶことです。6年間で生徒たちをその入口に連れて行くのが本校の使命だと考えています。
明治大学付属明治中学校/図書館
インタビュー3/3