シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

麻布中学校

2016年12月掲載

麻布中学校【算数】

2016年 麻布中学校入試問題より

黒い正方形がいくつかあたえられたとき、それぞれの黒い正方形を9等分し、図1のように5個の正方形を白く塗る操作を操作Aと呼びます。また、図2のように4個の正方形を白く塗る操作を操作Bと呼びます。

図1図2

【例1】1つの黒い正方形に対し、操作Aを続けて2回行うと、図のようになります。このとき、黒い正方形が16個と、白のつながっている部分が5個(正方形4個と他の白い部分1個)現れます。

例1

【例2】1つの黒い正方形に対し、操作Aを行った後に操作Bを行うと、図のようになります。このとき、黒い正方形が20個と、白のつながっている部分が9個現れます。

例2

(問1)【例2】の結果の図形に操作Aを行いました。黒い正方形はいくつできますか。また、白のつながっている部分はいくつできますか。必要ならば、図は自由に用いてかまいません。

(問2)問1の結果の図形に、操作Bを行いました。白のつながっている部分はいくつできますか。

(問3)問2の結果の図形に、操作Aを行い、さらにその後に操作Bを行ったとき、白のつながっている部分はいくつできますか。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この麻布中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答
  • (問1)黒い正方形80個、白のつながっている部分21個
  • (問2)29個
  • (問3)417個
解説
(問1)

実際に、【例2】の結果の図形に操作Aを行った図をかくとこのようになります。かぞえると、黒い正方形は80個、白のつながっている部分は21個できることがわかります。

解説1

(問2)

問題の【例2】を参考に、規則を探っていきます。
操作Bを行うと、黒い正方形は、白い正方形4個と黒い正方形5個に分かれます。ですから、操作Bを行うと、黒い正方形の個数は5倍になります。また、2回目以降に操作Bを行うと、【例2】のように、もとの大きな正方形の辺に接しているそれぞれの黒い正方形に白い正方形が1個でき、そのほかの白い部分は、もとの白い部分とつながります。
【例2】では、操作Bを行う前に白い正方形が5個、黒い正方形が4個、そのうち、もとの大きな正方形の辺に接している黒い正方形が4個あるので、そこに操作Bを行うと、黒い正方形は4×5=20(個)、白のつながっている部分は5+1×4=9(個)できています。
(問1)の結果の図形には、白のつながっている部分が21個、黒い正方形が80個、そのうち、辺に接している黒い正方形が8個あります。そこに操Bを行うと、黒い正方形は80×5=400(個)、白のつながっている部分は21+1×8=29(個)できます。

解説2

(参考)
この考え方を利用すると、(問1)を次のように考えることもできます。
操作Aを行うと、黒い正方形は、白い正方形5個と黒い正方形4個に分かれます。ですから、操作Aを1回行うごとに、黒い正方形の個数は4倍になります。また、2回目以降に操作Aを行うと、【例1】のように、それぞれの黒い正方形の中央に白い正方形が1個でき、そのほかの白い部分はつながって1個になります。

解説3

【例1】では、2回目の操作Aを行う前に黒い正方形が4個あるので、そこに操作Aを行うと、黒い正方形は4×4=16(個)、白のつながっている部分は1×4+1=5(個)できています。
【例2】の結果の図形には、黒い正方形が20個あります。そこに操作Aを行うと、黒い正方形は20×4=80(個)、白のつながっている部分は1×20+1=21(個)できます。
(問3)

(問2)の結果の図形には、黒い正方形が400個あります。そこに操作Aを行うと、黒い正方形は400×4=1600(個)、白のつながっている部分は1×400+1=401(個)できます。もとの大きな正方形の辺に接している黒い正方形の個数は、操作Aを行ったときには変わらず、操作Bを行うと2倍になります。ですから、このとき、もとの大きな正方形の辺に接している黒い正方形の個数は、8×2×1=16(個)あります。さらにそこに操作Bを行うと、黒い正方形は1600×5=8000(個)、白のつながっている部分は401+1×16=417(個)できます。

日能研がこの問題を選んだ理由

問題で提示された1回の操作は単純ですが、その単純な操作を繰り返していくと、できる図形は複雑になっていきます。先に進むためには、提示されたことと調べたことを合わせて一般化することが必要になります。

この問題の(問1)には、作業ができる図が用意されていました。まずは作業を通して情報を作り、そこから規則や性質を発見し、その情報をもとに先を予測することができるような流れが、出題者の意図として読み取れます。

この問題に取り組むことで、部分から全体へ、特殊から一般へと視点が切り替わるようにいざなわれています。このような考え方は、入試や算数だけにとどまらず、未知の課題と出あったときに必要となります。このような考え方を、取り組みながら学ぶことができるような問題が出題されている点に魅力を感じました。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。