シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

立教池袋中学校

2016年12月掲載

立教池袋中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.自分で考え実験するから法則が腑に落ちる

インタビュー3/3

化学実験室が増えて実験室が5つになり実験が増えた

宇津木先生 2013年に新教室棟ができ、化学実験室が1つ増えて実験室が5つになりました。新設の化学実験室は高校生が使用しています。この実験室は、実験台ごとに局所排気装置(卓上ドラフト)を設けてより安全性に配慮しています。実験室が増えたことで実験する数も増えました。
理科実験室で特徴的なのが地学実験室です。ここは階段教室になっていて、演示実験に適しています。大型スクリーンも設置していて、映像を見せるときはこの教室を使います。

立教池袋中学校 化学実験室B

立教池袋中学校 化学実験室B

実験結果から法則を導き出す「個別学習」

吉田先生 本校の理科の特徴の1つが、実験方法を生徒が自分で考え、選んで行う「個別学習」です。中2の「電流」と中3の「運動」の単元で実施しています。
実験前に一斉講義は行いません。「これがオームの法則だよ」などと公式を教えるのではなく、実験結果から法則を導き出すために7~8回実験します。運動の単元などは法則の公式を教えるとあっという間に終わってしまいます。教わった公式がその通り成り立つか実験で確かめるののではなく、実験の結果から法則の公式を導き出します。

公式ありきでなく、先人たちがいくつも実験を重ねて法則にたどり着いたように、生徒さんも自分たちの実験の結果から導き出しているのですね。すると法則が腑に落ちて定着しやすいのではないでしょうか。

吉田先生 配布した「指示書」を基に2人1組で実験します。レポートはB5またはB4のプリントに、結果を穴埋めで記入し、考察の文章を書いて提出します。教員がチェックして検印したら、次の実験に進みます。そうしてすべての実験が終わってから単元のまとめの講義を行います。

電流と運動の単元は結論が数値で表すことができる

物理分野の「電流」と「運動」の単元で実施している理由は何ですか。

宇津木先生 この2つの単元は結論が数値として出るので、正しくできているかどうかわかりやすいのです。
直列回路は電熱線の電気抵抗の大きさにかかわらず電流の大きさが一定です。太い電熱線と細い電熱線をそれぞれ直列回路につないで各ポイントで電流を測定すると、電熱線が太くても細くても電流の大きさはどこも同じです。実験結果から、「直列回路は電流の大きさが一定」という結論を導き出すことができます。
電圧の場合、導線は電圧がゼロでも電流が流れます。電圧計の針が振れないので「おや?」と思います。それは口頭で説明するよりも実際にやってみる方がわかりやすい。
運動の実験は記録タイマーで台車の速さを調べます。実験装置は4人1組ですが、実験の記録は各自で行い、考察も個人で行います。

吉田先生 結果が正しければ次の実験に進めます。進度の差はあります。進度が速い生徒用に、「発展」として定期試験の範囲外の実験を用意している教員もいます。ある時点で一定のところまで進んでいない生徒は放課後に実験します。

早く進む生徒とそうでない生徒の違いはどこにあるのでしょうか。

吉田先生 理科は他の教科に比べて基礎知識の差が大きいと思います。生活に密着して経験的に知っているかどうか、また実験器具を使い慣れているかどうかの差が実験の進度に出ます。実験結果の提出を“タイムトライアル”ととらえて、ゲーム感覚で「今日の授業中にやるぞ!」とやる気満々の生徒は取り組みが早いです。

立教池袋中学校 理科準備室

立教池袋中学校 理科準備室

中学・高校のうちはたくさん失敗していい

個別学習で先生が“助け船”を出すことはありますか。

吉田先生 ありますよ。実験中、教員は見回りをしています。あちこちから同様の質問が出た場合は、一旦実験の手を止めて講義をしてから実験を再開します。生徒を見ていて「それでは失敗するだろうな」と思っても、危険でなければそのまま続けさせて失敗に気づかせます。中学・高校のうちはたくさん失敗していいのです。
生徒は正解や結論をすぐに知りたがる傾向があります。実験・観察は試行錯誤してやってもらいたい。個別学習は自分で考える力が鍛えられると思います。

夏休みの自由研究など授業以外の理科の取り組みはありますか。

宇津木先生 理科と社会科は夏休みの課題はありませんが、ガイドのテキストに沿って理科または社会科の自由研究(希望者)を推奨しています。今年度の中1は144人中36人が理科の自由研究を提出しました。

科学の楽しさを伝える文系限定科目「生活と科学」

吉田先生 文系の生徒にも理科が好きな生徒がいます。高3の自由選択科目として文系限定の「生活と科学」を設けています。始めて10年程度になりますが、理系の生徒も選択したいというくらい大人気です。
ねらいは、文系の生徒に科学のおもしろさを実感してもらうことです。氷に塩を加えて融解熱を利用してアイスクリームを手作りしたり、カルメ焼きを作って生地がふくらむ原理(重曹=炭酸水素ナトリウムの化学反応)を体験的に学びます。公式は使わず小難しいことは抜きにして、生活に密着した科学を実践します。

文系の理科教育にも心を配る、附属校らしい取り組みですね。

吉田先生 本校の生徒は85~90%が立教大学に進学し、そのほとんどが文系学部に進学します。文系の生徒は高2まで理科は必修ですが、高3は必修ではなくなります。少しでも多くの生徒が「科学っておもしろいな」という印象を持って卒業してくれたらうれしいですね。そして、社会人になっても「科学は私たちの身近にあるんだ」と親しみをもってくれたらと思います。

立教池袋中学校

立教池袋中学校

インタビュー3/3

立教池袋中学校
立教池袋中学校1874(明治7)年、米国聖公会のC.M.ウィリアムズにより、築地に立教学校が創設。1896年に立教尋常中学校を設置。1907年には立教大学を開設し、1918(大正7)年池袋に移転。1923年に中学も池袋に移転。1948(昭和23)年に小学校も設立。高校は新座市にあったが、2000(平成12)年には立教池袋高等学校を併設し、新たな中高一貫教育をスタート。
キリスト教精神に基づく人間教育を志し、「テーマを持って真理を探究する力」と「共に生きる力」を育てることを教育目標に掲げている。中高一貫教育を越えた小学校から大学までの「立教学院一貫連携教育」の創造を目指し、授業などの一部を大学教授が担当するなどの小・中・高・大のネットワークを展開している。
ステンドグラスのチャペルがミッションスクールらしさを醸し出す立教大学の向かい側に校地がある。数々の特別教室を備え、センテニアルホール(講堂)や図書館など、洗練された最新の施設と設備が活用できる。カフェテリアではパン類の販売あり。
テーマを見つけて自主的に課題を解決する学習力を育てることを重視し、中学の学年ごとに18~24ある講座から自由に選択する「選修教科」、高2~高3の卒業論文などの取り組みを行っている。中学生に対しては高校生や大学生ボランティアによる補習も実施。全学年、英語は1クラス2分割で行い、帰国生など英語力が高い生徒にはネイティブスピーカーが教えるSクラスを設定。高1では特別プログラムとしてキャリア学習、立教大学教授による特別講義を実施。高3では大学の授業も受講できる。高3は自由選択講座を設定し、各自の進路に対応。立教大学へは成績に加え、自己推薦もあり、いかに充実した学校生活を送ったかをアピールする。
礼拝を中心にキリスト教関連の行事が多い。校外学習、清里キャンプ、あるいはアメリカでの国際親善キャンプ、英国語学研修などを通じて貴重な体験もできる。アメリカへの1年間の海外留学制度もある。保育園訪問やごみゼロ運動などボランティア活動にも熱心に取り組む。生徒会の運営による行事やクラブ活動の活発さは大学一貫校ならでは。特に陸上競技、テニス、水泳、吹奏楽、生物部などが活躍中。週6日制で、クラブ活動も積極的に行っている。