シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

立教池袋中学校

2016年12月掲載

立教池袋中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.生活の中の“当たり前”を疑ってみる

インタビュー2/3

生物分野が出題のトップバッター

宇津木先生 入試問題は物化生地の4分野をまんべんなく出題します。8つほどの大設問に3~4つの小設問という構成です。出題の順番は難易度によらず、生物、地学、化学、物理の順番で、最後は計算を含む問題をできるだけ出題するようにしています。
第1回入試の大問4は、石油をテーマにした環境問題を出しました。科学部が夏合宿で新潟県の新津油田を見学したことを基に作成されました。

吉田先生 大問1は生物の問題であることが多いのですが、おおよそよくできていると思います。気持ちよく始めてもらおうという思いもあって、最初に手こずるような問題は出していないつもりです。

理科/宇津木千秋先生

理科/宇津木千秋先生

グラフから規則性を読み取る力を試す

宇津木先生 グラフや表なども積極的に使って、情報を読み取る力、整理する力も試しています。現実の現象とグラフの変化を結びつけられるようになりましょう。実験してみると「こういうことなんだ」とイメージできるでしょう。現象を定量的にとらえるイメージ力を大切にしてほしいと思います。
授業では実験の結果をグラフにかかせています。数学のグラフは計算値をプロットして結べばきれいな直線や曲線になりますが、実験・観察から得られたデータに誤差はつきものです。プロットした測定値全体の傾向をみて、グラフが直線になりそうなときは直線を引きます。中には測定点をそのとおりに結んで“折れ線グラフ”にしてしまう生徒がいますが、それでは現象を視覚化した関係性(規則性)が見えてきません。

「自分で考える」ことを意識しよう

吉田先生 受験生には「自分で考える」ことを大切にしてほしいと思います。「テーマをもって真理を探究する力を育てる」という本校の教育目標は、図らずも理科教育にぴったりの目標です。自分で考える力を養えば理科に限らずどんな場面でも、社会人になってからも役に立ちます。小学生のうちから「自分で考える」ことを意識するようにしてほしいと思います。
理科は、他の教科に比べて思い込みがある教科ではないかと思います。例えば、安全マッチを普通のヤスリで火をつけようと、何度もこすっていた子どもがいました。これは「マッチはヤスリで擦れば火がつく」と思い込んでいるからでしょう。マッチ箱の側面は「側薬」といって、発火剤の役割をする赤リンが塗られています。側薬とマッチ棒の先についている「頭薬」がこすり合うことで燃焼の化学反応が起きます。リンが塗られていないヤスリで火がつくはずはないのです。受験生には、生活の中で当然と思っていることを疑って考えてみてほしいと思います。

立教池袋中学校

立教池袋中学校

思い込みの概念を壊して再構築する

吉田先生 理科は思い込みの概念をいったん壊して再構築するところが、ダイナミックでありおもしろいところだと思います。授業の最初の5分は、生徒の概念を壊すような発問をします。「○○なのは、Aか?それともBか?」と聞く。大部分がAと答えたけれど「実はBだよ」と言ってから講義に入ると、生徒の食いつきが違ってきます。概念を再構築する作業を楽しいと思ってくれたら、見聞きすることを鵜呑みにしないで自分で考えるようになると思います。

インタビュー2/3

立教池袋中学校
立教池袋中学校1874(明治7)年、米国聖公会のC.M.ウィリアムズにより、築地に立教学校が創設。1896年に立教尋常中学校を設置。1907年には立教大学を開設し、1918(大正7)年池袋に移転。1923年に中学も池袋に移転。1948(昭和23)年に小学校も設立。高校は新座市にあったが、2000(平成12)年には立教池袋高等学校を併設し、新たな中高一貫教育をスタート。
キリスト教精神に基づく人間教育を志し、「テーマを持って真理を探究する力」と「共に生きる力」を育てることを教育目標に掲げている。中高一貫教育を越えた小学校から大学までの「立教学院一貫連携教育」の創造を目指し、授業などの一部を大学教授が担当するなどの小・中・高・大のネットワークを展開している。
ステンドグラスのチャペルがミッションスクールらしさを醸し出す立教大学の向かい側に校地がある。数々の特別教室を備え、センテニアルホール(講堂)や図書館など、洗練された最新の施設と設備が活用できる。カフェテリアではパン類の販売あり。
テーマを見つけて自主的に課題を解決する学習力を育てることを重視し、中学の学年ごとに18~24ある講座から自由に選択する「選修教科」、高2~高3の卒業論文などの取り組みを行っている。中学生に対しては高校生や大学生ボランティアによる補習も実施。全学年、英語は1クラス2分割で行い、帰国生など英語力が高い生徒にはネイティブスピーカーが教えるSクラスを設定。高1では特別プログラムとしてキャリア学習、立教大学教授による特別講義を実施。高3では大学の授業も受講できる。高3は自由選択講座を設定し、各自の進路に対応。立教大学へは成績に加え、自己推薦もあり、いかに充実した学校生活を送ったかをアピールする。
礼拝を中心にキリスト教関連の行事が多い。校外学習、清里キャンプ、あるいはアメリカでの国際親善キャンプ、英国語学研修などを通じて貴重な体験もできる。アメリカへの1年間の海外留学制度もある。保育園訪問やごみゼロ運動などボランティア活動にも熱心に取り組む。生徒会の運営による行事やクラブ活動の活発さは大学一貫校ならでは。特に陸上競技、テニス、水泳、吹奏楽、生物部などが活躍中。週6日制で、クラブ活動も積極的に行っている。