シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

立教池袋中学校

2016年12月掲載

立教池袋中学校【理科】

2016年 立教池袋中学校入試問題より

太郎君が新聞を読んでいると、「イチゴをハウス栽培(さいばい)で育てるとき、二酸化炭素濃(のう)度を調節して収穫(かく)量や糖度を増やすことがある」という記述を見つけました。下のグラフは、ある農家におけるビニールハウス内の二酸化炭素濃度の変化を示しています。

グラフ

(問1)ビニールハウス内の二酸化炭素濃度をいつどのように調節すればイチゴの収穫量を増やすことができると考えられますか。正しいものを次のア~エから1つ選び、記号で答えなさい。

  • ア 外気の濃度よりも低くなる夜間に、増加させる。
  • イ 外気の濃度よりも高くなる夜間に、減少させる。
  • ウ 外気の濃度よりも低くなる昼間に、増加させる。
  • エ 外気の濃度よりも高くなる昼間に、減少させる。

(問2)問1の作業をしてもあまり効果が期待できない条件の日があります。それはどのような日ですか。最も適切なものを次のア~エから選び、記号で答えなさい。

  • ア よく晴れた日
  • イ くもりの日
  • ウ 風が強い日
  • エ 風が弱い日

(問3)問1の作業は、ビニールハウス内の換(かん)気をしない時期に限って行われます。その時期として最も適切なものを次のア~エから選び、記号で答えなさい。

  • ア 4~6月
  • イ 7~9月
  • ウ 10~12月
  • エ 1~3月

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この立教池袋中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答
  • (問1)ウ
  • (問2)イ
  • (問3)エ
解説

(問1)問題文に、二酸化炭素濃度を調節する目的は「収穫量や糖度を増やす」ことであると示されています。したがって、植物が栄養分(糖分)を作り出す働きである「光合成」に目を向けます。グラフを見ると、6時過ぎから9時頃にかけて二酸化炭素濃度が急に低くなり、外気の濃度よりも低くなっていきます。これは、光合成がさかんに行われて二酸化炭素が使われていることを示しています。その後、光が十分に当たっている昼間の時間帯であるにも関わらず、わずかに二酸化炭素濃度が高くなっていきます。これは、二酸化炭素が減ったために光合成が十分に行われず、呼吸の方がさかんに行われているからだと考えられます。したがって、外気の濃度よりも二酸化炭素濃度が低くなっている昼間に、二酸化炭素濃度を高くすれば光合成の働きが促進され、栄養分をより多くつくることができるので、収穫量や糖度を増やすことにつながります。

(問2)問1で選んだ作業を行うのは、植物が光合成を活発に行うことができる条件のときがふさわしいと考えられます。光合成をあまり行うことができない条件のときに作業を行っても効果的ではありません。したがって、光合成を活発に行うことができない「くもりの日」が最も適切であると考えられます。

(問3)ビニールハウスを使って栽培する目的は、外気よりも高い温度でイチゴを生育させることです。したがって、外気の温度が低い1~3月には基本的に換気をしないと考えられ、この時期に問1で選んだ作業を行えばよいことになります。なお、換気をすれば、ビニールハウス内の二酸化炭素濃度を外気の濃度とほぼ等しくすることができるので、外気の温度が低くない時期には喚気をすることで二酸化炭素の濃度を高くすることができます。

日能研がこの問題を選んだ理由

イチゴを栽培するビニールハウス内の二酸化炭素濃度を素材として、どのような調節を行うことでイチゴの収穫量や糖度を増やすことができるのかを、グラフに示された情報と知識を結び付けながら明らかにしていく問題です。

問題に取り組むことで、子どもたちは、試行錯誤しながら見慣れていないものと見慣れたものを結び付けていく過程を楽しみます。また、見慣れていないものと見慣れたものが結び付いたとき、子どもたちの中に新たなことがらどうしのつながりが構築されます。この問題をきっかけに、子どもたちが未知のことがらに出会ったときに、既知のことがらと結び付けることでものごとの状況やしくみを明らかにすることができると気づくでしょう。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。