今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
渋谷教育学園渋谷中学校
2016年11月掲載
2016年 渋谷教育学園渋谷中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
文章を読み、問いに答えなさい。
次の写真に示された長崎県の端島は、海から眺めたようすが軍艦に似ていることから、軍艦島ともよばれています。この小さな島に開発された炭坑が端島炭坑でしたが、1974年に閉山し、その後は無人島になりました。
(問1)写真と資料から、端島では、どのような住宅が建てられましたか。その特徴を答えなさい。また、そのような特徴の住宅を建設した理由を答えなさい。
(問2)資料2をみると、太平洋戦争の終戦直後から数年間は、1人当たり出炭量が、とても少ないことがわかります。これは、働き方の変化から説明することができます。働き方はどのように変化したのか、その理由とともに60字以内で答えなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この渋谷教育学園渋谷中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答
(1)(特徴)団地のような高層住宅(という特徴)
(理由)限られた面積にたくさんの人が住めるようにするため。
(2)戦前は長時間労働が当然だったが、戦後は労働者の権利を守る法律ができたことで、労働時間が短くなり休日も確保されたから。(58字)
解説
(1)写真と資料1から、住宅施設は、戸建住宅の集まった住宅街ではなく、団地のような高層住宅であることがわかります。また、資料1中の100メートルの目盛から、端島は小さな島であることもわかります。
(2)人員は1934年に比べ1945年の方が多いにも関わらず、1人あたりの出炭量は4分の1以下に減っています。戦後は、GHQが主導して民主化を行ったこと、新たに日本国憲法が制定されたこと、労働基準法など労働者を守る法律が成立したことなどから、1人あたりの労働時間が短くなりました。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
2015年、「明治日本の産業革命遺産」がユネスコの世界文化遺産に登録されました。このニュースを受け、2016年の中学入試では、登録された製鉄所や炭鉱の名称や位置、明治初期の日本における近代工業の発達やその歴史的背景に関する出題が多く見られました。
渋谷教育学園渋谷中のこの問題は、写真・地図・グラフという3つの資料からわかる情報を、受験生自身が持っている知識と結びつけて推論する力が問われる問題です。題材となっている端島は、世界文化遺産に登録されたことで注目をあびましたが、島にどのような建物が建てられているか、炭鉱労働者の労働環境がどのように変化したのかなどについては、ほとんどの受験生が知らなかったと思われます。この問題を通して、資料を読み取って論理的に考察する力や、未知の事物に対応する力など、複合的な観点で受験生の可能性を見出そうとしていることが感じられました。