出題校にインタビュー!
逗子開成中学校
2016年09月掲載
逗子開成中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.社会科で学んだことと、日常生活で起きていることとを結びつけて考えることが大事。
インタビュー1/3
ゴミ問題は子どもにも関係のある問題
この問題の出題意図からお話いただけますか。
鈴木先生(社会科教諭) 私が住んでいる鎌倉市はゴミのリサイクルが進んでいる街として全国的に有名です。10数年前に横浜市から引っ越しましたが、分別の細かさに驚かされました。また、鎌倉市や、本校がある逗子市には65歳以上の方が多く住まわれています。老人ホームやデイサービスなどを行う施設も多く、医師が老人ホームを訪問し、診察する機会が増えていると聞いていました。
そうした日常の出来事が問題作成のヒントになりました。ゴミ問題は大人だけでなく、子どもにも関係のある問題です。同時に逗子のまちにも関心をもってもらえるテーマはないかなと考えている時に、ゴミ問題と高齢化のかけ合わせを思いつきました。まずリード文でゴミ問題の実情を認識してもらい、問いでゴミ問題の時事的な資料に触れて、考えてもらうという構成にしました。「そういえばお年寄りはどうゴミを捨てているのだろう」「僕のおじいちゃん、おばあちゃんはどうしているのだろう」と想像し、気づきの中から答えを導き出してくれればいいなと思いました。
社会科/鈴木賢司先生
厳選した資料を掲載
問題を作る上で苦労されたところがあれば教えてください。
鈴木先生 もっとも時間がかかったのは、提示する資料選びです。候補の資料が15〜20くらいあり、この3つに落ち着くまでに、時間がかかりました。
小和田先生 最初は、ポイントの読み取りに主題を置いた出題を考えていました。新聞記事を2つ載せて、文章を書かせようかとも考えましたが、負担が大きいので、資料から読み取れることを箇条書きで、単純に書かせる問題にしました。複数の資料が相互に関連していることにも気づいてほしいという思いから、新聞記事、表、写真または絵を出せば、結びつけやすいのではないかということで、このような問題にまとまりました。
鈴木先生 リード文の中にも答えを導き出すヒントがあるので、実際にはリード文と3つの資料、計4点から、受験生がどのような発想をするかを見ることができる問題になったと思います。
白紙を避けるため箇条書きに
模範解答を用意して、採点したのですか。
鈴木先生 模範解答は用意しましたが、リード文や資料から読み取れることを1点以上踏まえればいいので、採点に困ることはなかったです。
資料の組み合わせは無数にあります。リード文には有料化と書いてあり、年金生活をしているご高齢の方にとっては、ゴミ袋の購入も負担になります。そのようなことも含めると、いろいろな答えが書ける問題ではありますが、白紙答案を避けたかったので、1つの資料からでもいいので、気づいたことを書くという形にしました。資料を提示しても使わずに、自分の知識で答える受験生が多いのです。知識がなければあきらめる傾向が見られるので、「そうではないんだよ」と。「知識がなくても、与えられた資料をじっくり読んだり、見たりして、気づいたことを素直に表現すればいいんだよ」というメッセージも込めました。
3つ書けていた子は40人中5人くらい。2つ書けていた子は40人中20人くらい。1つ書けていた子は40人中10人くらい。1つも書けない子が40人中5人くらい。箇条書きにしたことで、この程度の数字になったので、よかったと思っています。
逗子開成中学校 グラウンド
資料をよく見ている回答が目立った
この問題の前の問題でもゴミについて聞いています。それも、なんとしても答えてほしいという気持ちの表れだったのですね。
鈴木先生 その通りです。いくらでも答えがあるので、こちらを感心させてほしいという思いで出題しました。
感心させてくれた答えはありましたか。
鈴木先生 想定外の答えというよりは、「危険ゴミの回収が1ヶ月に1回しかないので困る」など、資料をよく見ていることに感心させられる答えが見られました。一方、見当違いの答えは、1つしか書けない子に多く見られました。高齢化により起こり得るゴミに関する問題点なので、たとえば「体が不自由だから」では不十分ですよね。たしかにその通りなのですが、もう少し踏み込んでほしいと思いました。
2つ以上の資料を関連させて答えても、点数は同じでしたか。
鈴木先生 1つの資料から言えることであっても、複数の資料を組み合わせて言えることであっても、今回は点数に差をつけていません。
現状に目を向けて生活しよう
ゴミを捨てるという、日常の様子が想像できたかどうかも大きいですよね。
鈴木先生 ゴミ問題×高齢化が子どもたちに無関係か、というとそうではありません。「少子高齢化」という言葉のように、子どもたちもかかわっていることなので、現状に目を向けていてほしいという思いがあります。
「少子高齢化」という言葉は知っていても、その先のことを自分事としてとらえられていない気がします。
鈴木先生 おっしゃる通りです。本校の生徒も同じで、たとえば税金の使い道についても、『僕らは納税者ではない』と言いますが、消費税は払っているわけですから、「そのお金がどう使われるのか、ということにも関心をもっていなければいけないんだよ」という話を、授業の中で折あるごとに意識して話しています。参政権もピンと来ていませんでしたのが、ついこの間、教えている生徒自身が参政権を得ることになりました。私が授業を担当しているクラス(高3)には、40名中10名くらい有権者がいました。その内、8名が「投票に行った」と言っていました。「出口調査を受けた」と喜んでいる生徒もいました。
参加率が高いですね。
鈴木先生 私も驚きました。あくまでも私のクラスの話ですが、世界史の授業でイギリスの選挙制度の変遷を話している時だったので、継続的に参院選の話をするうちに関心をもってくれたのかもしれません。「いろいろな人の政見放送がYouTubeに載っているから、見てみるとおもしろいよ」などという話もしたので、見てくれた生徒もいたかもしれませんね。
逗子開成中学校 OPヨット
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