シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

逗子開成中学校

2016年09月掲載

逗子開成中学校【社会】

2016年 逗子開成中学校入試問題より

次の文章を読んで、問に答えなさい。

鎌倉市や逗子市のように高齢者(こうれいしゃ)の多い地域では、ゴミに関するさまざまな問題がおこっており、その対策が必要となっています。

(問)下線部に関連して、下記の資料や問題文の内容をふまえて、高齢化によっておこりうるゴミに関する問題点を3つあげなさい。なお、新聞記事は読みやすく変えてあります。

資料

訪問専門の診療所(しんりょうじょ)を解禁(かいきん) 厚労省(こうろうしょう)、在宅医療後押(ざいたくいりょうあとお)し

厚生(こうせい)労働省は来年4月をめどに、医師が高齢者らの自宅を定期的に訪(おとず)れて診察(しんさつ)する「訪問診療」の専門診療所を認める方針だ。訪問診療の患者の8割以上は「要介護」と認定(にんてい)された高齢者で、外来で病院に行くことが難しい。政府は高齢者が病院ではなく自宅で治療(ちりょう)することを推(お)し進(すす)めている。(2015/7/10付 日本経済新聞)

使用済み注射針専用保管容器

ゴミの分別表

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この逗子開成中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例
  • 高齢者自身では分別するのが難しい種類のゴミが増える。
  • 取り扱いに注意が必要なゴミを、自宅で処理しないといけなくなる。
  • 危険ゴミの収集日が少なく、不適切なゴミ出しが増えるおそれがある。
解説

新聞記事を見ると、「政府は高齢者が病院ではなく自宅で治療することを推し進めている」とあり、今後ますます在宅医療が広まると予想されます。治療の場が病院から家庭に移行するということは、今までならば病院で処理していたゴミが家庭から出るようになるということです。そのなかには、資料にある使用済み注射針のように、取り扱いに注意しないと怪我をしたり、病気が感染したりするおそれがあるゴミも含まれます。また、血がついたガーゼや使用済の紙おむつなど、人によっては分別や捨て方を迷うゴミも出るでしょう。このような問題への対応は、今後ますます求められるようになります。現状のゴミ収集のしくみと、これらの問題を関連付けて、高齢化によっておこりうるゴミ問題を推測しましょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

社会科の入試問題において、高齢化によって生じる課題やゴミに関する問題が取り上げられることは、そうめずらしいことではありません。しかし、この問題のように高齢化社会とゴミという一見すると別々のことがらを関連付けたものは、これまでにはあまりありませんでした。ここでは、子どもたちにとって初見であろう複数の資料がしめされています。そして、それぞれの資料のどこに着目して手がかりとなる情報を選ぶのか、選んだ情報をどのように結び付け、そこから何を推測するのかが問われています。入試当日、子どもたちは資料に向き合うことで、高齢化社会とゴミといった2つのことがらを関連付ける新たな視点を得る体験をしたことでしょう。

現在の日本は65歳以上の高齢者が4人に1人を超し、その高齢化率は世界でもっとも高い水準となっています。今後も高齢化はさらに進み、それにともない新たな問題も出てくることが予想されます。知識を単体で身に付けるのではなく、知識どうしのつながりをさぐり、そこに新たな関係を見出していく姿勢は、子どもたちがこれからの未来をつくるうえで欠かせないものだと考えます。

以上の理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。