数の性質について論証する力を試す問題

曽根先生　論証問題は中学校で本格的に学びます。それでも小学校の段階で発想力や論証力、表現力がどれくらいあるかを試してみようと思い、算数でよく使う偶数・奇数やたし算・かけ算を題材にして出題しました。

論証問題というと問題文が難しそうなイメージがありますが、「でたらめに」のように、貴校の入試問題は小学生でもわかるように平易な言葉を使っていて感心します。

曽根先生　本来は「無作為に」や「ランダムに」と表現するところですが、そこは小学生に通じる言葉を選んだつもりです。

丁寧に説明しようとするとつい文が長くなってしまいます。わかりやすくしようと具体例を入れるのも長くなる原因の1つです。

曽根先生　最初は例を入れようと思ったのですが、それでは答えになってしまうのでやめました。

一般化されていない解答が目立った

論証問題は算数の範疇ではありません。どうしても説明が数学的になってしまって、実は模範解答を作成するのに苦労しました。受験生はどのような解き方をしていましたか。

曽根先生　私は背理法的な解き方を予想していましたが、そうした解き方をした受験生はいませんでした。具体例から一般化を説明したパターンだけでした。

この問題の正答率は、完答（満点）が22％、部分点38％、「偶数」のみ正解（論証なし）が10％で、何かしら点数がもらえた受験生は70％でした。残りは「奇数」の誤答が9％、無答が21％でした。

予想よりも受験生は食らいついて書いてくれてうれしかったです。この問題は最後の問題ですが、ほかの問題が比較的解きやすかったと思うので、じっくり取り組む余裕があったのかもしれません。

曽根先生　完答に届かなかった解答は、具体例のみで一般化されていないものがほとんどでした。具体的な数字を当てはめて偶数だったことから「つねに偶数になる」と結論づけていましたが、1例だけではたまたま偶数になったかもしれず、説明としては不十分です。具体例からさらに踏み込んで、読み手が納得する理屈を提示してほしいところです。

中には過不足なく理路整然と説明できた答案も

曽根先生　また、結構いろいろ書いていましたが、余計なことが書いてある答案が多かったです。

それでも過不足なく理路整然と説明していた答案がいくつかありました。時間制限がある中で、優先順位をつけて取捨選択して簡潔に文章化できるということは、問題の本質を見抜くことができているということです。かなり力がある証拠です。

ただ、受験生にはそこまでは要求していません。余計なことが書かれていても論理に破綻がなく、読み手にきちんと伝われば満点をつけました。

何とかして読み手に自分の考え方を伝えよう

曽根先生　小学生ですから、言葉足らずでも分かっていると思われる答案はできるだけ加点しています。最初は「これでは点数をあげられない」と思ったものの、読み返して「そういうことか」と点数をあげた答案がありました。表現力は入学してから鍛えればいいので、そこは大目に見ています。

こちらとしては受験生の考え方を知りたいので、何とかして頭の中の考えを表現して「わかっている」ことを伝えてください。説明しようともがいた形跡が見られれば加点の可能性があります。

受験生には第一印象で“降参”せずに試行錯誤してほしいと思います。試行錯誤する力は大学入試でも求められます。本校は医学部を目指す生徒が多いのですが、特に医学部の入試問題は解法のパターンを覚えれば解けるような問題ではありません。普段からあれこれ考え、手を動かして解くことも意識しましょう。