シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

暁星中学校

2016年08月掲載

暁星中学校【算数】

2016年 暁星中学校入試問題より

(問)、……、に整数1、2、3、……、15をでたらめに1つずつ入れます。
ただし、同じ数字は2回以上使えないものとします。
どのように入れたとしても、

(1+)×(2+)×(3+)×……×(14+)×(15+

はつねに奇数か偶数のうちのどちらかになります。
どちらになるかを理由とともに答えなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この暁星中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

答え 偶数
理由 例
1から15までに整数は15個あり、そのうち奇数は8個、偶数は7個ある。
よって、にどのように整数を入れても、少なくとも1組は「奇数+奇数」のペアができる。
「奇数+奇数」は偶数になるので、偶数を少なくとも1つかけていることになる。
偶数を1つでもかけるとその積は偶数になるので、この式を計算して得られる値はつねに偶数になる。

解説

2つ以上の整数の積は、かけ合わせる数がすべて奇数の場合は奇数になり、かけ合わせる数に1つでも偶数が含まれている場合は偶数になります。このことに着目します。

15個の に15個の整数を1つずつ入れるので、1から15までの整数をすべて入れることになります。
1から15までの15個の整数には、奇数は1、3、5、7、9、11、13、15の8個あり、偶数は2、4、6、8、10、12、14の7個あります。
つまり、それぞれのかっこの中の、たされる数にもたす数にも奇数が8個、偶数が7個あることになります。すると、たし算のペアをどのように決めていっても、必ず1組以上「奇数+奇数」のペアができることがわかります。
「奇数+奇数」の計算結果は必ず偶数になるので、このかけ算の中に、少なくとも1つは偶数が含まれていることがわかります。
2つ以上の整数の積は、かけ合わせる数に1つでも偶数が含まれている場合は、ほかの数がどのような数であっても必ず偶数になります。
ですから、15個の にどのように数を入れても、この式を計算して得られる値はつねに偶数になるといえます。

日能研がこの問題を選んだ理由

奇数・偶数の性質と、たし算・かけ算の意味に、改めて目を向けるきっかけとなる問題でした。

「でたらめに」数を入れても「つねに」同じ結果になるというところに、この問題のおもしろさがあります。その結果になるような具体例を1つや2つ示しただけでは、「つねに」同じ結果になることを示したことにはなりません。また、「でたらめに」15個の数を入れる入れ方は1兆通り以上(=15×14×13×…×3×2×1)あるので、それらを全て示すことは現実的ではありません。そこで必要になるのが、一般化です。

一般化するためには、ある特定の数が持つ性質ではなく、奇数すべてに共通する性質、偶数すべてに共通する性質や、それらと演算との関係に目を向ける必要があります。

式に使われている1つの数や数どうしの結びつきが、式全体にどのような影響を及ぼすのかをとらえ、その中で、「つねに」言えること、「必ず」成り立つことを明確にしていくことが求められます。

このような視点は、中学や高校で学ぶ数学につながるだけでなく、「論理的に思考する」という過程において欠かせないものといえるでしょう。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。