シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

佼成学園中学校

2016年08月掲載

佼成学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.初見の問題、題材でも、ひるまずにチャレンジしよう!

インタビュー1/3

食物連鎖の問題を出したかった

この問題の出題意図からお話ください。

石井先生 学校全体の方向性として、オーソドックスなテーマを出題することにしていますので、まずは理科でよく出題している『食物連鎖(食べる、食べられる、の関係)』に関する問題にしようと決めました。

題材で悩みましたが、動物ではうさぎと肉食のほ乳類、魚ではメダカ、フナなどを扱うことが多いと思います。そうしたありきたりのものではなく、違ったものを扱いたいと思いました。そこで思い出したのが『家魚』です。私は釣りが趣味で、中2の頃からやっています。特に淡水が好きなので、ハクレンやソウギョを釣ってみたいと思っていました。『家魚』についても、食べる、食べられる、の関係が存在していることに気付いてから、いつかネタにしようと思っていました。そうしたことが重なって、このような問題ができあがりました。

理科・高1学年主任/石井学先生

理科・高1学年主任/石井学先生

正答率は残念ながら低かった

これらは、どのような魚なのですか。

石井先生 みんな鯉の仲間なのですが、小学生には馴染みのない魚だったと思います。コクレンは日本にあまり生息していません。釣ると新聞に載るくらい、珍しい魚です。中国から、利根川にソウギョを移す時に、池から持ってきたんでしょうね。ハクレン、コクレン、アオウオも混ざっていて、ハクレンとアオウオは定着していますが、コクレンは混ざっていた量が少なかったのか、ほぼいません。

出来はいかがでしたか。

石井先生 あまりよくなかったです。Dの正答率は40%。他は30%くらいでした。小問としては、難しかったかなと思っています。

どのような間違いが目立ちましたか。

石井先生 Aに魚の名前を入れている受験生が多かったです。

もっている知識と与えられた情報を結びつけて考える問題

食べる、食べられる、の関係に関する知識と、与えられた情報(この魚は何を食べるのか)を結びつけて考える問題です。タニシが何をエサとしているか、などの知識がないと、難しかったかもしれません。

石井先生 おっしゃるとおり、Aにタニシが入ると、Bがアオウオだと気づくと思います。植物プランクトンは動物プランクトンに食べられる。そうすると動物プランクトンが増えて、コクレンのエサとなる。そういう答えを導き出したかったのですが、与えられた情報を整理して、うまく文章に当てはめることができなかったようです。

だからこそ「なんだろう」と、家に帰って調べた子がいたと思います。

石井先生 そうだと嬉しいですね。僕が教員1年目で、定期考査の問題を作ろうとした時に、「テストを通して、(生徒の)考えていたことがつながるような問題を出せたらいいね」と先輩の教員からアドバイスされました。それを、この問題を作る時にも意識しました。

佼成学園中学校

佼成学園中学校

子どもが興味関心をもつ問題を作りたい

全体を通して、子どもが興味関心をもつような問題や、その場で考えさせる問題が増えたような気がします。

石井先生 教科として、そこは意識しているところです。昨年から適性検査型の入試を始めました。北に行くほど、動物の体が大きくなる。それはなぜか、というような問題も同時に作りました。生徒と国立科学博物館に行った時に、ハーディ−・ワインベルグの法則やアレンの法則なども、中学入試レベルでも使えると思いました。

題材は普段から探しているのですか。

石井先生 私は生物が専門なので、アンテナを張っています。ストックしておき、そこから引き出しています。定期考査には出せませんが、授業の中で話すことはあります。これらの魚の話や釣りの話もしました。自己紹介で釣り道具の話をしたこともあります。この問題が電車に掲載されたら、「佼成だ」「魚だ」というところから、卒業生も含めて、僕が出題者ではないかと思う子がいると思います。

入試問題は教科の中でよく話し合って作る

問題は持ち寄りですか。

石井先生 はい。物理、化学、生物、地学の先生が問題を持ち寄り、テーマがかぶらないよう話し合って作っています。たとえば化学分野の分子の構造は、化学の教員がいつかは出したいと温めていた題材。どうやって出すかを作成担当の教員が考えて、パズル的な要素を含んだ問題にしました。難しい問題ですが、ちょっとしたことに気づくと解きやすくなります。小学校の教科書にアボガドロの法則は出て来ませんが、それでも解けるように、教科内でいろいろと話し合い、工夫しながら進めました。教科書に載っていることを中心に、少し発展的な問題も入れて、バランスのいい問題を作ること。理科の入試が3回あるので、ほぼ同じ難易度にすることを心がけています。

入試問題を作るにあたり、他教科の先生にも見てもらうということはありますか。

石井先生 他教科も一緒に、入試の情報交換会があったらおもしろいですね。適性検査型入試問題では複数の教科が関わっています。

ただ、日常的に教員同士が会話をしていて、入試に絡んだ話も時にはします。他教科がどんなことを考えているのか、というのは情報として入ってきていますので、垣根を感じることはありません。学年のつながりは相当強いです。こういう子ども達に入って来てほしい。そしてこういう育て方をしていきたい、という軸は共有できていると思います。

佼成学園中学校

佼成学園中学校

丁寧に答案を見て採点している

どのようなお子さんに入ってきてほしいですか。

石井先生 合っているか、間違っているかは別として、自分の考えをきちんと伝えられる子に入ってきてほしいと思っています。記述問題や計算問題を一定数入れて、論理的に考える力も問いたいと思っています。採点していて思ったのは、小学生なりに考えて取り組んでくれているということ。本校の受験生の中には、受験勉強のスタートがあまり早くなかった子もいると思いますが、頑張ってくれていると思います。

記述問題では、得点を加算する場合もありますか。

石井先生 答えから、大きく外れていなければ、部分点をあげることはあります。そういう解答というのは、1人の採点者だけでなく、必ず「さっきも(同じような解答が)あったよね」と、複数の採点者が同意する場合が多いので、そういう時の判断は柔軟にしています。採点する場には、理科の問題作りにかかわった教員が全員いますので、点数をあげている場合が多いと思います。丁寧に答案を見ることができていると思います。

インタビュー1/3

佼成学園中学校
佼成学園中学校「建学の精神」は、「法華経の精神に基づき、豊かな宗教的情操を培い、知に偏らず、情・意の教育にも力を注ぎ、心身一如の円満な人格をもった平和社会の繁栄に貢献できる人間を育成する」ことである。
一人ひとりが素晴らしい心を持っていることを知り、多くの人とともに生き、磨きあい、助け合いながら、現実の社会と積極的にかかわろうとすること、また、生涯にわたり自らを支える豊かな心と幅広い視野、そして確かな学力。一人ひとりがそんな「自ら育つ力」を身につけることを目指している。
機能的で広さや採光に十分に配慮された校舎は、伸び伸びと気持ちよく過ごせる空間になっている。また、コンピュータ教室、LL教室、音楽教室などの本格的な設備も完備し、全ての普通教室に電子黒板機能つきプロジェクターおよびWi-Fi環境が整備されている。 2015年度高校入学生より導入のタブレット端末とあわせて、新しい学びの形の実現がすすめられている。
生徒と先生の距離が近く、職員室ではいつも、気軽に先生に相談する生徒の姿が見られる。生徒同士、生徒と先生、先生同士という、その人と人との関係の強さが、東京大学に5年連続で合格者が出ているのを始めとして、年々、難関大学への進学者が増加という成果につながる。もちろん、勉強面だけではなく、数多くある体育系・文化系のどちらの部活動も盛んである。