出題校にインタビュー!
駒場東邦中学校
2016年07月掲載
駒場東邦中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.理系の専門職に就いても文系の教養や思考は必要。すべての学びは社会へつながる。
インタビュー3/3
中3の奈良京都研究旅行で論文を書く
先生 中1の学習で得た経験を、中2の鎌倉見学や、中3の奈良京都研究旅行でも生かして、自分で課題を見つける⇒分析・考察⇒アウトプットする力を、身につけさせています。
それも社会科で行っているのですか。
先生 奈良京都研究旅行(3泊4日)は、総合学習の一環として行っています。国語、社会などの内容を踏まえて、自らの興味・関心にもとづき、課題を設定し、現地で自分の目で見て確かめて、わかったこと、考えたことを論文にまとめて発表します。さまざまな教科の教員が1年間かかわって、指導するので、どの論文も読みごたえがあり、優秀論文の発表はすごく楽しいです。
中2の2月頃に課題を出して、2度、3度、4度とやりとりを繰り返す中でテーマを決めていきます。さまざまな切り口があることを伝えるために、いろいろな資料を提示しています。旅行自体は9月末で、発表会は年が明けて1月か2月に実施しています。
駒場東邦中学校 優秀論文集、レポート集
論文は、どんな切り口で料理するかが一番大事
先生 毎年、「よくこんなテーマを思いつくな」と感心させられます。調べた量よりも、どういう切り口で料理するかが大事。生徒の素朴な疑問をかき出し、少し調べさせて、その後に疑問が思い浮かぶかどうかまで確かめて、GOサインを出すというように、丁寧にステップを踏ませています。
おもしろかったテーマをいくつか教えてください。
先生 仁和寺の法師はなぜ山上まで行かないでUターンしてしまったのか。そんな考察があったり、昔の鐘はどの範囲まで聞こえていたのかを理科的な手法でアプローチしたり。実にいろいろな観点から分析しています。龍安寺の石庭の石の配置はカシオペア座と似ていますが、逆回転させるはずはないから、上からの視点ではなく、下から見た天の川だったではないか、という分析もありました。
パソコン操作も生徒同士で教え合う
資料はパワーポイントで作るのですか。
先生 発表する人には、自分の論文をもとにパワーポイントで資料を作ってもらいます。最初にちょっと操作させると、グループの中に飲み込みのいい生徒がいるので、あとは生徒同士で教えあいながら、1週間後に7割くらいはできてきます。
駒場東邦高等学校 マニフェスト集
「社会科が好き」という生徒は、中1でクラスに数名程度
社会科が好きな生徒さんが多いのですか。
先生 いえいえ。中1段階で「嫌い」が4分の3います。「好き」と答える子は、クラスで2名程度です。今、世の中でアクティブラーニングという言葉が出回っていますが、本校では生徒の「社会=暗記」といった意識を変えたくて、生徒が能動的にかかわる授業を以前から行っています。高1公民の演習中心の授業では、最終学期にマニフェスト発表なども行います。彼らなりに課題を設定し、財源を含めて解決策まで考えて発表し、学年でベストマニフェストを選んでいます。
発表形式の授業は反応がよく、盛り上がりますが、大学受験に目を向けると、どれだけ覚えているかを問う問題が圧倒的です。「受験勉強は暗記だよね」という外圧もある中で、生徒がどの程度、こちらのねらいを理解し、社会科に興味をもってくれているかはわかりません。ただ卒業生には、歴史の教育者になって大学で教えている人もいます。政治記者をやっている人もいます。興味をもって突き進んでいる人がいるのはたしかです。
ジェネラリストとして活躍してくれる人材の育成が目標
先生 社会科に興味関心を示してくれる人が増えてくれるのも嬉しいですが、私たちが目指しているのは、卒業後の進路(文系、理系)を問わず、文系的なセンスをもって、ジェネラリストとして活躍してくれる人材の育成です。たとえば、人間がわかるお医者さんになってほしい。それには貢献しているのではないかと思います。
生徒も、「社会が嫌い」と言いながらも、文系と理系の橋渡しができるような分野の勉強をしたいという人がすごく増えています。理系に進んでも、文系のことに興味があって、受験を突破した後に、「どんな本を読んだらいいですか」と、聞きに来る人も多く、やりがいがあります。
本校の理科も同じように考えていると思いますが、社会科では、一般社会や日々の生活の中で問題を見つける力、気づく力をどれだけ身につけさせることができるか、を考えています。それが私たちの果たす役割であり、「君たちの身の回りにはこんなにおもしろいことがあるんだよ」ということを伝えたいと思っています。
駒場東邦中学校 校舎
中高6年間で成功体験を積み重ねてほしい
先生 生徒には、あらかじめ提示された問題に取り組むだけではなく、自分で問題を見つけて、解決策を考え、最終的に社会に還元できるようになってほしい、と考えています。そのためにも、中高6年間で成功体験を積み重ねてもらうことが大切です。現場取材やインタビューも課すのですが、オリンピックの国立競技場の建設に関連して立ち退きを迫られた団地にインタビューに行った子たちが、その話題が世の中から消えた後、課題でもなんでもないのに、もう1回、話を聞きに行ったので驚きました。1回目の取材で手応えがあったのだろうと思います。中高の学びではそういうことが大事だと感じています。
社会人に必要な基礎力を磨こう
教頭先生 学校説明会などでも、「大学に行くことが目的ではありませんよ」と言っています。社会人に必要な基礎力を、教科をはじめ、さまざまな学びの中で身についていくことを大事にしている学校なので、文理に分かれるのも、高3になってからです。文系志望で、理科や数学は嫌いと言ってもやらせます。そういうことが将来役立つと言っても、在学中に実感することは難しいかもしれませんが、大学を経て、社会に出た時に、必ず実感できます。中学入試で、初見の問題にこだわり、自分なりに考えて、答えを出すことを求めているのも、アドミッションポリシーによるものだと思います。
駒場東邦中学校
インタビュー3/3