出題校にインタビュー!
捜真女学校中学部
2016年07月掲載
捜真女学校中学部の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.自分の考えを、自分の言葉で表現する。学校生活の中で育む「言葉の力」
インタビュー2/3
国語は、すべての学びの基礎になる
6年間の国語教育で大切にしていることを教えてください。
石黒先生 本校では、「言葉の力」を非常に大切にしています。日常の言葉の力を核に、国語は教科を超えてすべての学習の基礎になると考えています。
捜真に大村はまさんという卒業生がいます。国語教育では名前が知られている方です。大村はまさんは単元学習を確立されましたが、これは教科書だけではなく新聞記事や他の本なども使い、学習をどんどん広げていくものです。教科の枠組みを超えて、すべての教科の基礎になる力を養ってほしいです。
稲川先生 教科を横断ということであれば、たとえば、国語の試験でも「戦争が終わった日は何月何日?」というような出題をするなど、ただ事柄だけではなく、背景をベースに大きな枠組のなかで理解してほしいと思っています。授業のなかでも「よく話が広がっていきますね」と、生徒に言われています。
今回の出題のテーマの一つでもあった「具体と抽象」の関係をとらえる力は、どのように育まれているのでしょうか
稲川先生 たとえば、修学旅行で訪れる奈良の浄瑠璃寺へは、堀辰雄の『浄瑠璃寺の春』という作品を読んでから行きます。小説のキーワードになっているのは“第二の自然”ですが、実際に舞台となった場所を訪れて、初めて具体的に「あ、これがいわゆる“第二の自然”なのね」と実感することができます。“第二の自然”という非常に抽象的な事柄と具体的な舞台とを関連させていくことも、「具体」と「抽象」を結びつける学びの一つだと思います。
石黒先生 そうですね、京都においても、『今昔物語集』の検非違使が清水の舞台から飛び降りたということが、実際に舞台の上に立つことでその高さを実感できると思います。広島に行く前には『黒い雨』を文庫本で読んでいきます。教科書では抜粋されることが多い作品でも、事前の学びでは、必ず作品の全体を読み込んでおくと違います。
国語科/稲川さつき先生
礼拝で育む「聞く」力・「話す」力
自分の思いを人前で話す機会が多いと伺いました。
稲川先生 捜真では毎日、礼拝があります。礼拝では、生徒が「話す」機会を多く設けていて、同時に、人の話を「聞く」ということも大切にしています。クラスで生徒が担当する生徒礼拝では、生徒自身が感じていることを、原稿にまとめて発表します。話すことが苦手な生徒も、話さざるを得ない状況におかれていくうちに、話し足りないほどに自分の思いがあふれていくようです。
石黒先生 高2高3になると、自発的に自己の内面を深く掘り下げた話もしていきます。生徒それぞれの心の揺らぎを語る、いい場面だと感じています。中1から毎日の礼拝を積み上げていくことで、考えが広がり、深まっていって、自分の言葉を見つけられるのだと思います。
文集につづる“同世代”の声
石黒先生 また、年に一度、生徒たちの作品をまとめた文集を発行しています。1942年から校内で発行していた機関紙の流れを受けて、1975年からは国語科で発行を続けています。
日常の素材や修学旅行で経験した学びなど、年間で書きためた作品のなかから、「同世代が読むのにいい作品」を選んで掲載します。過去の文集を読むことで、先輩たちが自分と“同じ学年”だったときに、どんな思いをもっていたのか触れることもできますし、同じ体験についても、同級生は、このように書くのかと楽しんで読んでいるようです。作家の角田光代さんの在校時代の作品も掲載されているんですよ。
捜真女学校中学部 文集
「読む」力・「書く」力も、しっかりと身につける
石黒先生 年度の初めにはどの学年でも、ひらがなの書写を行います。基本に立ち戻り、上手でなくてもいいので、文字にきちんと向き合って、ていねいにしっかりと書くことを大切にしてほしいと思っています。
稲川先生 高等学部になるとホームルームで、新聞記事を読み込んでいくことで、「読む」力もつけていきます。いろいろな新聞のなかから教員がピックアップした記事を読んで、骨子の部分はどこなのか、なぜ話題になっているかなどを読み取っていきます。さらに、自分の感想や考えを書いて必ずアウトプットします。国語科だけではなく、いろいろな教科の教員が記事の取り上げを担当することで、視点や素材の幅も広がります。学年全体で取り組んでいる活動です。
インタビュー2/3