シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

捜真女学校中学部

2016年07月掲載

捜真女学校中学部の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.物語の全体をしっかりと、ていねいに読み取る力が大切

インタビュー1/3

「具体」と「抽象」、言葉をとおしてイメージを広げていく

出題意図からお話しいただけますか。

石黒先生 「具体」と「抽象」をしっかり結びつけるといったことは、文章を読み解くうえで非常に重要な力です。今回の問題は、算数に関係する部分が一見難しく見えますが、ゆっくりとていねいに読めば、必ず答えられると思って出題しました。

稲川先生 算数の部分は、国語科教員の自分も敬遠してしまいがちですが(笑)、今回は私たちも頑張ってみました。傍線の部分だけを読むのではなく、順を追ってたどっていけば、それほど難しい問題ではないと思います。

国語科/石黒明子先生

国語科/石黒明子先生

子どもたちの「読み取る力」を信じて

素材文は、時代小説でもありますね。

石黒先生 遠藤寛子さんの『算法少女』という、江戸時代を舞台にした時代小説です。作品そのものに非常に力があるため、素材を大切にして本文の表現も変えないようにしました。

注釈のつけ方は、どのような点に注意されたのでしょうか。

稲川先生 外接円など聞きなれない言葉が出てきますが、注をつけすぎると注にばかり気をとられてしまい、本文を読むじゃまになってしまいます。内容が100%わかればもちろんいいのですが、だいたいこういうことを言っているなと読み取っていくことも重要だと思います。ですから、いたずらに注をつけすぎず、最低限の10個くらいに抑えて、子どもたちの読み取る力を信じました。

解答のレベルはいかがでしたか。

石黒先生 正解率は7割でした。正解の次に多かった解答もウだったので、2つの円があるというのは読みとれていましたね。文章を読み飛ばすことがないように、しっかりとていねいに作品全体を読んでほしいという目的の一つは果たされたと思います。

稲川先生 思いのほかできていました。図を思い浮かべてごらんと投げかけると、ちゃんと子どもたちもついてくるんだと、うれしかったです。それは予想外でした。受験生のみなさんの読む力はしっかりあったと思います。

字数の指定がない問題が多かったですが、今年のキーワードの一つである「具体」と「抽象」ということでいえば、受験生の答案にはどのようなことを期待されていたのでしょうか。

石黒先生 「具体」も「抽象」も、どちらも重要です。ただ、いちばん期待していたのは、傍線の引かれた前後のところだけを見てまとめるというのではなく、全体を考えてよく読み取ってほしいということです。ですから、そこが読み取れていれば、正解として採点しました。

稲川先生 的確に答えてほしいときは、「具体的に答えなさい」と設問していますが、「ここは抽象的に答えなさい」と小学生に言ってもピンとこないかもしれません。ですから解答欄に大小をつけて、どう答えてくるかを楽しみにしていました。

石黒先生 テクニックで解こうとするのではなく、作品そのものを読んでほしいのです。そうすれば、答えとして書く言葉には自ずと「具体」も「抽象」も出てくるはずです。

今回は、記述式の解答に文字数の指定がありませんでした。解答の指定の文字数によって、解答率は変わってくるものでしょうか。

稲川先生 100文字と見るだけで、後回しにする受験生も多いかもしれません。かえって30文字と少ないほうが、的確に言葉を用いないといけないので難しい場合もありますが、抵抗感は少ないみたいですね。

石黒先生 高校生になっても記述式が苦手な生徒は、やはり多いですね。字数が多くても、気弱にならないでほしいです。時間的な制限があるので、選択肢で出さざるを得ませんが、すべて記述にしたいくらいです。書くというのは練習を重ねていけばできるようになります。書くことに躊躇しないでほしいと思います。

出題作品は、受験生への“応援メッセージ”

入試問題をつくるうえで、国語科が大切にしていることを教えてください。

石黒先生 この作品は、明治維新の前に和算で活躍し、名をなした少女の成長物語です。主体性をもって女の子が学んでいく、とてもいい作品です。何十という候補の作品を国語科の教員全員で読み込んだうえで、今の受験生に一番読んでもらいたいという気持ちで選びました。受験生のみなさんと、もし、最初で最後の出会いになったとしても、勇気づけることができたり、いい本との出会いになるような作品を選びたいと考えています。

稲川先生 江戸時代のこととはいえ、できるだけ小学生の子たちからかけ離れた世界ではなく、少しでも身近なところから関心を広げていって、考えてほしいと思います。「女のくせに」といわれても、それでも学んでいくという主人公が魅力的です。帰ったあとに興味をもって、この作品を読んでみたいと思ってもらえるとうれしいです。

小説は、久しぶりの出題ですね

稲川先生 小説は長くなってしまうので、出題しづらいのですが、この作品は出題部分だけを切り取っても伝わると思って、満場一致で決まりました。

石黒先生 いい作品というのは、読書をしていく力を喚起してくれます。そういう作品に少しでも出会ってもらいたいと思っています。いい作品と出会えると、問題を作る私たちもうれしくなります。

捜真女学校中学部 制服

捜真女学校中学部 制服

インタビュー1/3

捜真女学校中学部
捜真女学校中学部1886(明治19)年、横浜山手に米国バプテスト派宣教師ブラウン夫人により英和女学校が創立。プロテスタントの日本バプテスト同盟に属する。1892(明治25)年に現校名に改称した。1986(昭和61)年の創立100周年にチャペルにパイプオルガンを設置。1991(平成3)年には新校舎を落成。2016年に、創立130周年を記念して食堂と自習室のある新校舎を建設。
校名のとおり、「真理を捜し求める」ことを建学の精神として、礼拝・聖書の時間、自然教室や修養会などをとおして、イエス・キリストによって示されている神の愛に基づく人格形成を行っている。校名の頭文字を白い富士と青い海に重ねた校章は、学院精神を象徴したもの。独自のプログラムにより国際性も育成するほか、保護者との連絡も密で、PTA活動も盛んに行われている。
小・中・高校が同じ敷地にある。体育館(含室内プール)も含めた7つの校舎、土の運動場、ベタニアガーデン、テニスコートなどを擁する。校内の施設にはパイプオルガンのあるチャペル、コンピュータ室、同校の教師だった日本画家・小倉遊亀に因んだユキホールなどがある。静岡県御殿場には自然教室ももっている。
特に英語に力を入れており、中高とも全学年で英語は少人数クラスでの授業を行っている。英会話は外国人教師による授業。中2以上の英語、中3以上の数学、高校生では、国語・社会で習熟度別授業も実施。高2・高3では大幅な選択科目を採用し、個々の進路を尊重した受講を可能にしている。聖書は高3まで必修科目。土曜日、放課後、長期休暇中に必要に応じて補習もある。4年制大学への進学率は9割に達し、早慶上智大、MARCHなど難関私大への合格者も増加している。
毎日20分の礼拝がある。共練会(生徒会)は、積極的、自主的に運営されている。クラブ活動は体育部門13、文化部門19あり、ソフトボール部、バトン部、水泳部、放送部は県内でもトップクラスの実力。母の日礼拝やクリスマス礼拝などの宗教行事のほか合唱コンクール、古典芸能鑑賞会、体育祭など、楽しい行事も盛りだくさん。共練会とは別にJOC(クリスチャン生徒の集まり)、YWCA(キリスト教女子青年会)、聖歌隊があり、聖書研究や奉仕など宗教的活動を行う。中1から参加できる春のアメリカ短期研修のほか、高1以上の希望者には、メルボルンでのオーストラリア夏期短期研修も。