シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

学習院中等科

2016年06月掲載

学習院中等科の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.受験のための数学ではなく、思考力を伸ばすための数学は難しいけれどおもしろい。

インタビュー2/3

入試問題は、超基礎・基礎・思考力の三部構成

上嶋先生 数学の問題、全体としては、大問1、大問2が超基礎力を問う問題。大問3、大問4が基礎問題。大問5あたりから、問1は解けるけど、問2、問3は少し思考が必要というグラデーションを意識しています。考える力をもっとも単純化すると計算になります。大問1、大問2では、計算問題と単純な文章題を出題し、計算の順番を間違えずに、確実に答えを出せるかを見た上で、思考力を問うています。

満点でなくても、一生懸命考える子がほしいので、できるだけ途中式を書かせるように出題し、その子がどういうふうに考えたのかを含めて採点しています。

では、部分点もつけている?

上嶋先生 部分点はつけています。考え方は合っているのに、計算間違いをしたために答えを間違えてしまった、ということもありますから。そういう解答をうまく拾ってあげたいと思っています。

数学科/上嶋敏裕先生

数学科/上嶋敏裕先生

在校生もこうした問題が好き

在校生は、この問題に興味をもつと思いますか。

上嶋先生 テストと関係なければ、喜んでやると思います。問題文から考えられる数が12個あります。3個は出ているので、候補は9個です。9個ならすぐできそうな感じがするので、思考の渦に取り込まれて、飽きずに取り組んでくれると思います。

学習院中等科には、どのようなお子さんが多いのでしょうか。

近澤先生 もともとおおらかな子が多く、そういう子を中高6年間にわたり教育できるので、受験のための勉強ではなく、思考力を伸ばす学習を目指しています。プロセスを大事に、しっかり考え、解くことができる、時間的なゆとりがあることも大きいです。めざすところが思考力の伸張なので、中1から中3まで、思考力検定を受けさせています。

高等科での証明問題などで力を発揮

上嶋先生 将来、どのような道に進むかは、入ってくる時点ではわかりません。理系に進む子もいれば、文系に進む子もいます。最近の傾向では、半分が学習院大学に進学し、半分は外へ出ますが、仮に文系に進んだとしても、数学がまったく関係ないわけではないですよね。経済学部に進めば、線形代数などを学びます。これは、数学科でも学ぶ内容です。心理学科では統計を学びます。法律学科の文章や論理の構成は、数学の証明と同じです。つまり、文系に進んでも数学は必要になることが多いので、入学後もたくさん自分の考えを書かせます。その差が、高校受験を経て入学した生徒との間で顕著なのは、証明問題など、答えに導かなければいけない問題と向き合った時です。中等科から上がった生徒はなんとか書こうとしますが、高校受験を経て入学した生徒は真っ白らしいのです。そういう話を聞くと、こちらが意図する教育はできているのかなと思います。

学習院中等科

学習院中等科

中等科の教員は中学の授業を担当

中等部の先生が高校生を指導することはないのですか。

上嶋先生 部活動でかかわることはあっても、数学活動ではないです。ただ、時々、「高校の数学科の先生がつかまらないから教えてください」と生徒が来ることがあります。その時は「ちょっと待て。5分くらいくれ」と言って、準備して、わかるように説明してあげています。また、授業数の関係で、高校を教えることもまれにありますが、手を放して見ているほうが、彼らにとってはちょうどいい距離感のようです。

近澤先生 授業はもちませんが、同じ校舎なので顔を合わせることはありますし、高校の数学科の先生とも交流はあります。

純粋に数学に興味をもってほしい

中学受験の問題はもちろん、高校受験の問題も、難問奇問がないですよね。

上嶋先生 中高の数学科の教員は、全員が数学科、あるいは数理科出身です。教え方の研究ではなく、数学の研究をしてきた人たちなので、専攻分野は異なりますが、数学のおもしろさはここにある、という核になるものをもっているという点で、共通していると思います。

我々は高校の入試問題にはノータッチですし、中学入試の問題については、向こう(高等科の数学教員)もノータッチですが、根底に流れている、純粋に数学に興味をもってほしいという気持ちは同じなので、結局同じような形式の問題になっているように思います。問題作りにおいて、重要視しているのは、受験生が楽しんで解いてくれる問題を出すこと。過去の問題から逸脱せず、受験生が勉強していれば解けるような問題を出すことです。

学習院中等科

学習院中等科

平常点を重視した評価

近澤先生 きちんとノートを取れる子、先生の話もノートに書き留めることができる子は、確実に伸びていきます。本校の特色として、まじめにこつこつやる子は確実に伸びるので、そういう子に入ってきてほしいです。

そのために、入試でも考え方を必ず書かせていて、実際に、まじめにこつこつやる子が入ってきています。テストの点数だけでなく、持ち物、宿題、ノート、学習態度など、平常の取り組みを重点的に評価しているので、こつこつやることが苦手な生徒も、成績表を見て、テストの点数だけではないと知り、だんだんとやるようになっていきます。宿題を多く出す先生は多いと思います。

授業は、代数も幾何も習熟度別に分けて、細かく教えています。聞けば、専門の先生が教えてくれるので、生徒にとって勉強がしやすい環境だと思います。

問題の答えを与えないから自分でやるしかない

上嶋先生 学校で出している問題については、答えを与えていません。「答えをください」と言ってくる生徒もいますが、そのつど「ないから3回解きなさい」と言います。「3回とも答えが同じなら合っているし、1回でも違ったら、全部間違っているかもしれないから、解いて判断しなさい」と言うと、生徒はがっかりしますが、「持ってきたら見てあげるよ」という一言はそえるので、持って来ます。

私が幾何を担当している時は、板書をした証明を必ず2回ずつ写させました。それをきちんとやらなかった子は、高2くらいになって「先生、なぜ言ってくれなかったの」と文句を言います。やった子は「あれが力になった」と言ってくれます。きちんとやらなかった子は、高校で沈んでいき、気づいた時には遅く、浪人するケースが多いです。きちんとやった子は、現役で大学に合格しています。思考が苦手でも、言われたことにしっかり取り組めれば、後々できるようになります。テストの成績はよくても、平常点により中間層の上下が入れ替わることも珍しくありません。

学習院中等科

学習院中等科

中高で養った考える力は、大学や大学院で開花する

上嶋先生 熱い鉄を純粋に打ち続けるのが、本校のやり方です。プリントやICTを使うこともありますが、基本的には宿題で初歩固めをします。先生が話していることを聞くだけでは理解できないので、演習問題をたくさんやらせます。生徒はいやがりますが、6年間、やらせるので、数学の力や考える力は一般的なレベルよりもついているのではないかと思います。それは数学に限らず、他の教科でも同じです。

大学で学ぶ卒業生が、顔を出しては「同級生と話が合わない」と言います。1年生の段階で、です。「誰となら合うの?」と聞くと、「3年生や4年生」だと言います。いろいろな要素があるのですが、同級生が幼く見えてしまうようです。最近担任した生徒では、東大に進学した子が「意見は言うけど議論ができない」と言っていました。だから大学時代は「議論をしなかった」と言うのです。大学院に進んで、「議論が成立する人もいるということに、ようやく気づいた」と言っていました。

やはり、解けないにしても、時間をとって、十分に考えさせ、どう考えればいいかということを見てあげることができている。その余裕が、結果として、彼らが巣立っていった時に、力になっているのではないかと思います。

インタビュー2/3

学習院中等科
学習院中等科1847(弘化4)年、孝明天皇により京都につくられた公家の学問所が始まり。「ひろい視野、たくましい創造力、ゆたかな感受性」の育成に力を入れている。早い時期から帰国生を受け入れ国際化する現実にも即応。アメリカ・メリーランド州セント・ポール高校と、高等科との交換留学も行われている。
中等科は大学までの基礎と位置づけられ、じっくりと基礎学力を養成する。近年は学習院大学への進学は5割程度。JR山手線・目白駅からすぐの学習院大学と同じ敷地内にあり、校地の広さと緑の多さは都内でも随一。
中高が独立しているため生活環境ははっきり違う。中等科では規律正しい指導をするが、高等科は自主性を重んじた自由な校風となる。クラブ活動は原則として、中等科は週4日。硬式テニス部、陸上競技部、囲碁将棋部は全国大会に出場する実力派。天体観測や化石採集を行う地学部は文化部でもっとも人気がある。