出題校にインタビュー!
白百合学園中学校
2016年06月掲載
白百合学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.食塩は食塩以外の物質がある方がおいしい
インタビュー1/3
いつも使っている食塩を海水から作るには?
相澤先生 問1と問2は身近な素材の「食塩」がテーマの大問の一部です。問2は、単に知識を問うだけでなく、身近な素材を取り上げた問題らしく、「健康に良い」「おいしさ」といった日常生活に絡めた問題です。
いつも使っている食塩が、どうやって作られるのか、いろいろな種類があるけれど、どんな違いがあるのかというところまで知っている子どもは少ないでしょう。実際に食塩がどのような工程で作られるのか、子どもたちは入試問題を通して学ぶことができたと思います。
相澤先生 せっかく身近にあるものなので、この問題をきっかけに、家で使っている食用塩の表示を確認したり、違う種類と味を比べて違いがあるか試してくれたらうれしいですね。
理科教諭/相澤恵利先生
「食塩以外の物質も残す」という内容なら正解
檜枝先生 各問の正答率についてですが、問1はほぼ全員正解でした。これは予想通りです。
問2の正答率は2割程度でしょうか。正解より無答の答案が多かったのは、問題数が多いことが影響したのではないかと推測します。
問2は、海水を加熱しろ過すると、食塩以外の物質をとりのぞくことができること、そうした物質を少々含む方がおいしいことなどがリード文に書かれています。与えられた情報を基に、自分で考えを組み立てる力が試されます。
いろいろな解答があったと思われます。リード文から、「硫酸カルシウムなどを取り除く」前の段階に着目して、「海水を完全に蒸発させる」(模範解答)という答えが考えられます。
あるいは、硫酸カルシウムなどを取り除いた後、「最後まで煮詰めずに水分が少し残っているところでやめる」ところに着目して、この段階から水分をすべて蒸発させる。すると、硫酸カルシウムは除かれるけれど、それ以外のミネラルは残ると考えられます。
子どもは硫酸カルシウムがどんなものか知りません。学校としてはどのような解答を求めていたのでしょうか。
檜枝先生 リード文から読み取れる範囲であれば、正解として許容しました。「ごみを取り除く」工程に触れずに、「海水を完全に蒸発させる」だけでもよく、「純粋な食塩にしてしまわない」という内容であれば正解にしました。
どこに目を向けるかは子どもによって様々です。正解の許容範囲が広いのはありがたいです。
相澤先生 正解した解答は、「煮詰める」「蒸発させる」といった表現で、シンプルにまとめていました。
「加えて」おいしくするのが子どもの発想
檜枝先生 記述のあった中で、誤答で目立ったのは「ミネラルを加える」という解答でした。子どもは、おいしくするのに「何かを加える」という発想をするのだと気づかされました。「何かを足さないとおいしくならない」と考えたのでしょうね。
うまみ調味料の『味の素』のような感覚かもしれませんね。
檜枝先生 海藻はうまみ成分が豊富だと知っているせいか、「ワカメやコンブと一緒に煮詰める」という解答がありました。設問文に「海水からつくるには」とあるので、何かを加えてしまってはこの問題の趣旨から外れます。
「加える」発想をした受験生は、作問者の出題の意図を読み取れなかったのでしょう。
問2は、この問題を含む大問のリード文の内容から少し離れています。先入観や自分の経験に頼らず、与えられた情報に基づいて考えなければなりません。
檜枝先生 「ミネラルを加えた海水を煮詰める」という解答もありました。設問文に、食塩以外のミネラルがある方がおいしくなるとありますが、やはり加えてしまってはいけません。
また、「食塩を除く」と書いた受験生もいました。設問文の「食塩以外の物質」というのを、おそらく「ミネラルを取り出さなければいけない」と読み違えたのでしょう。「食塩以外の物質を含んでいるものがおいしい」と書いてありますから、きちんと読んで情報を読み取り、整理する力も必要です。
白百合学園中学校
持っている知識は理科に限らず活用しよう
ところで、リード文から得られる情報とは別に、持っている知識を使った解答はどのように判断されますか。
檜枝先生 この場合、「リード文から」などの条件はありませんから、もし食塩に関する知識があるならそれを使って構いません。
「海水から食塩を取る」という設定にしたのは、理科という教科の枠にとどまらず、「自然界」という広い視野で考えてもらいたかったからです。理科の入試問題ですが、理科以外の分野とのつながりも感じてほしいと思い作問しました。
このように、視野を広げて考える問題は、他の教科、例えば社会科の知識を使って解いても構いません。解答のアプローチはいろいろあります。持っている知識は理科に限らず何でも活用して解きましょう。
普段から時事問題に関心を持つなど、知識の引き出しをたくさん作っておきましょう。また、引き出しは必要なときに引き出せるように、教科・科目の垣根を越えて知識を関連させてネットワークをつくっておくといいでしょう。
白百合学園中学校
インタビュー1/3