シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

麗澤中学校

2016年05月掲載

麗澤中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.定期試験でも、中学時代から記述問題を出題。書く力が鍛えられる。

インタビュー2/3

中学の授業は高校・大学で必要な力をイメージして行っている

担当している授業を教えてください。

田邊先生 いろいろですが、継続して担当しているのは中2の歴史です。高校では、今年は高1、高2の世界史を担当していますが、昨年は高3の日本史でした。僕は専門が日本史なので、基本的には日本史を担当しています。

大学受験を前に、壁にぶち当たる生徒をたくさん見てきているので、中2には「高校生になると、こういうところで苦労する」という話をよくしています。僕に限らず、中学を担当している教員は、ほとんど高校の授業も持っていますので、高校、大学で必要な力をイメージしながら、中学生に教えています。それは他教科も同じです。6年間で一つのプログラム、という考え方が浸透しています。

 地歴公民科/田邊時久先生

地歴公民科/田邊時久先生

脱線は授業の内容とつなぐ工夫を欠かさない

田邊先生 授業では、教科書から脱線しても、脱線している内容が、最終的に「あ、そうなんだ」とつながるように工夫しています。たとえば新聞に、明日香の雷丘(いかづちのおか)で埴輪の破片が発掘された、などというニュースが出ても、生徒は気に留めません。それが、戦前なら道徳の教科書に載るような、小子部栖軽(ちいさこべのすがる)という人物の伝説がある場所であっても、です。

<雷丘にまつわる伝説>小子部栖軽が天皇と皇后の寝所に誤って入ってしまい、天皇に「雷神を捕らえてこい」と命じられる。栖軽は忠義に厚く、雷神を連れ帰って天皇に献上する(だから雷丘という)。しかし天皇は恐れをなして、落ちていた所へかえすように命じる。やがて小子部栖軽が亡くなり、お墓に入るが、雷神の怒りは収まらず、その墓に落ちた。すると墓に挟まり、動けなくなる。このことにより、天皇は栖軽を讃えて、雷神を2度捕らえた男という墓標を建てた。

これは本当におもしろい話です。栖軽は、孤児をたくさん養った人。昔はその話をよくしていましたが、破片発掘の新聞記事が出てからは、飛鳥時代の学習をするたびに、伝説が載っている「日本霊異記」の原文を見せます。すると生徒は「読めない」と言うので、わかりやすくまとめたものを用意したり、新聞記事を配ったりして、つなぐという工夫をしています。

中2の定期試験で東大の入試問題を出題

田邊先生 授業では、僕自身が感動したものを生徒に伝えるということを大切にしています。

思いは、定期試験にも反映されるのですか。

田邊先生 定期試験は到達度を計るものなので、そういう問題は控えめになりますが、200字程度の論述問題を1問入れたり、短いものでは、字数を決めず、1行くらい書かせる問題を2、3題出したりしています。記述問題では、説明させる、理由を聞くなどが主になります。200字の論述では、3つ4つのポイントを踏まえて書けているかが、採点の基準になります。

生徒さんの反応はいかがですか。

田邊先生 1学期の中間テストでは、「なにこれ!?」となりますが、その後に解き方を説明しますので、段々とできるようになっていきます。一昨年、中2の学年末テストで東大の入試問題をやらせると、6、7割の生徒が、満点の半分くらいは書けていました。授業で学んだことや、自分が持っている知識を咀嚼し、再構成して、表現できるかどうかなので、「実は東大の入試問題だったんだよ」と明かすと、生徒は驚いていました。

新入生歓迎のポスター

新入生歓迎のポスター

言語技術の授業で学ぶ書く技術が一貫生の強み

田邊先生 本校には「言語技術」の授業(中1~高1/一貫生のみ受講)があります。その中で、すべての学習の基礎となるコミュニケーション能力、読解力、記述力、情報処理能力などを高め、論理的な思考力や表現力を育成します。

僕は、この春に、中1から6年間持ち上がった生徒を卒業させましたが、一貫生と、高入生の大きな違いは、書く技術を習得しているかどうかだと思いました。たとえば研修旅行へ行き、作文を書くとなった時に、書くスピードが明らかに違います。大学受験に向けた論述の授業をしても、一貫生はポイントをつかむと、あっという間に文章にします。もっとも顕著なのは英語です。大学入試で4技能が問われるようになりますが、その基礎として中学で「言語技術」をやっているのは大きいと思います。なぜなら、言語技術で修得したことがものごとを考えるベースになるからです。

生徒と教員の距離感も近い

田邊先生 生徒と教員の距離感も、高入生の驚くところです。本校は子弟同学がコンセプト。我々教員も生徒とともに学ぶという姿勢を持っているので、生徒との距離が近いのです。定期試験が近づくと、先生に質問する生徒で廊下やホールのテーブルが埋まります。

やはり生徒には、教師を超えていってもらわなければなりません。教師は一生懸命教えますが、教えることにより、学ぶことも多いです。それに負けずに最後は生徒が教師を超えることを願っています。

私も、中学から高校に移り、初めて高1を見た時に、一貫生と高入生の違いに驚かされました。一貫生は、先生になんでも話すことができる、相談することができる関係を築いているので、高入生にすればはじめはギャップを感じると思いますが、高入生もすぐに打ち解けてくるところが麗澤の風土ですね。

高校生の約1割が学内の寮で暮らしている

田邊先生 もともと全寮制の学校としてスタートしたということも、面倒見のよさや、生徒と教員の距離間につながっていると思います。親と離れて暮らすため、生徒も先生も「人として一緒に学んでいきましょう」ということを大切にしている学校です。今も寮は存在(男子寮は新築したばかり)していて、高校生の1割くらいが生活しています。生徒は全国から来ていますが、通学圏内に自宅がある生徒でも、寮生活をしたいという子が入寮しています。また、保護者が海外にいる生徒もいます。

女子寮はいまだに布団を敷いて、川の字になって寝ているんですよ。「ベッドにしよう」と言っても、生徒が「布団がいい」と言うのです。

(布団の並びは)奥が先輩、手前が後輩、というのが、自然と受け継がれています。部屋長さん、部屋中さん、一番下は部屋っ子さんと呼ばれていて、下級生の具合が悪くなれば、上級生がスポーツドリンクのようなものを差し入れしたり、岡持ちに入れて食堂から食事を運んだりする、家族のような関係が寮の中でできあがっています。まずは先輩が行動して、背中を見せる、“率先垂範”という言葉を散々言われて育ちますので、リーダーシップを磨けると思います。

麗澤中学校の奥にある高校男子寮

麗澤中学校の奥にある高校男子寮

インタビュー2/3

麗澤中学校
麗澤中学校1935(昭和10)年、法学博士の廣池千九郎により、現在の麗澤大学の前身・道徳科学専攻塾が開校。2002(平成14)年に麗澤中学校が新設され、同じキャンパスに大学・高校・中学校・幼稚園がそろう総合学園となった。
創立者が学問的に体系づけたモラロジーに基づく「知徳一体」を教育理念とし、「感謝の心」「思いやりの心」「自立の心」を育てることを教育方針に掲げる。
麗澤教育のシャワーを浴びて巣立った卒業生たちは、様々な領域で活躍の場を広げている。6年間を「自分自身をみつめ、発見する」「興味・関心を深め、進路につなげる」「進路を選択し、道を拓き夢を実現する」の3段階に分け、それぞれリサーチ、実践体験、情報処理、再構築、そして成果をプレゼンテーションする作業を基礎から学ぶ。
とりわけ、2003年から始まった「言語技術教育」は、全ての学問領域で必要となる「聴く・話す・読む・書く」を総合的に鍛える麗澤ならではの教育。中高一貫カリキュラムの1年から4年次を通して、グローバル社会で通用するものの考え方、そして、自らの考えを主張できる発信力を研鑽していく。
「よりよく学ぶためには自然の中で心を癒すことが必要」という創立者の信念に基づき、47万平方メートルの広大な校地は緑豊かで自然がいっぱい。グラウンド3つ、体育館2つ、テニスコート6面、ラグビー場(人工芝)、武道館、寮(高校のみ)、メディアセンターや9Hのゴルフコースなど施設は申し分なし。