シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

麗澤中学校

2016年05月掲載

麗澤中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.社会科は暗記科目ではない。理解することが大切!

インタビュー1/3

入試問題を解いて学べる問題づくりを心がけている

田邊先生 僕自身、「問題を解いていておもしろかったから」という理由で大学への入学を決めたので、入試問題を解くことが勉強になり、さらに「麗澤ではこんな楽しいことを学べるんだよ」というようなエッセンスを入れたい。そう思いながら、例年、入試問題を作っています。

その大学入試はどのような問題だったのですか。

田邊先生 大問1が「○○からわかることを3つ書きなさい」という問題で、解答用紙には枠があるだけ。しかも高校時代に学習しない内容だったので、「この大学は、こういうことが好きな人を欲しがっているんだろうな」と思いました。ですから、麗澤の入試問題と出会った小学生にも「こういうことを勉強している先生がいるんだ」というメッセージが伝わればいいなと思って、出題しています。

地歴公民科/田邊時久先生

地歴公民科/田邊時久先生

“かけがえのない”は、弓道から学んだ言葉

「びた一文」は他校の入試でも目にしますが、「かけがえのない」の語源は知りませんでした。

田邊先生 「かけがえのない」の語源を調べたら、あまり載っていなかったので、いいなと思いました。私は弓道部の顧問ですが、今も弓道部員が使う“かけ”は、手形をとって作ります。人のものだと合わないので、まさに「かけがえのない」ものなのです。

経験から問題が生まれたのですね。

田邊先生 私は学生時代、6年間、剣道部でした。教員になって、弓道部の顧問になり、弓道を始めました。弓を引く技術だけでなく、弓道を勉強していくうちに、こういう言葉にも出会うことができました。

弓道で使用する弽(かけ)

弓道で使用する弽(かけ)

社会科は覚えるのではなく、理解することが大事

田邊先生 解答は「動きの速い動物が増えた」というところがポイントになります。小学生なので表現の差はありますが、一所懸命に考えたことを書いてくれていたという印象があります。動物の大きさについてはよく書けていて、ここまでは勉強しているのだなと思いました。

ヒントが気候の変化だけだと答えられなかったかもしれません。

田邊先生 そうですよね。小学生なので、できるだけヒントを出そうということで、「気温が上昇した」という言葉も入れました。

記述問題では、手がかりをもとに、作問者がどんな答えを求めているのかを考えることが大事。小学生を指導していると、それができない子がいるので難しいです。

田邊先生 いろいろ考えることを、楽しんでもらえるといいと思います。みんな「社会は暗記科目」だと思っています。だから入学後に、そこから抜け出すことに苦労します。「どうすれば覚えられますか」と聞いてくるので、「覚えるよりも、理解することが大切。暗記はやめなさい」と、口が酸っぱくなるまで話します。社会科の学習では、用語を自分の頭の中で咀嚼して、つなげて、時代をイメージすることが重要だと思います。

考えることができる子は社会が好きになっていく

この問題も因果関係を聞いていますよね。

田邊先生 だから、流れをつかもうとする子と、それをしない子とでは大きな差が出ます。「社会科が苦手」と言っている子は暗記が苦手なのであって、「考えてごらん」と言われて考えることができる子は変わってきます。一緒に社会を担当している先生と、「そこをつかませよう」「歴史っておもしろいね、と言わせる授業をしよう」と目標を掲げて取り組んでいて、おかげさまで、「中学受験の時は(暗記が苦手で)社会が苦手科目だったけど、中2の授業を通して、歴史が好きになった」という子や、「社会ができるようになった」という子が出てきています。

 麗澤中学校 教室

麗澤中学校 教室

歴史は流れをイメージできるようになってほしい

「暗記ではなく、流れをつかむことが重要」というポリシーは、大問3の問9にも表れています。ただ単に「応仁の乱はいつ?」と聞くのではなく、「戦国時代の幕開けのきっかけとなった応仁の乱が起きたのはいつ?」と聞いています。しかも選択肢の年代が「鎌倉時代の終わり」「室町時代のはじめ」などなので、全体の流れを把握していなければ答えられません。

田邊先生 「時代を順番に言ってごらん」と言うと、言えない子がいます。時代をバラバラには言えるけど、順番に言うことは難しいのです。幕府も同じです。鎌倉幕府が滅びる理由があって、後醍醐天皇が出てきて、それを足利が倒して、というイメージを頭の中で描いてほしいのです。

社会科の学びは現代とつながっている

社会科の入試問題全体で、心がけていることはありますか。

田邊先生 1つは、バランスよく出題するということです。地理、歴史、公民のバランスはもちろん、各分野の大問もバランスを重要視しています。地理は日本地理と世界地理、歴史も時代、人などが偏らないようにまんべんなく……、というように。最終チェックでは、偏りはないかどうかにもっとも注意を払っています。

自分で解いて、「この学校の先生は、おもしろいことを考えるなぁ」と思ったのは、一昨年の地理の問題です。古い地図と新しい地図を並べて、新しいところに斜線を引き、「震災で、斜線部分だけが液状化した。その理由を答えよ」という問題でした。斜線部分はため池で、地盤が柔らかく、そのため液状化したわけですが、それを地図から読み取れるかどうかを問うたのです。地理だけでなく、歴史でも公民でも、考えさせる問題を出しているのも、特色の1つです。

また、3分野とも、時事的なところからスタートしている問題があります。それは、「社会科の学びは現代とつながっているんだよ」というメッセージ。中でも公民の問題は、タイムリーなものが出題されます。その意図は、現在の社会に目を向けてほしい。それが自分たちとどうつながっているかということを、感じていてほしいから。だから、日頃からアンテナを張って、ニュースを見たり、新聞を読んだりしてほしいです。

バス停からキャンパスに入る通用門

バス停からキャンパスに入る通用門

インタビュー1/3

麗澤中学校
麗澤中学校1935(昭和10)年、法学博士の廣池千九郎により、現在の麗澤大学の前身・道徳科学専攻塾が開校。2002(平成14)年に麗澤中学校が新設され、同じキャンパスに大学・高校・中学校・幼稚園がそろう総合学園となった。
創立者が学問的に体系づけたモラロジーに基づく「知徳一体」を教育理念とし、「感謝の心」「思いやりの心」「自立の心」を育てることを教育方針に掲げる。
麗澤教育のシャワーを浴びて巣立った卒業生たちは、様々な領域で活躍の場を広げている。6年間を「自分自身をみつめ、発見する」「興味・関心を深め、進路につなげる」「進路を選択し、道を拓き夢を実現する」の3段階に分け、それぞれリサーチ、実践体験、情報処理、再構築、そして成果をプレゼンテーションする作業を基礎から学ぶ。
とりわけ、2003年から始まった「言語技術教育」は、全ての学問領域で必要となる「聴く・話す・読む・書く」を総合的に鍛える麗澤ならではの教育。中高一貫カリキュラムの1年から4年次を通して、グローバル社会で通用するものの考え方、そして、自らの考えを主張できる発信力を研鑽していく。
「よりよく学ぶためには自然の中で心を癒すことが必要」という創立者の信念に基づき、47万平方メートルの広大な校地は緑豊かで自然がいっぱい。グラウンド3つ、体育館2つ、テニスコート6面、ラグビー場(人工芝)、武道館、寮(高校のみ)、メディアセンターや9Hのゴルフコースなど施設は申し分なし。