出題校にインタビュー!
東京都市大学付属中学校
2016年02月掲載
東京都市大学付属中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.漢字は、意味の部分である部首を勉強し、音と組み合わせて学ぼう。
インタビュー1/3
漢字の学び方を伝えるために出題
出題意図からお話いただけますか。
田中先生 本校には、国語が苦手な生徒が少なくありません。入試の平均点を見ると、国語だけが極端に悪いというわけではなく、できる受験生は7〜8割、取っています。ただ、合計点で選抜していますので、国語のマイナス分を他教科でカバーできていれば合格できます。そのため、入学後の成績では、国語を苦手な教科と感じている生徒が多いように感じます。
とりわけ漢字に対して強い抵抗を感じます。入試をクリアするために、それなりに勉強はしてきていますが、むりやり覚えているような印象があります。我々としては、意味の部分の部首と、音の組み合わせを考えるという学び方をしてほしい。せめて部首の意味を考えてもらえれば、勉強もしやすいのではないかと考えて、ここ数年、手を替え、品を替え、部首の問題を出しています。この問題もその一つで、説明会でも「部首を勉強し、組み合わせで学んでほしい」というメッセージを伝えています。
国語科/田中渉先生
楽しみながら勉強してほしかった
田中先生 漢検でいうと、5級が小学校の範囲なので、入学してから5級を受けさせると、合格率はほぼ100%ですが、4級、3級と進むにつれて、段々下がってしまう傾向が見られます。文字なので、読めなくていい、勉強しなくていいということにはなりません。避けていくと、高校の漢文で、大きな差がつきます。センター試験では、漢文を得点源にしてほしいと思っているのですが、「漢字を見るのも嫌だ」と言う生徒がいます。ですから、入ってくる時に、パズル的な問題で楽しみながら勉強してほしいという思いがあり、このような問題を出題しました。
予想通りの結果を得られた
田中先生 間違えた字を見ると、あり得ないような字を書いてくるケースが多いです。たぶんこんな形じゃない?と、根拠がない感じなので、勉強の仕方として、1000文字あれば、1000の形を覚えるということを、小学校時代にやってきたのではないかと想像しています。
てこずった問題になったということでしょうか。
田中先生 そうですね。この問題は、部首のほうから考えたほうが早いと思います。8つの選択肢が先にわかれば、組み合わせやすいので。一番できていたのはウで、正答率は96%でした。さんずいの由来を知っていたのだと思います。逆にできなかったのはエ(礻/しめすへん)とオ(彳/ぎょうにんべん)で、エの正答率は38%、オは33%でした。アとイは比較的できていて、アの正答率は73%、イは79%でした。
結果をどうとらえていますか。
田中先生 問題をひねりすぎてできない年もありますので、適度にできるものと、中くらいと、難しいものを組み合わせて出すような工夫をしており、今回は予想通りの結果を得られたと思います。
東京都市大学付属中学校
経験の中で、部首の由来を習得してほしい
田中先生 本校は、小学校の学習指導要領を守るほうだと思いますので、国語科でも、小学校で習っていない漢字にはルビをつけています。「部首の由来は習わないよ」という人もいるかもしれませんが、下村式でしたか、学年別の漢字の本などにも由来は出ていますし、習っていなくても、小学校で漢字を習い、共通の部首が出てきたら「なぜだろう」と興味をもってほしいんですよね。漢和辞典を見れば、部首の成り立ちは書いてありますから、習った、習わないではなく、経験の中で、習得していってもらいたいですね。例えばしめすへんは書き換えられて新字体になっていますが、なぜか、神様に関係しているなとか。そういうような気づきがあってもいいのでは?という気持ちもあって出題しています。
本をたくさん読んでほしい
小学生の学習方法として、アドバイスがあればお願いします。
田中先生 皆さん、いろいろなことをおっしゃいますが、私は、本をたくさん読んできてほしいと思います。今年は高2の担任で、大学受験に向けてどうするか、という話になると、「国語の成績が伸びない。どうすればいいか」と言ってきます。そういう生徒に、「小中学校の間に、どのくらい本を読んで来た?」と聞くと、「ほぼゼロ」という答えが返ってくることが多いのです。「テクニックを教えてほしい」と言う生徒もいます。そう思わせてしまっている我々にも責任があるかもしれませんが、アプリをインストールするように、解き方を覚えれば、自動的に解けるというものではないですよね。設問には「本文を読ませたい」という意図があると思います。まず読むことができなければ、その先には進めないのです。
東京都市大学付属中学校 図書室
活字を読むこと、経験することが感覚を育てる
田中先生 小説が題材の授業では、文字だけでなく、行間も読みながら、「こういう流れか」「主人公の気持ちってこうだよね」と共有する部分と、「俺は違うな」などと思う部分があると思います。みんなで意見を出し合うと、本を読んでいない生徒は、いろいろなとらえ方があることに気づきません。1つの答えしかないと思っているからです。経験が乏しいと「普通はこうなんじゃない」という話ができないことがあります。単語にしても、辞書を引けば意味は合っていますが、文脈によっては使わない言葉がありますよね。それがわからず、試験を返した時に、「なぜ、間違っているのですか。点をもらえるのでは?」と、聞いてくる生徒がいます。「その言葉は使わないよ」と言っても通じないのです。文章をたくさん読んでいれば、その言い方はおかしいということに気づくと思います。そういう感覚を持たないまま育ってしまうので、本を読む習慣をつけることが大切だと思います。
詩の出題は、国語科の伝統
入試問題全体で、意識していることはありますか。
田中先生 入試なので、ある程度、差がつくよう、やや難しい問題を出しています。評論には、大学入試で問われてもおかしくないような問題もありますが、奇抜な問題は出していません。大人が読む新書などを取り上げるということです。3年前から大問を1つ増やして、小説を加えました。50分ですべて解くのは大変なので、普段から文章を読み慣れている受験生のほうが有利になると思います。
選択肢が長めですよね。
田中先生 長くなる傾向がありますね。短いと、正解と不正解の差をつけるのが難しくなりますから。
詩も出題されていますが。
田中先生 詩の出題は、本校の伝統です。詩は行間が広いので、間をどう埋めていくかが問題になると思います。いろいろな読み方ができるものを答えにしなければいけないので題材選びは大変です。意図としては、詩だけでなく、設問も見て、設問を作っている人はどんなふうに読んでいるかを共有してほしいんですよね。自分は違っても、「この人はこういうふうに読んだのね」と思ってほしいのです。
東京都市大学付属中学校
文学の扱い方が変わった
田中先生 我々が中学生だった頃と、今とでは、文学の扱い方が変わってきていると思います。以前は作者の主張を前提に授業をしていましたが、最近は、書き手の手から離れたものは、受け手に委ねられるという考え方ですので、中高ともに同じような趣旨で授業を行っています。読み方は1つとは限りません。いくつかある中で、今回はこういう読み方をしているんだからね、ということで授業を進めています。ですから、自分の読み方から転換できないと、作問者との意識のズレがわからないということになっていきます。
入試問題で、「本文から読み取れる考えとして」という表記をされているのも、「読んだ側がどう考えるのか」ということを示しているのですね。
田中先生 そうです。どのような解釈をするか。そこは国語科内でも議論になり、意見が割れることもありますが、こっちに絞ろうとなった時に、そういう言い方をしています。
インタビュー1/3