出題校にインタビュー!
晃華学園中学校
2015年12月掲載
晃華学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.天体写真で会話が弾む晃華流アクティブ・ラーニング
インタビュー2/3
天体現象は教員が撮影した写真で紹介
砂口先生 他教科からの視点でこの問題がおもしろいと思ったのは、干支が時刻や方角に用いられて生活に密着していることです。私は国語を教えていますが、天体観測と古典の関連性に気づきました。月の満ち欠けを見れば日付がわかりますから、『十六夜日記』など古典をより興味深く読み解くことができそうです。
月は見え方でいろいろな呼び名があり、「立ち待ち月(陰暦17日の月)」も古典でよく出てきます。林先生は先日、立ち待ち月を撮影されていましたね。
林先生 本校の周りは森が多く、夜空に星が浮き上がるように見えて天体観測に適しています。そのときはちょうどスカイツリーの方角から月が昇る様子を撮影したのですが、ピントの調節をしたりセッティングをしていると座って待機する余裕もなく月が出てきて、まさに立ち待ち月でした。
撮影した写真はできるだけ図書情報センターや理科室の廊下に展示して、それを見ながら生徒がコミュニケーションできるようにしています。地学の授業がない生徒も、「私が見た月もこんなふうだった」など、それぞれが違う時刻、違う場所でどのように見えたのか会話しています。天体写真を見て生徒同士が会話できるのが、本校らしいアクティブ・ラーニングです。
また、撮影した写真のうち、きれいなもの、かわいらしいものはミニカードにして配布しています。スーパームーンの写真は、「私が見たのはもっと黄色かった」「もっと大きかったよ」という生徒の会話を聞いて、連続写真的に合成してみました。それを“お守り”にしている生徒がいるのは女子校らしいところです。
広報部長/砂口優子先生
成果の影にたくさんの失敗がある
林先生 最近は天文同好会の生徒も撮影しています。機材の性能がいいのでそこそこの写真は撮れますが、それを超えるのはなかなか難しい。一段レベルアップするには、たくさん撮ってたくさん失敗することです。私も300〜500枚撮影して選りすぐりの1枚を展示しています。生徒には「いいと思えるのは、何百枚撮って1枚だよ」と言っています。
これは実験にも通じます。何百回実験をして得られたデータの1つが、何らかの成果につながるのです。
毛利先生 実験は失敗してもいい。大切なのは、失敗の原因を振り返ることです。レポートでもその点をきちんと書くように指導しています。レポートは、このように表現するともっとわかりやすくなるなど、細かいところまでチェックして返しています。
実験結果をグラフにしてみたら思うようなグラフにならなくて、「もう1度実験をやらせてください」と申し出る生徒もいます。可能であれば昼休みに実験することがあります。
林先生 授業では「前回の失敗の反省を活かそう」と声がけすると、生徒は考えて取り組みますし、格段にうまくなっていきます。これも本校のアクティブ・ラーニングだと思います。
晃華学園中学校 スーパームーン
クラスメイトが格好の手本
林先生 理科のスケッチは美術のデッサンとは違って、「見たまま、ありのままを線だけでかく」ことを徹底しています。「大きくかきなさい」と言っても最初は大きくかけません。そこで、タブレット端末で撮影した生徒のスケッチをいくつか見せて、「小さくかいてはダメなんだ」と生徒自身に気づかせます。スケッチが苦手な生徒も、「あのようにかけばいいんだ」とわかるので、ぐんぐん上達します。私が「こうしなさい」と指導することはほとんどなく、生徒はクラスメイトから学んでいます。
晃華学園中学校 生徒のスケッチ
準備から後片付けまで自分でできて「一人前」
林先生 実験は目新しいことをやっているわけではありませんが、当たり前のことを丁寧に行うことで、実験の準備や後片付けも手際よくできるようになります。準備から後片付けまできちんとできるようになって、はじめて「自分で実験ができる」ということを、中1の1学期から言い続けます。
生徒を見ていると、植物の茎のプレパラートを作るのに、カッターで茎を上から押しつぶしています。手前に引けば切れるのですが、おそらく家庭で包丁を持って手伝いをしていないのでしょう。紙を折る、ハサミで切るのに手こずるのは、生活の中であまりやっていないからでしょう。こちらが準備しておけばスムーズに進むことはたくさんありますが、生活の中での経験が足りない分、学校でしっかりやらせるようにしています。
毛利先生 私も中1を担当していますが、器具の洗い方やぞうきんの絞り方、マッチの擦り方も教えています。ガスバーナーの使い方は1人ずつテストします。受験勉強で知識はありますが、実際に使おうとすると苦戦します。生徒を見ていると、火加減、力加減といった加減がわからないのかなと感じます。
林先生 それは受験勉強では培われないところですよね。知識はあっても器具の扱い方が乱雑なのは、普段の生活であまり気をつけていないからなのでしょう。
毛利先生 理由を説明すれば納得して次から気をつけてくれます。準備から後片付けまで、かなり口うるさく指導していますが、細かなところまで徹底するところに実験を数多く行う意味があると思っています。
目的意識を持って実験する姿勢を養う
林先生 中2の1学期の半分は実験と顕微鏡を使った観察・スケッチでした。上達したところで、後片付けまで自分で行う条件付きで、素材として生徒に好きなものを持ってきてもらいました。それができるのは生徒と信頼関係が築けているからです。食品がいいよとアドバイスすると、お弁当のご飯粒やプチトマト、さくらんぼなどの果物、中には納豆を持ってきた生徒もいました。
生徒が持ってきた材料を拡大して見ると、均質であまり特徴がなく、観察してつまらないものが多いのです。自分でやってみることで、生徒は先生たちが材料選びを工夫していることがわかります。顕微鏡で見れば何でもおもしろいとは限らない、観察に適した材料があることも伝えたかったので、生徒は感じてくれたのではないかと思います。
このときは前もって必要な器具や薬品など計画書を提出してもらいました。これもアクティブ・ラーニングとして大切なことだと思います。目的を持って取り組むことで1学期のまとめになります。
受け身にならずに自分で考える主体的な姿勢が身につくでしょうね。小学生はなぜその実験を行うのか、あまり考えずに作業している子供が多いので、目的意識を持って実験を行うというのはとても重要だと思います。
晃華学園中学校 実験の風景
実験の段取りは料理に通じる
林先生 実験では段取りよく行うことも大切です。段取り力は生活のいろいろな場面で活かせるので、社会人になって大いに役立ちます。中でも料理は段取り力が鍛えられます。小学生のうちからお手伝いで料理をさせてほしいですね。
実験の手順はテキストを読むだけでは身につきません。なぜその順番で行うのかを理解して作業すると、次に何をするかも頭に置きながら作業できるようになります。実験は常にその先のことを頭に入れながら作業します。まさに料理と一緒です。
毛利先生 作業の要領がよくなると、先を考えながらできるようになります。高校生には実験の待ち時間に次に何をすればいいか考えながら行うように指示しています。
晃華学園中学校 理科教育
インタビュー2/3