出題校にインタビュー!
成城学園中学校
2014年08月掲載
成城学園中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.どうしてこの問題?問題をとおして見たい受験生の姿勢はどのようなもの?
インタビュー1/3
この問題をとおして、受験生のどのような力を見ようと思われたのですか?
冨田清孝先生 正確に計算できる力や粘り強く解く力など、よく“○○する力”ということが言われますが、あまりそういったことは意識していませんでした。それよりももっとシンプルに目の前にあるこの問題を受験生が全力で解くその姿が見たかっただけです。
作問に際して、意識されたことはどのようなことでしょうか。
冨田先生 本校の算数の入試問題全般については、基礎・基本がメインにあると思いますが、それに加えて、その場で考えれば解答できるものをところどころに散りばめるようにしているといったところでしょうか。
この三角形の問題も、求める際の計算式としてはすごくシンプルだと思いますが、その式にたどり着くまでに、きっといろいろなことを考えていると思うんですね。引き算をして1を足す、あるいは足し算をして1を引くにたどり着くまでに、ある辺を固定して残りの2辺を回転させたり、三角形をどんどんつぶしていくとか・・・。そういう試行錯誤も、ある程度数や図形に対する感覚が身についていないとできないのではないかと考えています。
成城学園中学校
この問題は、「1つの辺の長さはほかの2辺の長さの和よりも短い」という、すべての三角形に共通する特徴を知らなければ解けません。その特徴を意識していなければ、この問題にどう取り組んだらいいかを理解できない可能性もあるのではと思いました。
冨田先生 仰る通りだと思います。子どもたちがこういう問題を目の前にして、どういう思考をするのだろうと思い、おもしろいかなと思って作ってみたんです。たいていの問題は目の前に三角形があるところから始まると思います。それに対しこの問題は、三角形の線分をいろいろ動かしてみて、「こうすれば三角形ができる」、「こうするとできない」、ではできるとできないの違いは何か、その境界は何か、それを辺の長さで捉えなければならないところがおもしろいかな、と思いまして。
「1つの辺がほかの2辺の和よりも長いと三角形はできない」ということをわかっている子どもたちはけっこういると思うのですが、その場合、「もっとも長い辺」というのは意識することはできても、「もっとも短い辺」のほうは、ちょっと注意しないと意識がいかないのではないかと思いました。ですから、はじめに長いほうから聞いているのは、親切だなと。
冨田先生 あ、そうですか。個人的にはそこは意識していなかったです(笑)。
受験生がこういう意識をもちにくいということは、けっこう見過ごされているように思います。どちらかというと、三角形はどうすれば描けるとか、合同条件などには敏感かもしれませんが、それは、そこに三角形があれば、もうすでに満たしている条件ですからね。そこをあえて見過ごさずに着目している点がおもしろいなと。
冨田先生 先ほどもお伝えしたように問題自体はとてもシンプルだと思います。複雑にしようと思って条件をたくさん入れていきその結果、長文になっている問題を解くというような力もきっと大事なのでしょうが、個人的にはあまり好きではなくて、難しい用語が入っているわけでもなく、問題文も短いなかで、何が問われているのかを理解するのは容易だけれど、どう考えようかと思案してしまう、そんな問題のほうがおもしろいかなと思ったんです。
境界となるところを考えて、足し算・引き算をして……と考えがつながっていくと思うのですが、三角形をどんどんつぶしていって、最終的には言葉は変かもしれませんが、完全につぶれた三角形にすると足し算・引き算ができる。というかつぶさないと、足し算引き算は出来ない。三角形という形にこだわったままだと、いつまでたっても足し算・引き算ができない。その境界を一歩超えるという発想が、すごく数学っぽくておもしろいかなと。
例えが悪いかもしれませんが、ベクトルも「大きさと向きをもつ量をベクトルという」なんて言っておきながら「零ベクトルの向きは考えない」としたり、面積の最大最小問題で、面積が0になるところを考えたりと、いろいろあると思うんですね。その境界となるところは、わりとセンスが問われると思っています。まさに、つぶれた三角形をイメージできるかどうかがカギになったのではないかと思っています。
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