シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

普連土学園中学校

2014年07月掲載

普連土学園中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.ホームルーム礼拝は、同世代の率直な考えが聞ける貴重な時間

インタビュー3/3

自分の話を『聞いてくれる』安心感がある

鈴木先生 本校のホームルーム礼拝では週1回2人ずつ、部活動や読書経験、新聞やテレビで話題になったことなど自分が考えたことや感じたことを話します。話す内容は事前に書かせて(800字程度)、クラス担任がチェックします。低学年は言葉遣いなどを直しますが、高校生になると直すことはほとんどありません。

このほかに金曜日の全校礼拝で、委員長など生徒自治会の代表者(中3・高2)が、全校生徒約800人の前で、約20分間話します。

大井先生 自身の体験から級友たちに何を伝えるか、そのメッセージは学年が上がるにつれて明確になります。また高3になると、本校で学んだことなど学園生活を振り返る話が増えます。

鈴木先生 中には、そんなことまで言っていいのかと思うような私的なことを告白する生徒が時折いますね。

大井先生 家族のことなど、普通は聞いても話さないようなことを語る生徒がいるということは、それだけ自分のことを受け入れてくれると思えるコミュニティーが形成されているのだと思います。

鈴木先生 きちんと聞こうという姿勢が浸透しています。相手の話を聞く、受け入れる姿勢は大事にしたいですね。

普連土学園中学校 先生

普連土学園中学校 先生

生徒の告白に人間としての成長を感じることも

鈴木先生 かつてある生徒が、親との関係について、「今すぐには乗り越えられないけれど、大人になったら乗り越えたい」と前向きに語ってくれました。自分のことをみんなに話せるようになったことや、直面した問題を避けるのではなく、それと向き合うようになったところに、その生徒の成長を感じました。

大井先生 納得できないことも理解しようと歩み寄る、受け入れるように努力する、人間的な成長を感じられるとうれしいですね。

大井先生 6年間でみると、他者の話を聞く機会は実にたくさんありますね。

鈴木先生 生徒の礼拝は、同世代の仲間がどんなことを考えているかを知るよい機会でもあります。同世代の意見から多くの示唆を受けていると思います。卒業生に学園生活で印象に残ったことを聞くと、多くが礼拝を挙げます。礼拝の話は“つくりもの”ではありません。その生徒の等身大の思いを率直に語るので、受け取る側への影響も大きいのでしょう。

小論文は第三者を意識して書く

谷田貝先生 ただ小論文の場合は、「聞いてくれるコミュニティー」が裏目にでているかもしれません。わかってくれる、受け入れてくれることが当たり前になっているので、小論文もそれを前提にしてしまい、正確に書くことを怠る傾向があります。自分を知っている相手であれば言葉足らずでも通じるかもしれませんが、大学入試の小論文はそうはいきません。

それは現代文の定期試験の答案にも当てはまります。生徒から「正解と同じことを書いているのに、どうして不正解なのですか?」と聞かれることがありますが、それは主語がないなど第三者にきちんと伝わらない文章だからです。

大井先生 他者をどれだけ意識できるか、つまり論理的に伝えられるかどうかということになります。

普連土学園中学校

普連土学園中学校

中学からの小論文対策として、論文科が試験的に着手

大井先生 高2・高3では小論文の選択授業がありますが、中学でも「書く」ことに特化して鍛えることができないかと思案しています。そこで、中1の国語の時間内に、論文科がトレーニング帳を使って論理的思考力を身につける取り組みを試験的に始めました。

「論文科」を設けたのは、文章表現力の向上や論理的思考力の養成はもちろんですが、主体的に考える姿勢を身につけるねらいがあります。主体的に考えることができれば、大学の志望動機の小論文でも書くべきことが見えてくると思います。

インタビュー3/3

普連土学園中学校
普連土学園中学校1887(明治20)年、キリスト教フレンド派(クエーカー)に属する米国フィラデルフィアの婦人伝道会により創設。当時米国留学中の新渡戸稲造の助言によるもので、「普連土」の漢字は「普(あまね)く世界の土地に連なる」という意味を込め、津田梅子の父・津田仙によりあてられた。
生徒一人ひとりにある「内なる光」を導き出し、育てることを教育目標とする。毎朝20分の全校礼拝や週に1回の「沈黙の礼拝」は、自らの“内なる光”に気づく機会でもある。また、フレンド派の創始者ジョージ・フォックスの言葉「Let Your Lives Speak」をモットーに、創立当初から少人数制主義を守り、1学年3クラスの規模とし、生徒の特性と個性を理解した教育を実践。全員参加の自治会活動を行うなど、広い意味での奉仕の精神と国際性の涵養にも力を入れている。伝統ある「小さな名門校」でファンも多い。
学園内に木々や草花が植えられ、都心とは思えないほど静か。赤い屋根、広いベランダが人気の校舎はモダンだが、机と椅子と床は木製で、自然のぬくもりを大切にしている。視聴覚設備を完備した音楽教室、蔵書3万冊の図書館、講堂など、施設は十分。
基礎をていねいに身につける面倒見の良いカリキュラムが特徴。英語は中1から週6時間。うち2時間の英会話はクラスを3分割し、外国人教師による指導が行われる。中3~高3の英語、高1~高3の数学、高2の化学、高3の古文では習熟度別授業を実施。中3英・数・国の補習が夏休みにあるほか、高校では大学入試対策を中心とした補習が放課後や長期休暇中に行われる。中3の夏休みには興味ある職業について内容を調べ、在校生の保護者の職場を実際に取材してレポートを作成する。高2から選択授業を豊富に取り入れ、高3では演習が増え、40%近い理系進学をはじめ幅広い進路に対応。大学合格実績では堅実な成績を収めている。
生徒同士の交流は家庭的な雰囲気であり、学校生活、クラブ活動においても温かな空気が流れている。クリスマス礼拝、収穫感謝礼拝など宗教行事のほか、ネイティブスピーカーの先生や留学生と英語で対話をしながら昼食をとる週1回のイングリッシュ・ランチ、白樺湖でのイングリッシュ・キャンプなど英語を楽しく学べる行事が多い。高1・高2の希望者が参加するジョージ・フォックス・ツアーはフレンド派の原点をたどるイギリス研修旅行。学校にはフレンド派に属する世界の識者や有名人が毎年のように訪れ、生徒たちと語り合う機会も多い。生徒会はじめ14の委員会があり、生徒はいずれかに全員参加。クラブは中高合わせて文化系が12、体育系が9ある。