出題校にインタビュー!
普連土学園中学校
2014年07月掲載
普連土学園中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.言葉の意味を調べて語彙を豊かにしよう
インタビュー1/3
ことわざを状況に合わせて使えるか
鈴木先生 以前から、ことわざや四字熟語が現代語の文章の中で適切に使われなくなっていることが気になっていました。私がことわざを使って表現すると、生徒から「先生はよくことわざを使いますね」と言われるほどです。生徒にとって、ことわざは知識にとどまり日常では使わなくなっています。そこで、ことわざを会話の中できちんと使えるか試したいと思って提案しました。
谷田貝先生 ことわざを文脈の中でとらえてほしいと思い、ことわざを使った日常会話をいろいろ考えました。ただ作ってみると、「それって『棚からぼた餅』だよね」という状況説明で終わってしまうことが多く、なかなか文中に入れにくい。それでも受験生が想像できそうな状況を想定して原案をアレンジしました。
知識として知っていても使わなければたちまち「死語」になります。ことわざは意味を覚えるだけでなく、ぜひ日常の中で使ってみてほしいですね。
鈴木先生 以前、生徒にことわざを使って短文を作らせたことがありますが、パーフェクトな文章はほとんどありませんでした。日本語としておかしなところがあったり、辞書の例文のようでオリジナリティーに欠ける文章が目立ちました。自分らしい表現ができていないということは、それだけことわざを日常的に使わなくなったということなのでしょう。
普連土学園中学校 先生
『ぼた餅』が何か知らないので、幸運な状況がわかりにくい
鈴木先生 ことわざの中に“古い言葉”があると、ことわざの状況を現代の生活にあてはめるのが難しくなります。「棚からぼた餅」と言っても、今の子どもは「ぼた餅」を知りません。「ぼた餅=おいしいもの」とわかれば、ことわざの状況が「思いがけない幸運が訪れること」だと納得できると思います。解釈だけを覚えたのでは、なかなか使えるようにはならないでしょう。
ぼた餅を知らないというのは、お彼岸におはぎを食べる習慣がなくなっているのでしょう。文化が廃れてしまうとそれにまつわる言葉も消えてしまいます。逆に、言葉をきっかけにその文化を知るように、国語がその役割を担っていると感じます。ことわざは、おもしろい表現や言い得て妙な表現がたくさんあるので、ことわざを言葉の財産として受け継いでいきたいですね。
状況がある程度理解できれば正解を選べる
大井先生 この問題の正答率は、合格者が87.4%、不合格者でも76.2%でした。全問正解者も結構いました。選択問題ですし、出来具合としては予想通りでした。極端に誤答が多かった問題も特にありませんでした。
谷田貝先生 選択肢の文章を読んで、状況から類推して正解を選ぶこともできたのではないでしょうか。会話の中でことわざを使ったことがなくても、問題を解きながら「こういう使い方をするのか」とわかってくれればいいと思います。
普連土学園中学校
わからないことをそのままにしないで調べよう
谷田貝先生 生徒と話していると語彙が圧倒的に少ないと感じます。授業で難しい言葉を使ったつもりがなく普通に話していると、生徒が言葉を知らなくて通じないことが多々あります。
大井先生 漢字のテキストに意味が載るようになり、本校でもそうした教材を選んでいますが、漢字は書けるけれど意味を知らない、覚えない生徒が多いですね。
谷田貝先生 電子辞書を持っていても調べない。「わからない」ことが気にならない、平気な生徒が多いと感じます。
鈴木先生 わからないことが気になって自分で辞書を引いて調べるような、知的好奇心が旺盛な生徒は、学年が上がるにつれて力を伸ばしているように思います。「まあ、いいか」で流さず、食い下がる粘り強さがあるので、こちらが示唆を与えれば自分で学び進むことができます。そうした生徒は、大学進学にとどまらず将来を見据えた進路選択をしているし、大学卒業後も目指したところに向かっている印象があります。
語彙定着は“急がば回れ”で意味調べせよ
鈴木先生 一昔前なら、「意味調べをしなさい」などと言わなくても生徒は自発的に調べていました。10年ほど前、英語の教員が高校生に予習すべき英単語リストを配布しているのを見て、そこまでしなければならないのかと愕然としました。
ところが、今では私も高校生に意味調べのプリントを提出させています。さすがにリストまでは作っていませんが、調べる量にかなりの“格差”があります。意味調べのような地道な作業をコツコツできる生徒は、授業でのこちらの投げかけにも即座に反応します。
自分から意味をつかもうとする力、能動的に取り組む姿勢を早い段階から身につけていると、後々残るものが多い。覚えたことの多くは忘れてしまいますが、それでも主体的に取り組んだものは残りやすいと思います。
大井先生 調べる手間が面倒だと思うかもしれませんが、実はそれが知識を定着させる近道なのです。
普連土学園中学校
言葉の意味を正確にとらえると、より深い文章読解ができる
谷田貝先生 言葉は似ていてもどこか違いがあるものです。微妙な差異を気にしないで、ざっくり一括りにまとめてしまう傾向があるのは気になります。
鈴木先生 意味が複数ある言葉もあるので、違いがわかるためにも辞書を引いてもらいたいです。高校の授業で、文中に「懐かしい」という言葉が出てきました。辞書を引くと「昔のことが思い出されて心ひかれる」というよく知られた意味だけでなく、「慕わしい」という親近感を表す意味が出てきます。その文中では、「昔を思い出す」よりも「親しく思う」という意味がしっくり来ます。そのことに生徒も気づいて「そうか!」と納得してくれました。その気づきを体験した生徒は、別の意味がないか気をつけるようになります。
言葉の意味を丁寧に調べて作者がどの意味で使いたかったのかをつかむことができれば、より深く作品の世界を読み解くことができます。
インタビュー1/3