出題校にインタビュー!
鎌倉女学院中学校
2014年04月掲載
鎌倉女学院中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.考え抜いた問題ばかり。できそうな問題から効率よく、確実に解いてほしい。
インタビュー1/3
2本の長方形の紙を重ねるところから発想した
出題意図からお話いただけますか。
敦賀谷先生 図形の問題では多面的なものの見方を問いたいと思っています。この問題では、重なっている部分がひし形であるということに気づくかどうかを聞きたいと思って出題しました。
どういうところで、この問題を思いついたのですか。
敦賀谷先生 図形の問題を作る時は、○を書いたり□を書いたり…。永遠とペンを動かしていまして、この問題は、長方形の紙を結んだ時に正五角形ができますよね。
割り箸が入っている紙などを折るとできますね。
敦賀谷先生 そうです。そんなところから、まずは2本の長方形の紙を重ねて、そこから3本にしてみました。
重なる部分の面積ではなく、なぜ、周りの長さを求めることにしたのですか。
敦賀谷先生 ひし形=4辺の長さが同じなので、長さに注目させたいと考えました。
受験生の出来はいかがでしたか。
山崎先生 あまりよくなかったです。重なっている部分の長さは出したけれども、最後の最後で、全体から引かなければいけないところを忘れていて、56cmと答えている解答が目立ちました。52cmと答えられたのは2割を超える程度でした。
蓬田先生 この問題ができた受験生は、全体的によくできたのではないかと思います。
数学科/敦賀谷 吉輝先生
出題分野のバランスは心がけていることの一つ
毎年、速さ、文章題、図形と、各分野からバランスよく出題されている印象がありますが、そこも意識されているのでしょうか。
蓬田先生 努力はしますけれども、年によっては多少偏りが出てしまいます。各出版社に掲載されている出題傾向の分析を参考に、確認をしながら構成しています。
女子校でも立体図形の問題が出されるようになるなど、新しい傾向の問題も出て来ていますが、その点はどうお考えですか。
増村先生 本校でも過去に立体図形の問題を出したことがありますが、各所から「女子校で立体は難しいのではないか」というご指摘をいただいたので、立体図形の問題を出す時には難しくなりすぎないように心がけています。ただ、先ほども申したとおり、多面的に物事をとらえる力などを見たい場合には立体図形の問題を出す場合もあります。
作問は数名の担当者で作り、取捨選択する
入試問題はどのように作っていますか。
蓬田先生 作問は3人くらいでやります。それぞれが、最初の計算問題を除いて、2番から4、5番までの大問をトータルで作って、持ち寄り、その中で取捨選択していくことが多いですね。
山崎先生 問題を持ち寄ると、分野が重なることがありますので、チェックして、「この分野の問題がないから考えよう」などと調整をしていきます。
蓬田先生 傾向として、図形、立体、速さなどの分野は男性教員のほうが多めに作ってきますね。
増村先生 やはりそれぞれに好きな分野がありますので、混ぜるとある程度バランスが保たれるという状況です。
数学科に先生は何名いらっしゃるのですか。
蓬田先生 8名で、男女4名ずつです。
数学科/蓬田 好雄先生
この問題に手をつけられなかった受験生もいた
難易度についても、毎年、同じような傾向ですか。
蓬田先生 そうなるように努力しています。
増村先生 前年度が難しかったということで、今年度は押さえるよう心がけました。最初にこの問題を見た時は、「面積を求める問題じゃないんだ。難しそうだな」と思いましたが、経験の浅い人が作る問題は発想がおもしろいので、このまま出してみようということになりました。
蓬田先生 どこに配置するかは検討しました。出題する側としては、全部の問題を解いてほしい。でも、入試なので、できない問題は飛ばしてもいいわけですから、そういう意味で最後にもってきました。
そうすると、手をつけていない受験生もいたということでしょうか。
山崎先生 わりといたと思います。
増村先生 私は入試広報をしているので、説明会などに出るのですが、「算数が苦手」とおっしゃる保護者の方が多くて、「どうしたら点数を取れますか」と聞かれます。その時に必ず言うのは「できる問題から解いてください」ということなんですね。問題数が多いですし、時間は限られていますので、「一つの問題に時間をかけすぎないように…」と言っています。
試験監督をしていて気づいたのは、大問の4番、5番の(1)をまず解いておくという受験生が多いですね。まじめに順番通りにやっている受験生は、最後の問題までいかないケースが多いように思います。ですから、この問題についても、割合はわかりませんが、飛ばした子もいると思います。
文章やグラフなどから情報を読み取る力を問いたい
入試ではどんな力を求めて出題されているのでしょうか。
山崎先生 多面的に物事をとらえる力もそうだと思いますし、情報を読み取る力というのも必要かと思います。算数だと、計算ができればいいなどと思われがちですが、問題文を読んで、その意図をしっかり理解できる力というのも、今後中学に入ってからも必要になりますので、そういう力を問いたいとは心がけています。
問題文をしっかり読み取ることができないと解けないような問題を作られているということでしょうか。
山崎先生 グラフなどの問題もそのような意図を含んでいます。グラフから情報を読み取り、状況を判断できる力を見たいと思っています。
増村先生 □1番の計算でも、分配法則などは入れるようにしています。□2番、□3番の1行問題でも、最初に問うべき□を入れるようにしています。一瞬「あれっ?」と思うような問題も、受験生が練習してきている、標準的なよくある問題なんだよということに気づいてもらえるように、わざと□を前のほうに持っていき、その後に解くヒントになるものを配置するようにしています。
鎌倉女学院中学校 先生
難問・奇問というのは出さないよう心がけている
今年の入試を振り返ると、全体的にひねった問題が少なく、スタンダードで、受験生の頑張りが報われる問題が多く出題される傾向が見られました。
増村先生 本校でも、なるべく難問・奇問というのは出さないようにしようとしていまして、学校の考え方もそれに近いと思います。ただ、どうしても合否を決めなければならないので、多少難しめの問題が入ったり、量が多めになったりはします。
山崎先生 作問をしているとどんどん凝ってしまい、つい文章が長くなったり、難しくなったりするので、時々原点に戻らないといけません。
増村先生 実際に今回取り上げてもらった問題も難しかったので、求めるところを間違えないように、言葉づかいはかなり添削しました。
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