頌栄女子学院の国語科の先生が、2011年度の国語の入試問題についてお話してくださいました。素材文の一つとして取り上げられた石井睦美作『卵と小麦粉それからマドレーヌ』<ジャイブ(株)>について、先生は本当に簡単にただ一言、「いいお話だなあと思ったんです」とおっしゃいました。そして、この作品を出題した理由を「たくさん勉強して、中学受験にチャレンジする小学6年生の女の子たちに、中学生になったらきっとこんな素敵な出会いが待っているはず、というメッセージを伝えたかった」と温かい言葉で話してくださいました。また、「このメッセージは、小説全体を通して読んでもらわなければ伝わりません。でも、入試では一部分だけを取り上げることになります」とおっしゃって、実際の入試問題を見せてくださり、「だから、設問には直接関係しないけれど、『わたしはびっくりして亜矢の顔を見た。まじまじと。でもそれは、お昼ごはんのあとに聞かされた亜矢の話にくらべたら、ぜんぜんおどろくようなことじゃなかった』という、このあとのお話の続きがとっても気になってしまうところまでをわざと入試問題に載せたんです」ともおっしゃっていました。
入試問題を通して発せられた、頌栄女子学院から受験生へのメッセージ。それが知りたくて、わたしもこのお話を読んでみました。主人公は、受験生たちのほんの少し先輩、中学入試を終えて中学1年生になった女の子です。たくさん悩み、いろんなことを考え、そして友だちや家族や先生から刺激を受けて、少しずつ成長していく姿が優しいタッチで描かれています。入試問題は、点数をつけて合否を決めるためもの。たしかにそういう側面もありますが、中学入試の問題は、ただそれだけのものではありません。そこには、受験生全員に向けられる学校の優しい気持ちがつまっているのです。
国語科の先生は、「受験のときにしかご縁のない子もいる。でも、受けに来てくれた子みんなを大切にしたいと思っている。わたしは、入試の日、外に立って交通整理をします。採点も時間をかけて行います。一生懸命に答案を書いてくれたわけですから、それに報いたいと思っています」とおっしゃっていました。
教室スタッフ/A