思い返せば九九から、娘は算数が苦手だ。3年生の時、担任の真面目にやってますという言葉を信じて算数ドリルを開いた時の衝撃・・・やってないのに丸だけついた真っ新なドリル。やらせてみたら全然できない。慌てて教えてなんとかできるようになったものの、できないことを言えない娘はできるようにするより隠すことを先に覚えてしまった。
日能研に入ってからも性格は変わらない。わからないことを知られたくない。恥ずかしい。新しいことを知れる日能研面白い!でも問題につまづいたり、答えが合わないと悔しくて恥ずかしくて、解いてるふりをしてたくさんたくさん絵を描いた。そしたら先生の話がもっとわからなくなって、次の授業では算数のテキストもノートももっと絵でいっぱいになった。
なんで聞いてないの?!
どうしてノート書いてこないの?!
70分何してた?!
質問すればいいじゃない!
質問するまで帰ってこなくていい!!
たくさんの絵の描かれたテキストとノートを目の前に泣くだけの娘を見て、親子で途方に暮れた。いくら何でと聞いても娘には答えられない。当たり前だ。知りたいのは彼女の方だったんだと思う。
そんな悩みに「授業前にMY NICHINOKENの動画のこれを使いましょう。授業は担当者にも共有して声をかけていきますね」サクッとアドバイスが帰ってきた。日能研のたくさんの資料データ動画テキストetc・・・アドバイスをもらうまでは復習させることに必死でじっくり見てこなかった。教室から丁寧に活用法の手紙は来てるし、先生方だってシラバスに書いているじゃないの・・・。
学びのとびら動画を事前にみて、帰宅後復習でつまづいたら授業動画を見る。ノートを書き逃しても授業で取り扱った問題は登録されている。あー先生これ言ってた!授業の記憶も蘇る。それでも苦手分野になるとお絵描きは始まったし、質問しにいく腰は重い。でもコレはわかるという分野も徐々に出てきた。私はその度にスタッフさんや先生に話をしてアドバイスをもらった。
大きく変わったのは6年に入ってから。私算数苦手だけど、好き!と帰ってくるようになった。
今日の算数でやった分野好き。
前回の応用だからすぐできた!
相変わらず算数の点数は散々だった。春期講習の計算と1行題はクラスで一人だけ提出してないと教室で聞き怒ってやらせた。私だったらできない=嫌いなのに、計算もめちゃくちゃ遅いのに、どうしてこんな風に言えるんだろう。とにかく授業が楽しいらしい。お絵描きはだいぶ息を潜めた。たまに出てくるお絵描きは「ここはミス!」「忘れんなよ~」「注意!」などのセリフ付きのものに変わっていた。
志望校の算数の入試問題は、他の教科に比べて実直で基本的な問題が難易度通りに並ぶ。Nフレンズの「算数が苦手だったんだけど、数学は結構得意」という先輩の言葉を支えにすれば、数学は得意で好きになれるかも。志望校の入試問題はそんな期待を持たせてくれた。
過去問の算数は平均点を超えることがなかった。1月入試では合格はしたものの算数の大問1の(1)を全ての学校でミスしていた。入試4日前に勘を取り戻すために解いた第一志望校前年の算数の過去問は一度解いてやり直しまでしてあったのに1/4しか得点できなかった。
それでもなぜか娘は合格を確信していた。苦労していた先生への質問も過去問のやり取りを通じてハードルは下がり、個別にしてもらったアドバイスを参考にしていた。この問題は出そうとかあまり出ないとか言いながら。確かに同じ誤答でも惜しいものが増えていた。
入試本番。第一志望の入試を終えて出てきた娘は、今日の算数が今までで最高の出来だと言った。その言葉が真実かはわからないが、この学校からご縁をいただき、この体験記を書いている。
算数が苦手な子はたくさんいると思う。授業に集中できない子もノートを書けない子もいると思う。でもやる気がないかどうかはわからない。そのできない、やりたくないは何からきているのだろうか?娘はやる気があった。でもあのテキストやノートの裏からその気持ちを汲み取るのには時間がかかった。
娘の辛さを理解することも、対応し、そんな気持ちが吹き飛ぶくらいの学ぶ楽しさを与えることも親だけの力では無理だった。スタッフさんや先生方がいて、たくさんの情報とアイデアが詰まっている日能研で、彼女は合格だけでない「学ぶ」ことの根幹を経験できた。
教材のたくさんの絵。当時はあんなに憎たらしかった絵は今では大切な思い出だ。この絵を見れば、私は当時の彼女の心に触れることができる。
- ※
- 今後も寄せられたドラマを、各カテゴリーに随時アップしていきます。