シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

田園調布学園中等部

2017年06月掲載

田園調布学園中等部の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.多彩な進路が特徴。1人ひとりが力を発揮できるように真の力をつけていく。

インタビュー3/3

我(が)を捨てて、我(われ)を生かす

細野先生 大学入試も変わりつつあり、一問一答ではなくなってきています。見たことのない問題にぶつかったときにも対応できる力をつけることが必要です。社会に出れば、さらに想定外のことがいろいろと起きますから、自分で対処できる力をつけて、送り出さなければいけないと思っています。

本校の卒業生を見ていると、それぞれの場でひたむきに頑張っています。建学の精神「捨我精進」<自分本位の我(が)を捨て、目標に向かって努力し続けること、他人(ひと)よかれと行動すること>を意識して教育活動を行っているため、中高6年間を過ごす中で人格の根っこを育てることができています。そのため卒業生は、それぞれのフィールドで輝いているのだろうと思います。それが誇りです。

入試広報室長/細野智之先生

入試広報室長/細野智之先生

進路はバラエティに富んでいる

文系志向が強いですか。

細野先生 文理の比率は、毎年半々くらいです。今春の卒業生では理系が46%。佐藤が担任をしていた、現在大学2年生も理系が45%でした。理系志望といっても医学部や理学部、工学部、農学部などバラエティに富んでいます。

入学時は、どちらかというと算数よりも国語が得意という生徒が多いと思いますが、算数の苦手意識は払拭できているので、将来の職業や、卒業後の学びを考えたときに、「数学もそれほどできなくはないから理系の学部を受けてみよう」と考える生徒も多く、この割合になっているのだと思います。本校の卒業生の進路はバラエティに富んでいるのも特徴です。

芸術系に進む生徒も毎年数名います。今年は浪人生が東京芸術大学に合格しました。現役生も武蔵野美術大学や多摩美術大学に合格しています。今年はいませんでしたが、音楽大学に進学する生徒もいます。いろいろな分野で学ぶ友だちができるのも、本校で学ぶよさだと思います。

田園調布学園中等部 図書館

田園調布学園中等部 図書館

土曜プログラムが充実

多様な進路に結びついている取り組みはありますか。

細野先生 1つは、15年目をむかえる「土曜プログラム」です。講師はその道の専門家が担当しています。興味関心で選ぶマイプログラム講座は約170もあります。さらに、各学年のテーマにそった体験を行うコアプログラムで構成されています。長い間マイプログラムだけでしたが、人気講座は抽選になるので、もれてしまう生徒もいます。渋々違う講座を取るのですが、それが意外とおもしろかったり、新たな気づきが生まれたりしていることがわかり、2年前からコアプログラムとの2本立てになりました。コアプログラムは、学年のテーマを設定し、そのテーマにそったさまざまな体験をするだけでなく、思考力やプレゼンテーション力を鍛えるプログラムで、6年間にわたり行います。

東京理科大学のグローバルサイエンスに参加する生徒も

細野先生 もう1つは、中3から本格的にスタートする「キャリアデザイン」です。女性には、結婚、出産などで人生の選択を迫られるときがくると思います。そのときに自分にとってベストな選択をし、自分のできること、やりたいことをやっていけるようなキャリア教育を行っています。卒業生の中には、就職はしたけれど、辞めて大学院にいくことにしたという話をよく聞きます。これからも女子にふさわしいライフデザインとキャリアデザインがえがけるような生徒を社会に送り出していきたいと考えています。

そして、知的好奇心の刺激につながる「高大連携プログラム」です。東京理科大学との連携を密に行い、大学での学びに触れることも、生徒の励みになっていると思います。佐藤が担任をしていた学年に、東京理科大学が行っているグローバルサイエンスに定期的に参加し、研究活動などを行っていた生徒がいます。その生徒の研究発表が金賞をいただき、今年は1つ上の応用プログラムに参加し、この夏はドイツで海外の生徒たちと研究することも決まっています。もう1つは、「海外留学」です。ニュージーランドのターム留学もスタートし、4月末に9名の高1、高2が行きました。可能性を広げてくれるのではないかと期待しています。

田園調布学園中等部

田園調布学園中等部

7月8日(土)の授業体験にご参加を

最後に、受験生へのメッセージをお願いします。

細野先生 思考力、表現力を問う問題の中には、見たことがない問題もあるかもしれませんが、そういう問題にもチャレンジできる、好奇心旺盛な受験生に入ってきてほしいと思っています。来年、どういう形で出題するかは検討中ですが、基礎基本をしっかりと自分のものにして、自信をもって挑んでほしいと思います。

今年も7月8日(土)に授業体験を行います。小学4~6年生を対象に、「学ぶことって楽しいんだな」と気づいてもらえるようなプログラムを企画していますので、多くの小学生に参加してもらえると嬉しいです。詳しくは本校のホームページをご覧ください。

インタビュー3/3

田園調布学園中等部
田園調布学園中等部1926(大正15)年に日本郵船の外国航路の船長だった西村庄平が、日本の女子教育の重要性を痛感、「精進道」の提唱者として知られる川村理助を初代校長として招聘、創設した(当時の名称は調布女学校)。67(昭和42)年に調布学園女子短大を設立。2002(平成14)年に田園調布学園大学が開学。03年から高校募集停止。04年には田園調布学園中等部と改称した。
緑深い田園調布の住宅街の一画に校地を構え、環境は抜群。04年4月より現在の校舎を使用開始。新たにラウンジ、プラザ、CALL教室などができた。2階から5階までの屋上は回遊式庭園で語らいとくつろぎの環境も備えている。
自分本位の我(が)を捨て、目標に向かって努力し続けること、他人(ひと)よかれと行動すること、という意味の「捨我精進」を建学の精神とする。朝礼では「精進の鐘」が打ち鳴らされ、全生徒・教職員が黙想。伝統も重んじつつ進取の精神にも富み、国際交流にも積極的に取り組んでいる。
02年から2期制、65分授業、1日5限・週5日+土曜プログラムを実施。英語は中1から1クラス2分割授業。進度が速いだけでなく、言語の背景にある文化や歴史にまで理解を深めていく。英・数は中3・高1で5クラスを3グレード7クラスに分ける到達度別授業を実施。生徒の約9割が現役で4年制大学に進学。早慶上智、東京理科大学やICU、MARCHレベルの難関私大に多くの合格者を出しているが、年々、国公立大学の合格者も増えている。
「土曜プログラム」は、講師も大学の先生や保護者など多岐にわたる。学年ごとにテーマを設定した「コアプログラム」と約170もの講座から自由に選択する「マイプログラム」で構成。体験学習の機会も多い。農村生活体験をする山形県酒田市ファームステイ(中2)、志賀高原体験学習(中1)、裁判所傍聴(中3)、学習体験旅行(京都・奈良)(中3)、学習体験旅行(西九州方面)(高1)、オーストラリア・カナダへのホームステイ(中3希望者)、ニュージーランドターム留学(高1・高2希望者)などなど。なでしこ祭、体育祭、芸術鑑賞教室、定期音楽会、百人一首大会、スキー教室などの行事もある。クラブ活動も活発で、運動部13、文化部14、研究会4が、中高合同で活動している。朝掃除や精進日誌など以前から取り組んでいた教育活動も大切にしながら、新しいことにも挑戦を続けている。