シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

明治大学付属中野中学校

2017年04月掲載

明治大学付属中野中学校【国語】

2017年 明治大学付属中野中学校入試問題より

次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。

(略)

数年前、富士山中腹を歩いたとき、大学生たちがおどろいていました。六月の晴れた日なのに、森のなかは夕ぐれどきのようにうす暗いのです。

スギ、ヒノキの直径はどれも15~20センチ程度。切り株を見ると年輪は外側になるほどせまくなっていて、10年くらいまえからあまり成長していないことがわかりました。スギ、ヒノキは、わずかな光を求めて、上へ上へとのびていて、ぼくには息苦しくなったダイバーが水面をめざしてもがいているように見えました。下草のないむきだしの地面、そこにやせ細ったスギ、ヒノキがぎっしりと立ちならんでいます。

大学生たちは、

「なんだか、お線香(せんこう)がたくさんそなえられているようですね」

などとおどろいていました。

小学校の社会科では、「水がどこからくるのか」を学びます。蛇口(じゃぐち)から出てくる水道水は浄水場(じょうすいじょう)から、それをさらにさかのぼると川の水や地下水に、最終的には森にふった雨へといきつき、それこそが毎日使っている水の源である、とされています。さらに、「日本は豊かな森にめぐまれているので水が手に入りやすい」などと説明されているのです。

水と森について、こんなふうに語られるのを聞いたことがありませんか。

 Ⅰ  Ⅱ  Ⅲ  Ⅳ  Ⅴ 

ところが実際に山に行くと、イメージしていたものと森の様子はまったくちがっています。お線香だらけの森は、水をためたり、きれいにしたりすることができません。しかもこうした森は、富士山だけでなく日本中のいたるところにあります。

(略)

(橋本淳司『100年後の水を守る』〈文研出版〉による)

(問) Ⅰ  Ⅴ には次の(ア)~(オ)の各文が入ります。
正しい順序になるように、文章中の Ⅰ  Ⅴ に記号をいれなさい。

  • (ア)地面にしみこんで地下水となり、その地下水はやがて湧(わ)き水となって川に流れだす。
  • (イ)大部分の水は、森の土にしみこむ。
  • (ウ)このため森は、『天然の浄水場』とよばれる。
  • (エ)森に雨がふる。
  • (オ)スポンジのようにやわらかな森の土は、水をたくわえる。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この明治大学付属中野中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答
  • Ⅰ(エ)
  • Ⅱ(イ)
  • Ⅲ(オ)
  • Ⅳ(ア)
  • Ⅴ(ウ)
解説

「乱文整序」の問題です。「乱文整序」の問題には、「指示語」や「接続語」に着目して「文」と「文」のつながりを考えたり、内容に着目して分かりやすい「つながり」から組み立てていったり、文章全体の論理がどう進んでいるのかを推測したりしながら取り組んでいきます。

この問題の場合、(ウ)の冒頭に「このため」という指示語があるため、(ウ)の前で、なぜ森が「『天然の浄水場』とよばれる」のかの理由が説明される必要があることが分かります。また、内容に着目すると、森に降った雨が川に流れ出すまでの一連の現象が説明されていると類推できるので、時系列に沿って「つながり」をつくることもできます。並び替えた後は、並べ替えた文どうしのつながりがおかしくないかどうかを確かめてみることも大切です。この問題の場合、正しく並び替えた文は「森に雨が降る。大部分の水は、森の土にしみこむ。スポンジのようにやわらかな森の土は、水をたくわえる。地面にしみこんで地下水となり、その地下水はやがて湧き水となって川に流れだす。このため森は、『天然の浄水場』とよばれる。」になります。

日能研がこの問題を選んだ理由

この問題では、バラバラに示されている文を、情報どうしのつながりをとらえながら正しい順序に並び替えます。この問題に取り組む際、どのように頭を使うのでしょうか。提示されている情報から「森に雨が降って、水が地面にしみこむ」様子を時系列に沿って具体的にイメージしたり、「原因と結果の関係」に目を向け、論理的なつながりをとらえたりしながら考えることもできるでしょう。また、社会や理科といった他科目、あるいは日常の実体験から得た知識や知恵を活かして取り組むこともできそうです。国語の問題でありながら、さまざまな角度やアプローチによって取り組むことができるという点に魅力を感じました。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 6 安全な水とトイレを世界中に
  • 15 陸の豊かさも守ろう

この設問では、森に降った雨が川に流れ出すまでの一連の現象を整理することが求められています。また、文章全体の中で、水と森林の関係について述べられているということから、目標6「安全な水とトイレを世界中に」や目標15「陸の豊かさも守ろう」とのつながりが強いと言えそうです。
「蛇口をひねれば水が出る」というのが、日本に住む私たちの日常です。では、その日常は、どのように成り立っているのでしょう― 水はどこから来て、どこを通って、どこに行くのか。その過程における「つながり」はどうなっているのか― 水に目を向けてみることで、文化についても知ることができそうです。
「水」と「森林」の「つながり」から一歩ふみだすと、地球上で起こっているさまざまな現象どうしの間にも、「つながり」を見出すことができそうです。未来の地球をつくっていく一人であるあなたは、どのような「つながり」に目を向け、どこまで「つながり」をつくっていきますか。

私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから

日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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