シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

カリタス女子中学校

2017年02月掲載

カリタス女子中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.突っ込んで質問できる生徒は学力も伸びる

インタビュー3/3

同じ間違いをしやすい問題はグループワーク向き

長谷川先生 数学は中1から高1まで、1クラスを2分割する少人数制です。通常クラスよりも目が行き届くので、生徒は緊張感を持って授業に臨んでいます。

安原先生 意識して生徒に発言を仕向けたりもします。答えを聞くだけでなく、解いた感想を聞いたり、いろいろなことを問いかけるように心がけています。1人の生徒の発言が呼び水となって、他の生徒の意見が出てくると授業が活気づきます。

長谷川先生 時間の余裕があれば、4人1組で1つの問題を相談しながら解く学び合いをしています。教えられる側はわからないところを気軽に聞けるし、教える側は自分の理解度を確かめられます。学習を通して友達とコミュニケーションを取れるようにもなります。生徒が間違ったことを教えてしまうことがないように、教員がきちんと目配りしています。
難しい内容については、数学が得意な生徒相手でもグループ学習は難儀します。その場合は通常の授業スタイルの方が伝わりやすいのですが、難しい内容でもグループ学習で取り組める方法はないかと思案しています。

今回取り上げた入試問題でグループ学習をするとおもしろそうです。難しい問題だからこそ、どうやって解くか、正解にたどり着けなくてもどこまでできるかみんなでやってみる。また、どんな間違いをしやすいか、なぜその間違いはいけないのかを話し合ってもらいたい。大勢が同じ間違いをする問題こそ、なぜその考え方ではダメなのかをみんなで考える授業は効果的ではないかと思います。

カリタス女子中学校/先生

カリタス女子中学校/先生

毎週火曜日は「数学デー」

長谷川先生 毎週火曜日は、週末課題(問題集の解答ノート)が未提出・再提出の生徒が放課後に集まって課題に取り組む「数学デー」です。そこには教員がいるので、居残りの生徒に限らず誰でも数学の質問ができます。
質問は「わからないので教えてください」ではなく、「解答解説のこの部分がわかりません」「私の答案のこの部分はこれでいいのでしょうか」というように、中学生でも問題意識を持ってほしいですね。それが数学の出来具合にも大きく影響します。

今年度から外部のコンテストにも応募

安原先生 今年度初めて、中3に外部のコンテスト(レポート提出)への応募を呼びかけたところ、10名以上が応募してくれました。これは思っていた以上でした。応募した生徒は数学への興味・関心があるのだろうから、その意欲は大切にしていきたいですね。
レポートのテーマは、例えば、東京から北海道へ行くのに最も効率のよい交通手段は何か。また、バーコードの数字の並びの仕組みのように身近なテーマを選んだ生徒もいました。

「数学新聞」などの取り組みを教科センターに掲示

安原先生 中3の夏休みの課題は、コンテストに応募するか、従来からの「数学新聞」を作成するか、どちらか一方でいいのですが、中には両方とも提出した生徒がいました。
数学新聞は、普段の学習とは違う角度から数学をとらえて、自分で数学のおもしろさを見つけるのがねらいです。ピタゴラスの定理やチェバの定理など、歴史的な数学者や興味のある定理など、数学について調べてA4用紙に自分の言葉でまとめます。絵が得意な生徒はマンガで表現していました。数学新聞は教科センターに掲示しているので、中1・中2は自分が中3になったときの参考になっていると思います。

長谷川先生 2015年度から、文化祭で「教科後援」の企画展示も始めました。数学に興味のある生徒を募って全学年から10数名が集まりました。今年度は自由なテーマで、自分たちが興味のある数学についてまとめた展示をしました。授業とは違う生徒の一面を発見することもあります。

カリタス女子中学校/数学新聞

カリタス女子中学校/数学新聞

数学で答えにたどり着くまでの「過程力」を鍛える

安原先生 中高6年間の数学が、10年後、20年後に振り返ったときに、「あのとき数学を一生懸命やっていてよかった」と思ってもらえればいいですね。難しい問題に直面したとき、投げ出さずに粘り強く取り組めば、がんばっただけの結果はついてきます。なかなか問題が解けなくておもしろくないと思うこともあるでしょうが、あきらめないでほしいですね。もちろん、教員もしっかりフォローします。

長谷川先生 目の前の課題をどうすれば解決できるかを考える思考力は、数学でより鍛えられますし、社会人になったとき役に立ちます。数学がおもしろいと思ってくれるのが一番ですが、即効性はなくても、長い目で見て能力の幅を広げるものだと思ってもらえればいいと思っています。
学習している数学は必ず正解がありますが、社会で直面する課題は正解があるとは限りません。正解がないからこそ、答えにどうやってたどり着くか、考え方がより重視されます。将来、思考力を発揮できるように、その土台づくりに力を注ぎたいと思います。

カリタス女子中学校/生徒作品

カリタス女子中学校/生徒作品

インタビュー3/3

カリタス女子中学校
カリタス女子中学校ラテン語で「愛」を意味するカリタス。カナダで、聖マルグリット・デュービルが創立したケベック・カリタス修道女会を母体に、1961(昭和36)年にカリタス女子中学・高校が創設された。62年に幼稚園、63年には小学校が創設されている。
多摩川沿いの閑静な住宅街にあり、緑にも恵まれた環境。2階建てアリーナ、人工芝の広いグラウンド、テニスコート、屋内プールなど、スポーツ施設も充実している。生徒に人気のある図書室は蔵書も豊富で明るくきれい。専用回線で常時インターネットに接続されているコンピュータ室も完備。聖堂や1200名収容の講堂もある。カフェテリアでは飲み物、パン・弁当を販売。06年4月に「教科センター方式」の校舎が完成した。
キリスト教の愛と真理の原理に基づく教育方針。祈る心、学ぶ心、交わりの心、奉仕の心の「4つの心」をもった人間を育成することを目指す。また、異なる文化を理解する力を育み、国際的なセンスを身につけるため、中1から英語とフランス語の2つの外国語を導入。
中1から古典学習や体系的な作文教育を行い、豊かな国語力を育成する。独自の教材も含めて進められる英・仏2つの外国語教育は密度の濃い内容。中1から2時間の授業が設けられた仏語は、高校で第一外国語として履修も可能で、大学入試にも対応する。英語は中学が週6時間のうちネイティブ教員によるオーラル1時間、さらに2016年度より始まった英語既習者クラスではネイティブ教員の時間が2時間ある。中1・中2の理科実験や、英・仏・数の授業は、1クラスを2つに分けたハーフクラスで行われる。補習は必要に応じて実施。高校2年から私立文系・国公立文系・理数の3コース制。大学受験に的を絞った意欲的なカリキュラムで、国公立大、難関私大に多数の合格者を輩出。現役進学率も着実に伸びている。
制服は「カリタスブルー」を基調としたスーツスタイル。放送を通じての「朝の祈り」で1日が始まり、全学年で聖書の心を学ぶ「カトリック倫理」の授業がある。奉仕活動を行うアンジェラスの会を中心に、教育里親の会、バザー、施設訪問など幅広いボランティア活動を展開。球技大会や体育祭、文化祭など学年を越えた交流があるほか、1月の外国語発表会は、学年ごとに劇、歌、スピーチなどで日ごろの語学学習の成果を発表する。中2で2泊3日のイングリッシュキャンプがあり、高1の希望者には、カナダ研修が実施されている。またターム留学やセブ島英語研修も参加者が増えている。高2の修学旅行は九州北部。クラブ活動は、運動部8、文化部14あり、中高合同で活動。