シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

雙葉中学校

2017年02月掲載

雙葉中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.本物に触れることを大切に科学への関心が深まる授業を展開

インタビュー2/3

4分野を大事にしていることも特色の1つ

実験・観察を大切にしていらっしゃるということですが、思いを聞かせていただけますか。

大塚先生 本校には実験室が4つあります。物理、化学、生物はどこでもあると思うのですが、地学室もあります。一昨年、ドラフトを入れたものですから、化学室で消化しきれない実験や、中学生の化学実験も地学室でできます。本校の理科の特色を一つ挙げるとしたら、実験・観察を大事にしていることだと思います。中1,中2は1分野(物理、化学)を学習しますが、2時間に1回は実験をしています。特に中2の化学実験は週に1度入ります。中1,中2の2分野は生物領域。生物でも実験・観察・実習を数多く行っています。顕微鏡はかなり昔から一人1台あり、しっかりと観察します。ゾウリムシなど動き回る微生物も観察させています。

中3になりますと、1分野が物理、2分野が地学。地学はその1年間で学びます。高1は化学と生物、ここまでは全員必修ですが、高2では物理か地学の選択になります。高3は物理、化学、生物、それぞれ2時間の選択科目が置かれています。地学はセンター試験対応のみとなりますが、地学をここまで学ぶ学校は近頃少なくなっているのではないかと思います。本校の理科の特色をもう一つ挙げるとしたら、4分野を大事にしていることだと思います。

雙葉中学校/地学室

雙葉中学校/地学室

地学では野外実習を実施

地学の学習はどのように行っているのですか。

大塚先生 地学は本物に触れないとなかなかわからないので、映像を使ったり、地震の分布や火山灰の洗い出し、岩石や化石などの標本の観察など、様々な実習を行ないます。
また、日帰りで野外実習を行っていて、それは50数年続いています。2008年度までは高2で行っていましたが、高2で物理と地学が選択になりましたので、このような時代、全員に野外での体験をさせたいと思い、2009年度からは中3で行っております。11月の初めに長瀞のあたりに行きます。

野外実習では車窓から地学を学ぶ

電車で行くのですか。

大塚先生 高2の時は電車を利用していました。高校生でしたから、朝7時のレッドアロー号に乗って、17時半くらいに戻って来るという1日かけての実習で、鍾乳洞を回ったりしていましたが、中学生になってからはバスで出かけています。4クラスありますので、クラスごとに1台ずつ分乗して、バスで行くわけですけれども、行きは「車窓の地学」と言いまして、窓から見える景色を教員が解説しながら長瀞へ向かいます。

雙葉中学校/岩石園

雙葉中学校/岩石園

先生による生の解説が興味をそそる

大塚先生 例えば、四ッ谷、市ヶ谷……と谷のつく地名があります。学校は武蔵野台地の淀橋台という段丘面にあります。首都高に入るところに神田川が流れていますが、神田川から向こうは豊島台というもう少し新しい台地なんです。そんなことを説明しながら行きまして、高島平を過ぎると荒川を渡ります。「今日は荒川の上流に行くので、様子をよく見るように」という話をします。関越道に入りしばらく行くと、丘陵地が見えてきます。そういう丘陵地にまで貝塚などが分布していることを説明し、海進の話もいたします。

教室での学びが深まる野外実習

生徒さんは熱心に聞いていますか。

大塚先生 いえ、これがうるさいんです(笑)。「まぶしいからカーテンを閉めたい」などと言うのですが、行きは「絶対にダメ」と言っています。今年度は天気がよかったので富士山も見えましたし、花園あたりになると山がかなりよく見えますので、榛名山などの火山地形と、これから行く秩父の山並みの違いなども話しながら現地に着きました。

場所はいつも長瀞ですか?

大塚先生 場所も変えたいと思ったのですが、186名を連れて行くことができて、16時半頃までに学校に戻って来られるところとなると難しいんです。千葉にも化石が出る場所がありますし、三浦半島の方もいいとは思うのですが、長年行っている長瀞にどうしても足が向いてしまいます。きれい結晶片岩などが観察できますし、浦山ダムからは秩父盆地河岸段丘地形の様子もよくわかるので、中3は変成岩まで勉強して、出かけて行きます。

理科系のクラブが豊富

岩石カットなどもやるのですか。

大塚先生 機材はあるのですが、時間がないのでそこまではやっていません。クラブ活動ではできるかなと思ってはいるのですが、残念なことに地学クラブはありません。理科に関するクラブは化学、天文、生物、理科の4つです。理科クラブは物理的なことをやっていて、昨年は自分たちでいくつかピタゴラスイッチを作って、文化祭で遊んでもらっていました。
天文クラブは、学内ではなかなか観測ができないので、合宿に行って流星観測や恒星観測に取り組んでいます。

雙葉中学校/風速観測モニタ

雙葉中学校/風速観測モニタ

理科離れは感じない。医学に加え工学を志望する生徒が増えている

大塚先生 ずいぶん前から理科離れが話題になっていますが、雙葉ではそういうことを感じたことがありません。中1から理科といえば実験という感じなので、「大好き!」という子が多いと思います。教室ではおとなしくしている子も、理科室に来ると楽しそうにみんなと協力して取り組んでいます。
進路は理系が多く、中でも医学部に進学する生徒が多いです。最近は工学系に進む生徒が増えていて、来年度の高2は物理と地学の選択人数が逆転し、物理選択者のほうが多いです。学年の傾向もあると思いますが、大学のほうでも少し前から「女子に理科を」という働きかけがありますよね。いろいろな大学から「サイエンスカフェを開くので、生徒さんに紹介してください」などという依頼が来ます。

インタビュー2/3

雙葉中学校
雙葉中学校1872(明治5)年、フランスのパリに本院をもつ幼きイエス会のシスター(修道女)が来日して始めた教育慈善事業を前身とし、1909年に初代校長メール・セン・テレーズが現在地に雙葉高等女学校を創立。47(昭和22)年、雙葉中学、48年同高等学校となり現在に至る。田園調布、横浜、静岡、福岡の各雙葉学園は姉妹校にあたる。
四ッ谷駅からもほど近く、都心にもかかわらず学校の周囲は非常に落ち着いた雰囲気。2001年に地下1階地上7階建ての充実した設備を備えた新校舎と講堂が完成。最上階の図書館がすばらしい。聖堂は校内にあり、宗教の時間などに使われる。校外施設が日光の霧降高原にある。
「徳においては純真に、義務においては堅実に」を校訓に、カトリックの精神に基づいた全人教育を目指している。礼儀、言葉づかい、節度という面では定評があり、生徒は決して強制されているわけではなく、のびのびとふるまいながらも自然と品位を身につけていく。「お嬢さん学校」とよくいわれるが、行動力・実行力を備えていて芯の強さを秘めている。
中高時代に基礎学力をしっかりと身につけることを重視し、受験のみを目的としたカリキュラムはとっていない。高校では、生徒それぞれが希望に応じた科目が選択できるようになっていて、文系コース、理系コースといったコース分けは行なわない。中高一貫校の利点を生かした効率的なカリキュラムのもと、各教科で丁寧なきめ細かい指導が行われている。中学1年2年の英会話がクラス2分割の少人数で行われ、中学1年生の間は、英語の学習経験に応じたクラス分けをしている。高校2年3年の選択科目の多くが少人数授業となっている。創立当初から語学教育が盛んな伝統が受け継がれ、時間数が多く、密度が濃い授業が展開されている。中学3年では、週に1.5時間フランス語の授業があり、高校からは英語、又はフランス語のどちらかを選択して履修することができる。
意外に校則が少なく自由な雰囲気。ある在校生が「マシュマロと綿菓子が混ざったような学校」と表現したが、おだやかな雰囲気でみんな仲が良い。週3時間の保健体育で体力作りもおこたらず、球技大会、運動会など身体を使う行事も盛ん。奉仕活動は生徒の自発的な活動が中心で、学内の掃除も毎日放課後に先生と生徒がともに熱心に行う。クリスマスのころ、学年ごとに手作りのプレゼントを持参して施設の人たちと交流する行事もある。全員参加のクラブ活動は研究系や奉仕のクラブからバレーボールなど体育系まで盛んで、ダンス同好会、演劇なども人気が高い。手話の会、点訳の会、聖歌隊なども活発に活動。文化祭、夏期学校、修学旅行など行事も多彩。