シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

雙葉中学校

2017年02月掲載

雙葉中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.自分の知識を総動員して考えられる柔軟な姿勢を身につけよう

インタビュー1/3

液状化が起こった原因を考えてほしかった

この問題の出題意図からお話いただけますか。

大塚先生 液状化については東北地方の太平洋沖地震でも大きく報道されました。実際に被害が出た地域に住んでおられる方も多かったと思います。この地震では想定外のことが続き、いまだに大きな傷跡が残されていますが、液状化現象が茨城、千葉、埼玉などの内陸のほうまで起こっていたことが、地震後しばらく経って検証されました。そこで、なぜ内陸まで液状化が起きたのかを考えてほしいと思いました。今後起こると言われている首都直下型地震や南海トラフ地震の被害予測という防災上の観点もあります。

理科主任 地学科教諭/大塚由紀子先生

理科主任 地学科教諭/大塚由紀子先生

社会科で学んだ知識も役立つ問題

大塚先生 貝塚については社会科の縄文時代の学習の中で習うと思いますが、その貝塚の分布から当時の海岸線がわかることを知ってほしいと考えました。それには問1の台地に位置するA地点と、低地に位置するB地点の柱状図から、それぞれの地点の地史と言いますか、環境の変化を考えます。A地点は火山灰層が厚く堆積していて、早くに陸地化していること。火山灰層とB地点の砂層は同時代に作られたと問題文に書いてありますので、B地点はまだ海であったと考えられます。実はA地点の柱状図は、雙葉の新校舎建設の際のボーリング資料とサンプルから作成したものです。すごく縮めて書いてありますが、そこから起こしたものなんです。B地点の柱状図は、元浅草のボーリング資料を入手して作成したものです。身近な東京の地形区分と柱状図から読み解いていくという問題でした。

日頃から柔軟な姿勢を大切にしてほしい

大塚先生 縄文海進と言われていますが、縄文時代になると地球はあたたかくなり、海が埼玉のほうまで入り込んで、広く古東京湾が形成されました。その知識がなくても、問題を追って考えていくことができたと思います。また、現在の東京の地形が、中世以降の開発の結果でもあることも理解してもらいたいと考えました。限られた時間の中で解く、入試という厳しい状況下で、自分の知識を総動員して考えることは並大抵のことではありませんが、日頃からさまざまなことにアンテナを延ばして、与えられた情報をもとに考えられる、柔軟な姿勢を大切にしてほしいと思っております。

雙葉中学校/校舎

雙葉中学校/校舎

貝塚の分布が海岸線を表していることを伝えたかった

大塚先生 採点した印象といたしましては、液状化については小学校や自治体の防災の取り組みがかなり徹底してきているのか、そういう報道に接して以前よりもしっかり学んでいるのではないかという印象を受けました。

貝塚のことがわかっていれば、地層を的確に読めなくても対応できたのではないかと感じましたが…。

大塚先生 貝塚が内陸まで分布していて、埼玉まで海が入り込んでいたということがわかったら楽しいだろうなと思いました。普通、貝塚といえば海のそばととらえていますから、びっくりですよね。私自身、貝塚の分布が海岸線を表しているということを知ったのは学生のときでした。そういう地形の成り立ちも遺跡と結びつけて知ることができることにおもしろさを覚えました。やはりこちらが「おもしろいな」「不思議だな」と思えたことを、受験生にもぜひ知ってほしいというか、伝えたいという思いがあります。

思考力を問う問題を出したい

理科の入試問題の基本的なコンセプトを教えてください。

大塚先生 大切にしているポリシーは、単なる知識を問うのではなく、問題文から読み取り、考えて答える力、思考力を問う問題にしたいということです。問いを追って答えていくことにより、未知の問題でも答えに到達できるよう設問を工夫しているつもりです。小学生が知らないことであっても、「お土産」ではないですけれども、その一端に触れてほしいと思っています。

問題の素材研究にあたり意識していることがあれば教えてください。

大塚先生 実験や観察問題を出題する際には、実験や観察を継続的に、行って検討しております。26年度の問題で火山灰の問題を出したことがありますが、数カ所で採取しました。火山灰といっても、中の軽石層なんですが、それを洗い出して使いました。

雙葉中学校/聖母像

雙葉中学校/聖母像

インタビュー1/3

雙葉中学校
雙葉中学校1872(明治5)年、フランスのパリに本院をもつ幼きイエス会のシスター(修道女)が来日して始めた教育慈善事業を前身とし、1909年に初代校長メール・セン・テレーズが現在地に雙葉高等女学校を創立。47(昭和22)年、雙葉中学、48年同高等学校となり現在に至る。田園調布、横浜、静岡、福岡の各雙葉学園は姉妹校にあたる。
四ッ谷駅からもほど近く、都心にもかかわらず学校の周囲は非常に落ち着いた雰囲気。2001年に地下1階地上7階建ての充実した設備を備えた新校舎と講堂が完成。最上階の図書館がすばらしい。聖堂は校内にあり、宗教の時間などに使われる。校外施設が日光の霧降高原にある。
「徳においては純真に、義務においては堅実に」を校訓に、カトリックの精神に基づいた全人教育を目指している。礼儀、言葉づかい、節度という面では定評があり、生徒は決して強制されているわけではなく、のびのびとふるまいながらも自然と品位を身につけていく。「お嬢さん学校」とよくいわれるが、行動力・実行力を備えていて芯の強さを秘めている。
中高時代に基礎学力をしっかりと身につけることを重視し、受験のみを目的としたカリキュラムはとっていない。高校では、生徒それぞれが希望に応じた科目が選択できるようになっていて、文系コース、理系コースといったコース分けは行なわない。中高一貫校の利点を生かした効率的なカリキュラムのもと、各教科で丁寧なきめ細かい指導が行われている。中学1年2年の英会話がクラス2分割の少人数で行われ、中学1年生の間は、英語の学習経験に応じたクラス分けをしている。高校2年3年の選択科目の多くが少人数授業となっている。創立当初から語学教育が盛んな伝統が受け継がれ、時間数が多く、密度が濃い授業が展開されている。中学3年では、週に1.5時間フランス語の授業があり、高校からは英語、又はフランス語のどちらかを選択して履修することができる。
意外に校則が少なく自由な雰囲気。ある在校生が「マシュマロと綿菓子が混ざったような学校」と表現したが、おだやかな雰囲気でみんな仲が良い。週3時間の保健体育で体力作りもおこたらず、球技大会、運動会など身体を使う行事も盛ん。奉仕活動は生徒の自発的な活動が中心で、学内の掃除も毎日放課後に先生と生徒がともに熱心に行う。クリスマスのころ、学年ごとに手作りのプレゼントを持参して施設の人たちと交流する行事もある。全員参加のクラブ活動は研究系や奉仕のクラブからバレーボールなど体育系まで盛んで、ダンス同好会、演劇なども人気が高い。手話の会、点訳の会、聖歌隊なども活発に活動。文化祭、夏期学校、修学旅行など行事も多彩。