シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

明治大学付属明治中学校

2017年01月掲載

明治大学付属明治中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2. 文章記述は作問者との“キャッチボール”

インタビュー2/3

知識の丸暗記ではなく、理解して使えるようになろう

受験生の答案を見て、気づかれたことはありますか。

齊藤先生 用語の解答については、漢字表記を含めほぼ正確にできています。ただし、一問一答式的に問われれば答えられても、様々な情報の中から必要な情報を抽出して答える問題では得点差がついています。
基礎範囲の出題でも、目新しい視点で聞いた問題は多くの受験生が得点を落としています。日本が中国と戦争していたことは誰もが知っていることですが、「日本が最も長く戦った相手国は?」と聞かれて「中国」とすんなり答えられるか、というのもその一例でしょう。
違う角度から聞かれて答えられないということは、覚え方が一方向、つまり知識の丸暗記で、使えるようになっていないということです。「日本が中国と戦争をしていた」ことを知っているだけでなく、その理由や経過、今の私たちにどんな影響があるのかといったところまで理解するようにしましょう。
繰り返しになりますが、覚えた知識を活用できるように、日頃から「覚えたこと」と「目の前で起きている事象」を関連づけて考える習慣をつけましょう。

広報主任/齊藤信弘 先生

広報主任/齊藤信弘 先生

解き方のパターン化で早合点な解答が目立つ

齊藤先生 文章記述については、出し始めた当初に比べると無答の答案はかなり減りました。最近目立つのが、出題意図をきちんと読み取れていない答案です。受験勉強で「このグラフが出たら、ここを読む」という解き方のパターンが強くインプットされているせいか、設問文をきちんと読まずに反射的に答えてしまっています。中学入試に出題できる資料はそう多くないので、定番の資料の場合、聞かれていることより自分が知っていることを答えがちです。
まず設問をしっかり読んで、何が問われているのか把握しましょう。“キャッチボール”するようなつもりで、問題に取り組んでもらえたらと思います。早合点してどんどんボールを投げ込まないで、こちらが投げているボールをまず受け取ってください。

「伝えたい!」という意欲を大切にしたい

齊藤先生 選抜目的の入試問題と違い、定期考査の文章記述の採点は減点法の考えは極力控えめにしています。単純に×にするのは「惜しいな」と思う解答があります。そうした解答は、作問者とキャッチボールしようとする要素が見えます。生徒の「伝えたい!」という意欲を大切にしたいと思っています。

日能研では、誤答だけれど見どころ十分な答えには“ハナバツ”をつけています。条件が読み取れていなかったり、押さえるべき用語が足りていないので○はあげられないけれど、自分なりによく考えたとわかる答案です。

宮下先生 私は本校の卒業生ですが、在学中に“ハナバツ”のような評価をしてもらったことがあります。中学生のとき、定期考査の答案指導で×がついた解答について、先生に「こういう読み取り方をしました」と説明したところ、「なるほど、そういう読み取り方もありだし、おもしろい視点だね。テストの点数はあげられないけれど、平常点に加味するよ」と言われました。このとき、正解の見方だけではない、別の視点もありなんだと思いましたし、自分の考えを認めてもらえてうれしかったです。

明治大学付属明治中学校/教室

明治大学付属明治中学校/教室

思考は千差万別だから、生徒一人ひとりに向き合う

齊藤先生 「こうすれば記述の力がつく」というようなメソッドは確立していません。生徒の思考は千差万別です。それぞれキャッチボールできるきっかけを見つけて、生徒一人ひとりに対応していくしかないと思っています。
私が中高6年間教えたある生徒は、関心のある分野についてはのめり込むタイプで、学んだことを誰かと話すことも好きでしたが、自分の話したいことを勝手に話すだけ。記述でも勝手に自分なりの論を展開しがちな上、読み手を意識したとは言い難い字の汚さでした。それでも思考の方向をこちらが軌道修正するのではなく、彼の意見を可能な限り受け入れて、ちょっと的外れでも、主張のユニークさ、伝わりやすい構成などを最大限評価しました。
あるときの個別指導時に、歴史好きの彼に文字の歴史の話をしました。「文字は情報を伝えるためのツールなのだから、伝わるように記さなければ用をなさないよ」と。その後、彼はほんの少しですが丁寧に字を書くようになりました。このことをきっかけにして、「君の言いたいことはわかる」と彼の気持ちを受けとめた上で「こちらの言いたいことも受けとめて、やり取りできるようになれば評価するよ」と粘り強く言い続けました。彼は明大法学部に進み、2015年度の司法試験で首席合格しました。
本校の教員は生徒のことをよく見ていますし、生徒一人ひとりに向き合おうとしています。それが本校の教育の根底にあると思います。

明治大学付属明治中学校/グラウンド

明治大学付属明治中学校/グラウンド

インタビュー2/3

明治大学付属明治中学校
明治大学付属明治中学校1912年に旧制明治中学校として神田駿河台の明治大学構内で開校した。戦後は、1947年の新制明治中学校、1948年の新制明治高等学校の発足に伴い、推薦制度による大学までの一貫教育の方針が確立された。2008年に調布市へ移転し、共学化。
明治大学への内進率は約90%で、国公立大学進学希望者は、明治大学への推薦資格を保持したまま併願可能。私立大学も併願受験の対象となる場合があるが、学部・学科ごとに条件が異なるため、受験には予め明治大学からの許可が必要。7時間目に週1回ずつ英・数の補習講座を設定し、ていねいに基礎力を固めている。高大連携教育にも力を入れており、大学の先生による「高大連携講座」や、長期休みを利用した法曹入門講座などの「高大連携セミナー」、大学の単位として認定される「プレカレッジプログラム」など、付属校としての魅力ある講座も豊富。
1450名収容のホール、2つの体育館、蔵書約7万冊の図書館など、充実した施設がそろっている。英語科教員が1冊ずつ読んで独自のレベル分けをした英語の多読本が約7000冊あり、積極的に活用されている。「質実剛健」「独立自治」という建学精神のもと、紫紺祭(文化祭)、体育祭、東京六大学野球応援、球技大会などの行事や、中学でほぼ100%、高校で90%以上の生徒が加入するクラブ活動も盛んである。