シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

明治大学付属明治中学校

2017年01月掲載

明治大学付属明治中学校【社会】

2016年 明治大学付属明治中学校入試問題より

(戦後)70年を経た今、私たちに必要なことは、その記憶を語り継いでいくことです。
原爆や戦争を体験した日本そして世界の皆さん、記憶を風化させないためにも、その経験を語ってください。
若い世代の皆さん、過去の話だと切り捨てずに、未来のあなたの身に起こるかもしれない話だからこそ伝えようとする、平和への思いをしっかりと受け止めてください。「私だったらどうするだろう」と想像してみてください。そして、「平和のために、私にできることは何だろう」と考えてみてください。若い世代の皆さんは、国境を越えて新しい関係を築いていく力を持っています。

(2015年長崎平和宣言より抜粋)

(問)「若い世代の皆さん~持っています。」の中に、「平和のために、私にできること」とありますが、あなた自身は具体的にどのような取り組みができると考えますか。
表も参考にしながら、述べなさい。

表:NHK放送文化研究所「先の戦争と世代ギャップ」2000年より

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この明治大学付属明治中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

表を見てみると、終戦記念日以外については、どの世代も戦争に関する知識や理解が不十分であることがわかる。大人たちも戦争にもっと関心を持ってもらえるよう、私自身が戦争について勉強し、たくさん質問ができるように取り組んでいきたい。

(学校解答を使わせていただきました。)

解説

表からは、第二次世界大戦について、終戦記念日以外はどの世代も正答率が低く、中でも若い世代ほど正答率が低いことが読み取れます。この点と、文章中の「若い世代の皆さん、……(以下略)」の内容をふまえて、あなた自身が平和のためにできることを書きます。内容は、政府が実行するようなレベルのことではなく、あなた自身(個人)ができることを、できるだけ具体的に書くことが大切です。

日能研がこの問題を選んだ理由

2015年は太平洋戦争が終わって70年という節目の年であったため、2016年度の入試では、戦争や平和を題材にした問題が多くみられました。中学入試問題全体では、日本がかかわった戦争の名や時期、戦争の原因や結果など、いわゆる基本事項を確認するような問題の割合が多いのですが、その中で「記憶を語り継ぐことの大切さ」に焦点をあてたこの問題は、これまでにあまり見られなかった切り口で、新しさがあります。

新しいだけでなく、学校の先生方が、入試問題を通して受験生に強いメッセージを発信していることも特筆すべき点だと考えます。問題文は長崎平和宣言からの抜粋ですが「若い世代の皆さん、過去の話だと切り捨てずに、未来のあなたの身に起こるかもしれない話だからこそ伝えようとする、平和への思いをしっかりと受け止めて……(以下略)」という部分をもとに問いをつくったということは、教科学習で得たことを「理解した/学んだ」で終わらせるのではなく、自分のこととして考える力をつけてほしいというメッセージでもあるでしょう。この、自分のこととして考える(≒当事者性)というのは、これからの子どもたちの学びを考える上で、ひとつのキーワードになっていくのではないでしょうか。

また、「世代別正答率の表を参考にしながら述べる」という条件があることで、自由な作文ではなく、データに基づいた論理的かつ説得性のある取り組みを述べる力も求められます。この力は、中学校に入ってからの子どもたちが育んでいかなければならない大切な力でもあります。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。