出題校にインタビュー!
横浜共立学園中学校
2017年01月掲載
横浜共立学園中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.記述問題は自分の考えを、相手にわかるように書くことが大切。
インタビュー1/3
自分にとって大切なものに気づいてほしかった
この問題の出題意図からお話いただけますか。
鎌田先生 一般的に、なんでもお金に換算して価値を決める風潮がありますよね。お金に換算することができないものにも価値があることに気づいてほしいという思いがありました。金銭的な価値はわかりやすいですし、汎用性もあると思いますが、人には必ず自分自身の価値観により大切だと思えるものもあるはずです。それを具体化して説明することにより、気づいてほしいと思って出題しました。
個人の価値観を問う問題ではなく、国語の採点対象となる問題ですので、設問の中に「本文をふまえて」という言葉を含めました。本文の中に「具体的なモノ」「モノにまとわりついている思い出」「モノに閉じこめられ、何かのついでにそこからにじみ出るすてきな時間」という表現がありますので、それに基づいて1つのモノを挙げ、まとわりついている思い出やにじみ出る素敵な時間を、きちんとした言葉でわかりやすく説明できているかどうかを採点のポイントとしました。
国語科/鎌田文子先生
本文をふまえて書けたかどうかが採点の鍵に
比較的できていたという印象でしょうか。
鎌田先生 「本文をふまえて」ということがどういうことなのか。わかった受験生と、私の宝物を書くということばかりで頭がいっぱいになり、書いてある内容は素敵なのですが、答えてほしいことからは外れてしまったという答案に分かれました。本文に例が出ていましたよね。その例を自分なりに引きつけて書いてほしかったので、そこを読み取れたかどうかで差がついてしまったという印象でした。
採点にあたり、教科の中で「どんな答えが出てくるかな」「こんな答えを書いてほしいね」などということを話していましたが、もっとも心配したのは「値段が高いものは価値も高い」という答えがあったらどうしようということでした。例えば「私が持っているゲームソフトは高価。だから価値がある」という答えが出て来たら残念だなぁと思っていましたが、それは杞憂に終わりほっとしました。
心に留めている体験が綴られていた
鎌田先生 受験生の多くは家族に愛され、学校でも塾でも楽しく勉強し…と、いい思い出を持っていると思います。答えを書けた人はそれを心に留めていることができた人なのではないかなと感じました。解答の中には私たちがほっとするような体験や、うらやましいと思うような体験がたくさん綴られていて、あたたかい気持ちになりました。
深川先生 体験の数は人それぞれですが、自分が歩いてきた人生の中で、思い出に残る大切な時間が込められているモノというのは誰にでもあると思います。ですからどの子にも書くことができる設問だったのではないかと思います。
鎌田先生 「宝物」を聞かれているので、「特別なもの」を想定した人が多かったように思います。
深川先生 何かの記念となるものを書いている人が多かったかもしれませんね。大人になると、何気ない日常がいとおしく感じられますが、子どもにとっての「宝物」は、やはり「特別なもの」という意識があると感じました。
入試問題を作る上では素材文の選定に注力
入試問題を作る上で、心がけていることはありますか。
鎌田先生 国語の場合、素材文が重要になります。私たちも素材文の選定には十分に時間をかけているつもりです。選定の際には、横浜共立学園で大切にしていることとできるかぎり整合性がとれているものを選びたいと思っています。
大切にしていることとはどのようなことでしょうか。
鎌田先生 本校には「心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい、また、隣人を自分のように愛しなさい」という創立精神に派生した教育の理念があります。隣人を愛し、他者に仕え、世界の平和に貢献する女性の育成に努めているので、ここにつながる素材文を選びたいと思っています。平たくいえば自分のためだけの人生ではなく、ともに生きていく友達のこと、世界の人々のことを考えて行動できる人になってほしいという思いをもって教育しているので、その入口となるような文章を採用したいということです。毎年、そういう文章と出会えるかというとそうではありませんが、2016年入試については辻信一さんの文章と出会い、自分に大切なものがあるように、他の人にもそういうものがあること。それは必ずしも自分にとって大切なモノではないかもしれないけれども、尊重すべきであり、そういうことがわかる人になってほしいという気持ちが一致したので、これでいこうと決めました。
横浜共立学園中学校/創立精神
創立精神や教育方針とひびき合う文章を選びたい
深川先生 見えないものを見るというのは、キリスト教の聖書の中に載っている非常に大きなテーマです。今回の素材文には、見えている(具体的な)モノの背後にある豊かな時間や人との思い出など、見えないものの価値を感じることの大切さが綴られています。私たちもそういう視点を持っていてほしいと思っていたので、辻さんの文章は非常に良いと思いました。
また、入試問題は受験した子の記憶に残ると思うので、できれば深い洞察を含んだ文章を与えたいと思っています。時間が経っても深みが心に残っている、あるいは新たなものが見えてきたりするような文章だと最高ですね。これから受験する小学生が過去問としてこの問題に触れることもあるので、その子にも大事なものに気づいてもらえるような要素が入っている文章を選びたいという気持ちがあります。
記述問題は国語の力を総合的に見ることができる
問題が多い上に記述の問題も増えていますが、その意図を教えてください。
深川先生 私たちが2、3行で書かせる記述問題を出題する意図は、国語の力を総合的に見ることができるからです。与えられた課題文をしっかり読み、問いに対してどの部分にそれが書かれているのかを見極めて、問いが要求するものを満たすように書く(表現する)ということは、入学後の国語科教育でも大切にしており、訓練していることの一つです。
それは単に問題を解けるということではありません。文章にしても、人の話にしても、しっかり聞くことができ、内容を踏まえて自分の考えを組み立てて、相手にわかるように表現することは、国語教育の根幹だと思います。それは大学入試にもかかわることですが、社会の中でコミュニケーションを取る上で大事なことだと思っています。
横浜共立学園中学校/ピアソン記念礼拝堂
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