シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

渋谷教育学園渋谷中学校

2016年11月掲載

渋谷教育学園渋谷中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.教育目標である『自調自考』する力を磨く6年間

インタビュー2/3

授業でも資料から読み取れることを考えさせる

入試問題にもこだわりがあるように、授業もこだわりがありそうですね。

大貫先生 私は今年度、中1の地理を担当していますが、プリントとプロジェクターを使って、初見の資料や複数の資料を提示し、生徒がもともと知っている知識や、最低限押さえておくべき知識を活用して、「どのようなことが読み取れるだろうか」と問いかける授業をすることを心がけています。

中1といえば、入試でこの問題に直面した生徒さんもいると思います。授業で入試問題について話をしたことはありますか。

大貫先生 世界地誌でオーストラリアの授業をした時に、『露天掘り』が出てきました。「入試でも出たよね」という話をしたら「ああ、そういえば……」と、覚えている生徒が結構いました。

渋谷教育学園渋谷中学校/自調自考論文

渋谷教育学園渋谷中学校/自調自考論文

理科同様、社会科も観察が大事

大貫先生 1つのテーマが終わった時に、生徒にアンケートを配布して感想などを書いてもらっています。中学入学後も、最低限覚えなければならない知識がありますので、「社会科は暗記科目」という意識が完全に抜けたかというと、そうではないと思いますが、アンケートの回答から、目標の半分くらいは達成しできている手応えはあります。

藤田先生 社会科では資料からどのようなことが言えるかを、意識して考えさせています。理系に『観察』という言葉がありますが、文系でも対象をじっくり吟味することに変わりはありません。そして「なぜだろう」という疑問をもって仮説を立てて確認します。立てた仮説が合っている場合もありますし、そうではない場合もありますが、それでいいのです。

すべての学習が『自調自考論文』の力に

藤田先生 本校では中高の学習の成果として『自調自考論文』に取り組みます。社会科に限らず、他の教科でも、そこで役立つ力をつけることも意識して授業を行っています。

自調自考論文にはいつ頃から取り組むのですか。

藤田先生 中3の終わり頃から先輩の発表を見て、自分のテーマを考え始めます。全教科の教員が担当しますので、教員1人に対し、15人前後の生徒が参加するゼミ形式で進めています。論文の提出は高校2年生の夏です。
テーマを決めるにあたり、考えていることを発表すると、仲間から「その切り口は少し甘いのでは?」とか「おもしろそうだね」とか、さまざまな意見が出て刺激を受けます。生徒は意識していないかもしれませんが、対象を調べて、考えて、裏を取って…ということは、中1の段階から始まっています。

渋谷教育学園渋谷中学校/制服

渋谷教育学園渋谷中学校/制服

行事とも連携し、自ら調べ自ら考える力をつけていく

藤田先生 シラバスを見ていただくとよくわかると思います。教科ごとに、6年間にわたり、いつ、どのような内容を学ぶかをお知らせしています。Aブロック(中1、中2)とBブロック(中3、高1)の前半は基礎学力をつけることに力を入れています。その上で論理的思考力を強化していきます。すべての教科が自調自考論文に代表される教科横断的な成果物の作成に向けて、段階的に必要な力を養っていけるよう工夫しているのが本校の教育の特長であり、教科だけでなく、行事との連携も行っています。

大貫先生 たとえば『研修』です。学年行事ですが、研修が近づくと、社会科でもテーマに関連した授業を行います。

藤田先生 中3は奈良というように行き先は決まっていますが、生徒たちが行き方や立ち寄り先を考えたり、調べる上でインタビューが必要であればアポイントを取ってお話を伺ったり、帰ってきた後も事後学習を行い、最終的に発表します。発表の仕方も学年により異なり、今年度は中1は壁新聞、中2はパワーポイントを含む自由プレゼンテーション、中3はレポート形式でまとまった文章を書くことが求められます。

大貫先生 自調自考論文に取り組んだ時に、調査して得られたデータには想定外のものが出てくることがあると思います。そういう時に、社会科で学んだ経験を活かしてほしいと思っています。本校社会科の最終的な教育目標は『市民の育成』を掲げていますので、自調自考論文を完成させて終わりではなく、その先につながるように意識して取り組んでいます。

予想のつかない授業が多くて楽しい

藤田先生 Cブロック(高2、高3)では大学入試を意識せざるを得ません。(大学側から)求められるものに対応できるよう、今まで身につけてききたことを成形する必要がありますが、Bブロックまでは予想のつかない授業が多く、こちらも楽しんで取り組んでいますので、生徒たちも楽しいのではないかと思います。

入試問題にしろ授業にしろ、先生方の間でコミュニケーションがとれていないとできないように思います。

藤田先生 中・高の職員室は一緒なので、授業内容について「こんなことを題材にしたらどうだろう」という話はよくしています。教科内の連携は非常に良いと思います。

社会科には何名くらい先生がいらっしゃるのですか。

藤田先生 教諭が10名、講師が3名です。

大貫先生 入試問題の作成は自分がおもしろいと思っても採用されないこともあるので、今回の問題も採用してもらいたいという気持ちで作成しました。

藤田先生 入試問題になり得るかどうかで教科で議論を重ねます。

大貫先生 最終的にこういう形で出させていただくことができたのでよかったです。

渋谷教育学園渋谷中学校/校舎内

渋谷教育学園渋谷中学校/校舎内

インタビュー2/3

渋谷教育学園渋谷中学校
渋谷教育学園渋谷中学校地上9階・地下1階の校舎は、地域との調和と快適な環境をコンセプトとして設計されており、都市工学の先端技術が駆使されています。これからの新世代にふさわしい、充実した学校生活を提供されています。教育目標は、21世紀の国際社会で活躍できる人間を育成するため「自調自考」の力を伸ばすことを根幹に、国際人としての資質を養う、高い倫理感を育てる、という3つです。
学習面における「自調自考」を達成するために、シラバス(学習設計図)が活用されています。シラバスは、教科ごとに1年間で学習する内容と計画が細かく書かれたもので、家づくりにたとえるならば設計図にあたるものです。シラバスをもとに、生徒自身が「いま何を学んでいるのか」「いま学んでいることは何につながるのか」ということを常に確認し、自ら目標を設定することで学習効果が上がるように指導されます。「何を学び、学んでいることは何につながるのか、全体のどのあたりを勉強しているのか」を確認しながら、授業に目標を持ち積極的に参加して、毎日の学習に取り組むことができます。外国人教師による少人数英語教育が実践され、さらに、中学3年生から、希望者は英語以外にもうひとつの言語を学ぶチャンスがあります。ネイティブの教師と一緒に自分の世界を広げてみましょう。開講講座は、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語です。海外研修は希望者を対象に、中学のオーストラリア研修、高校のアメリカ・イギリス・シンガポール・ベトナム研修があります。研修の目的は若者交流です。異文化理解や語学研修など、さまざまな経験を通して交流の輪が広がります。海外からの帰国生も多数在籍しており、留学生も受け入れています。
自分を律する心を養い、一人ひとりの人生をより豊かにし、人のために役に立ちたいと思う人間を育むため、生徒の発達段階に合わせたテーマで、6年間で30回にわたる「学園長講話」が行われています。