出題校にインタビュー!
桐朋中学校
2016年11月掲載
桐朋中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.成長に伴い発表することがおもしろくなる
インタビュー3/3
テーマの本を読んで考えをまとめる中2「文作」
原口先生 中2は「文作」という授業が週2時間あります。読書を促す時間(大体週1回)を設けて、そのまとめとして作文を課しています。
香川先生 学期ごとにテーマを設定し、それに関する本を数冊読みます。読んだ本を材料に、テーマについて考えたことを1500字程度でまとめます。
原口先生 「友情」がテーマなら、生徒からお勧め本のリストを出してもらい、読んでいない人が読みたくなるような簡単な紹介文を書き、それを教室に掲示したり配布します。読む本は自分で探すのが基本ですが、図書館と協力して関連本を紹介するコーナーを設けてもらっています。
桐朋中学校/図書館
調べ学習に欠かせない図書館がさらに充実
香川先生 新校舎建設で図書館も新しくなりました。学校図書館としては珍しいICタグによる蔵書管理制度に移行。蔵書数は約6万5000冊ですが、8万冊まで増やせる書架が並んでいます。
原口先生 新校舎では学校で一番魅力のある場所に図書館を設けました。みや林に面したカウンター席は景色がよく、居心地がいい“特等席”です。
香川先生 貸出数は年間2万5000件以上で、男子校としては図書館の利用率が高いと思います。環境がよくなったことで利用はさらに盛んになったのではないでしょうか。
図書館内には調べ学習の利用を目的に、閲覧スペースとは区切られた「スタディエリア」を設けました。中2の最初の読書の時間は、本を持参しなかった生徒が図書館で探せるようにスタディエリアで行いました。
原口先生 授業の調べ学習に図書館をよく利用します。司書に調べ学習で図書館を利用することを知らせておくと、それに見合うコーナーを作ってくれます。教員と司書の連携はうまくいっていると思います。
桐朋中学校/図書館
「天声人語」を教材に、社会に目を向ける姿勢を養う
香川先生 中3では朝日新聞の『天声人語』を教材に使い、まとめとして「私の天声人語」を書いて発表するのが定番になっています。
原口先生 生徒の視点は、鉄道のように自分の興味・関心のあることや、環境問題のように社会的な出来事など様々です。環境問題を取り上げる生徒が多いのは、中3で公民分野を学ぶこともあって社会に目が向くようになるからでしょう。
香川先生 天声人語は1970年代に深代惇郎氏が書いたものも取り上げます。40年以上前に書かれたものですが、現代と共通する問題、未だに解決していない問題、さらに複雑化している問題がたくさんあるので、「今どうなっているか?」と生徒に意見を促します。
原口先生 「僕は○○だと思います」と発言する生徒がいると、他の生徒も刺激を受けて、「自分も発言して話題の輪の中に入りたい」と思うようになり、新聞をよく読むようになったり、世の中のことをつかもうとするようになります。
桐朋中学校/図書館
質疑応答が活発になるよう教員が助け船を出す
香川先生 国語科では30年ほど前から、生徒による発表形式の授業を行っています。作品や著者について調べたり、読解したことをグループで話し合い、発表します。
中1・中2のうちは生徒から質問がなかなか出ません。そんなとき、私は“ツッコミ”の質問をして発表を補助します。特に小説は場面が進むにつれて、前の場面では気づかなかった意味がわかってくることが多々あります。そこに気づかせるには、教員がある程度関与しないと発表のダイナミズムが失われてしまいます。
ただし、1つ間違えると生徒の自主性を損ねます。生徒が「先生がなんとかしてくれる」と安心してしまわないように、いい緊張感は保たなければなりません。
原口先生 授業の進め方は教員によって異なります。受験勉強を通して「こう読めばいい」という読解パターンが染みついている場合は、「君は本当にそう思うのか?」と投げかける教員もいます。型どおりに書けば合格ラインに達しますが、再度考え直すことで、読解内容と自分の問題意識を絡めながら作品と向き合うように促します。
自分のプライドをかけて、1人で発表する生徒も
原口先生 みんなの前で発表することにプレッシャーを感じたり、「やりたくない」と後ろ向きになるのでなく、発表することに「やりがい」を感じてほしいですね。自分の考えをみんなに理解してもらえばうれしいですね。
高校になると1人で発表する生徒もいます。自分のプライドをかけて、「みんなに納得してもらう!」という迫力を感じます。恥ずかしさよりも伝えたい気持ちが強くなり、心の成長がうかがえます。
それができるのは読解力も伴っているからです。ただの思いつきや自分勝手な曲解では聞き手に納得してもらえません。自分なりに深く読み取って鑑賞に近い意見も出てくるので、発表が実りあるものになります。
発表の授業は思うようには進まないものですが、そこにおもしろさがあります。意外なところで意見がぶつかり合ったり、自然発生的に議論が始まることもあります。これからも物事に対して主体的に考える姿勢を養い、かつ自分の意見を相手にきちんと伝えられる生徒を育てていく構えです。
桐朋中学校/共用棟2階テラス
インタビュー3/3