シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

桐朋中学校

2016年11月掲載

桐朋中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.成長に沿った独自教材で国語力を鍛える

インタビュー2/3

素材文は小学生の想像力が及ぶ内容を選ぶ

原口先生 入試問題は、本文を読んだ受験生が「こんな考え方もあるのか」という発見や、「こんなふうに思うこともあるんだ」とおもしろがってもらえるような、いい出会いになる作品を選びたいと思っています。新たな視点の発見を受験生も楽しんでほしいし、作品との出会いが受験生の表現に投影されるような出題を心がけています。

香川先生 素材文は、受験生が身近に考えられるもの、想像力をはたらかせれば思い当たるものを選んでいるつもりです。小説の場合は小中学生が登場するものが多く、大人の目線で書かれた作品でも、子ども時代を振り返る内容が多いと思います。
入試問題は受験生にとっては本校の“入口”のようなものです。ある中1が、入試に出した本文を覚えていたときはうれしかったですね。

国語科/原口 大助先生

国語科/原口 大助先生

主語と述語がねじれた文は、わかりにくさの典型

小学生の段階で、国語科としてどこまでの「表現力」を求めていますか。

香川先生 この問題の記述は経験した例を挙げるため、結構長くなることを考慮して、表現力というよりも「伝わりやすさ」を重視しました。つまり、読み手を意識して書けているかどうかです。わかりにくい文の典型が主語と述語のねじれですが、一文が長くなると文章がねじれやすくなります。
同じようなことをくり返し書いている答案もあります。同じことでも発展させた内容ならいいのですが、単なるくり返しは読み手に間延びした印象を与えます。

桐朋中学校/図書館

桐朋中学校/図書館

中1「表現」の授業で相手に伝える力を鍛える

原口先生 主語と述語のねじれなど文法的なことは入学後に鍛えます。中1は読解が中心の授業とは別に、「表現」という授業を週1時間設けています。誤解なく相手に伝わる文章が書けるように、オリジナルプリントを使って短文練習をします。
例えば、夏休みの課題で書いた読書感想文の中から、ねじれた文章を抽出して手直しさせます。自分の文章だけでなく友達の文章も直します。生徒が文章と向き合う授業は10年ほど前から始めています。

香川先生 国語の力は精神的な成長と密接に関わります。中学では独自のカリキュラムのもと、中1は「子供の世界から」、中2は「視点・発想の広がり」、そして中3は「社会的な視点、生き方に関する問題へ」というテーマを立て、主体的に考える授業を展開しています。

桐朋中学校/図書館

桐朋中学校/図書館

インタビュー2/3

桐朋中学校
桐朋中学校1941(昭和16)年、財団法人・山水育英会(山下汽船社長の山下亀三郎の基金を基に設立)を母体に第一山水中学校を創立。戦後、山水育英会を解散して桐朋学園を組織、47年桐朋第一中学校とする。翌年に高校が発足し、桐朋中・高等学校と改称した。現在は同じ敷地に小学校から高校までがある。
一人ひとりの生徒を、豊かな心と高い知性をもつ創造的人間として育成することに力を注いでいる。真に有為な良き社会人になるために、地球的視野に立ち、自立した人間として、自己を生かすとともに他者を生かす、このような人間形成を目指しているのが21世紀の桐朋教育。よって教育目標は、「自主的態度を養う。他人を敬愛する。勤労を愛好する」である。
一橋大学を中心とした国立の文教地区にある。自然林の緑に囲まれた2万3千坪の敷地に、2016年、新校舎が完成した。本物に触れるための天文ドーム、各種実験室、プラネタリウム等の専門用途の施設が充実している。6万5千冊の蔵書をもつ図書館は、DVD500本も揃え、生徒の利用頻度が高い。総合体育館は、種目に合った床ダンパーにより運動ストレスからの障害を予防する配慮がされ、視聴覚設備の整った保健教室も備えている。
オリジナル教材やプリントを使いながら系統的に理解し、思考力と表現力を伸ばす指導が特徴。英語は『ニュートレジャー』を使う。英語は外国人教師による会話練習や海外とのEメール交換、理科は実験・観察、社会は社会科見学などで理解を深めている。選択制の段階別授業は高校の英語総合、数学などで実施。中1から、夏休みや平常時に指名制補習もある。テーマ選びから始める夏休みの自由研究も大きな成果を上げている。高校からの入学生とは高1で混合。高2からも文系・理系のクラス分けはぜず、選択科目で自分に合った学習をする。
「行事は生徒が創る」という方針で、修学旅行、遠足、運動会、学園祭など多くが生徒の企画・運営で行われている。自主性尊重は進路指導にも生かされ、在卒懇と呼ばれる懇談会で、卒業生に仕事選択の動機などを聞く。高2の在卒懇では大学で教鞭を執る先輩から学部の内容やその選定のアドバイスを聞き、高3での大学選択につなげる。クラブ活動も盛んで中学生は9割以上の生徒が加入。サッカー、バスケットボール部などの活躍は有名。特にサッカー部・バスケットボール部は中高とも都内トップレベル。陸上競技、野球、オリエンテーリング、囲碁・将棋なども優秀な成績を収めている。高校は制服なし。