シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

桐朋中学校

2016年11月掲載

桐朋中学校【国語】

2016年 桐朋中学校入試問題より

次の文章は、植物に関わる活動を積極的に続けている西畠清順さんが書いたものである。
これを読んで、後の問に答えなさい。

(略)
普通、園芸の先生や講師なら誰しも、「どうやったら植物をうまく育てられるか」ということをさまざまな方法で教えます。ですが僕は逆に、まず、「自分が大事に思っている植物を、枯らしてしまったときのショック」を伝えたかったのです。
その後、僕は植物の生きるメカニズムを説明して、正しい〝手術〞の方法を教えました。子どもたちの飲み込みはすばらしいものでした。二日目の手術はみな、大成功に終わったのです。
誰かに何かを教えたいときには、初めから丁寧(ていねい)に教えるのが効率がよいとは限りません。失敗は成功のもとといいますが、〝失敗してもいいからやってみよう〞という失敗と、〝絶対成功させてやる!〞という気持ちのもとでの失敗は、まったく別物なのだと思います。後者の失敗では大きなショックを味わいますが、そこから学ぶことは非常に大きいのです。
あの授業は、そういうことを如実(にょじつ)に物語っているのかもしれません。
(略)

(西畠清順『教えてくれたのは、植物でした』〈徳間書店〉による。)

(問)――線部では二種類の「失敗」が話題になっている。君自身は今、どちらの「失敗」が大切だと考えているだろうか。君自身の経験を例にしながら、できるだけくわしく述べなさい。なお、どちらの立場で書いても、そのことで採点が左右されることはありません。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この桐朋中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

以前、ダンスの発表会に自信がないまま臨んだとき、失敗してもいいからやってみようという気持ちで失敗したことがある。このとき、悲しさや悔しさは、それほどこみあげてこなかった。確かに、この「“失敗してもいいからやってみよう”という失敗」も、チャレンジする気持ちとしては意味がある。だが本当は、予期せぬ失敗のショックから立ち直ることが成長につながるはずなので、今は「“絶対成功させてやる!”という気持ちのもとでの失敗」を経験することが大切だと考えている。

解説

この問題は、自分の経験を例に出しながら意見をまとめていく自由記述です。設問では、「“失敗してもいいからやってみよう”という失敗」と「“絶対成功させてやる!”という気持ちのもとでの失敗」の二つのうち、どちらの失敗が大切だと考えているのかを記述することが求められています。設問に「君自身の経験を例にしながら」とあることからも、今までの自分の生活をふり返り、過去の経験を思い起こし、それを答えの中に盛り込みながら「失敗」に対する自分の考えをまとめていきましょう。

最近の入試問題では、文章に書かれている内容と関連することがらについての意見を求められることが見受けられます。文章を読んだとき、自分の日常生活をふり返ったり、文章に書かれたことを自分と重ね合わせたりする視点を持つことも大切といえるでしょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

文章の中で、「“失敗してもいいからやってみよう”という失敗」と「“絶対成功させてやる!”という気持ちのもとでの失敗」という二つの失敗に関する表現が出てきました。この二つのうち、どちらの失敗が大切だと考えているのか、自分の意見を記述することが求められています。さらに、設問の投げかけに「君自身の経験を例にしながら」とあるように、この問題に取り組むときには、自分自身の過去の経験と、失敗に対する自分の考えを結び付け、言葉にしていく必要があります。

自分自身の体験と物事を結び付けて考える力は、知識どうしをつなげることはもちろん、身の回りにある様々なことがらどうしをつなげ、新しい視点を身につけることとも関連しています。さらに、今回考えた「失敗」に関する考え方を明確にすることは、子ども自身が日々の暮らしの中でも活かすことのできる、新しい価値観を持つことにもなるでしょう。

この問題では、今後、子どもたちが生きていくうえでも大切な力が試されており、また、問題に向き合った子どもが大切な価値観を身につけるきっかけにもなりうるものであるという点に魅力を感じました。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。