シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

芝浦工業大学柏中学校

2016年10月掲載

芝浦工業大学柏中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.自然の中で過ごす時間をつくろう

インタビュー2/3

環境問題など時事的問題も意識して出題

相馬先生 入試問題は、あまり奇をてらわず、難しすぎないように心がけています。また、自然現象に興味を持っているか、時事的ニュースに触れているかということも意識して作問しています。
時事的な問題は、理科の科目横断的であり、社会科など他教科とも関連します。化学分野で出題した燃料電池の問題は、物理の教員からも候補問題として挙げられました。環境問題は現代人にとって重要な課題です。入試問題でもできるだけ取り上げようという暗黙の了解が、理科教員の中であります。
中学入試は高校入試ほど出題範囲の制約が厳密ではありません。その点では出題の創意工夫できるので、科学的な思考力を試したり、自然に対する興味・関心の度合いを計測する問題を作りやすいように思います。

芝浦工業大学柏中学校 人工気象器

芝浦工業大学柏中学校 人工気象器

普段の授業を反映して実験形式の入試問題が多い

相馬先生 本校の理科教育は実験を基本に据えており、入試の出題も実験形式が多くなっています。実験も積極的に行っています。中学はおそらく半分程度は実験しているのではないでしょうか。本校は緑豊かな増尾城址総合公園に隣接し、自然観察にもってこいの環境です。中学の生物の授業は積極的にフィールドワークをしています。

高校は授業の3~4割が実験ですから、実験室はいつもフル稼動です。

まずは山野の草木を眺め、星空を見上げてみよう

小学生のうちに「こんなことをしておいてほしい」ということはありますか。

相馬先生 生物の教員としては、自然に親しみ、モンシロチョウとアゲハチョウを見分けられるなど、日本でよく見られる昆虫や植物を見て、触れて、知ってほしいですね。

実体験が伴わない、知識だけの頭でっかちにならないためにも、内容はともかく、自然の中で過ごす時間を取るようにしましょう。星の動きを学ぶなら天の川を見たことがある方が理解しやすいと思いますが、最近は天の川を見たことがない子どもが多いのが残念です。

普段の生活で自然と親しむ時間を設けるのが難しいなら、休日にそうした機会をつくってあげてください。例えば、地方に旅行に出かけたら山野の草木を眺めたり、夜は星を見上げてみる。そうしたことならどのご家庭でも可能だと思いますし、家庭の理科教育としてはこのくらいで十分だと思います。理科に興味を持つ下地ができていれば、中学、高校で学力も伸びていきます。

本校の中学の科学部員が約40名ということからも、理科に興味のあるお子さんが入学していることがうかがえます。おそらく幼い頃から自然に親しんでいるのではないでしょうか。そうしたお子さんが入学してくれるのは大歓迎です。高校生を見ていると、元来、理科に興味のあるお子さんが中学で実験をたくさん経験することで、さらに理科への興味が高まっているように思います。

生物科/相馬融先生

生物科/相馬融先生

生徒が自由に振る舞えるのびやかな学校

相馬先生 宿題が多くて生徒たちは忙しい日々を送っていますが、教員が頭ごなしに「やりなさい」という言うことはあまりありません。のびやかな雰囲気の中で6年間過ごせる学校であり、穏やかな生徒が多いように思います。

理科の教員同士は仲が良く、普段の雑談の中で自然と情報交換できています。私が教えているのは高2と高3ですが、中学担当の教員と、今、中学でどんなことを教えているかよく話しています。「その内容は中学生には難しいから、高校できちんと説明しますよ」というように、教員同士がコミュニケーションを密にすることで、中学と高校の学びがうまくつながるように心がけています。

教え方については各教員に任せられています。そうした自由度の高さは、生徒にとってもいい影響を及ぼしているように思います。

芝浦工業大学との高大連携について教えて下さい。また、理系の大学の附属校ということで、理系に進学する生徒が多いのでしょうか。

相馬先生 中3から学科説明会を開き、高2のオープンキャンパス参加の他に、高3に大学の研究室見学があります。高校の課題研究では大学の設備を利用させてもらうこともあります。

本校は他大学進学も多く、進学先の理系と文系の比率はおおよそ7対3です。学力的には同程度だと思います。女子は文系が多いですが、理系進学者も結構います。

芝浦工業大学柏中学校 実験風景

芝浦工業大学柏中学校 実験風景

インタビュー2/3

芝浦工業大学柏中学校
芝浦工業大学柏中学校芝浦工業大学は、1927(昭和2)年に有元史郎が創設した東京高等工商学校が前身。80年には芝浦工業大学柏高等学校(男子校)が、新しい高校教育を目指して創立。創立10周年には男女共学に。創立20周年を迎える99(平成11)年に中学校を新設した。大学は06年に豊洲へ移転した。04年に文部科学省よりスーパーサイエンスハイスクールに指定された。
増尾城址公園に隣接し、自然環境が豊か。全校舎にLANを整備するなど施設面の充実も素晴らしい。
なかでも人工芝グラウンド、グリーンホール、ソーラーハウスプールは自慢の施設。そのほかグラウンド、カフェテリア、売店などを備えている。コモンスペースではインターネットに自由アクセス可。
「創造性の教育」「主体性の教育」「生きる力の教育」「感性の教育」「健康と安全の教育」の5つを教育方針の柱とする。
探究活動に力を入れており、生徒自らが課題を設定し、様々な困難を乗り越え、粘り強く取り組む経験を大切にしている。豊洲の芝浦工業大学中学・高校とは兄弟校。
きめ細かな指導と基礎学力の徹底が特色。一日の始まりは25分のモーニングレッスンで、読書、計算、英読の学習などにあてている。外進生とは高1まで別クラス。放課後は補習や上位者講習などを実施。付属校だが難関大学現役合格を目指したカリキュラム編成で様々な進路に応じたコースを選択することができる。
高校で20年以上の実績をもつ独自教科「総合学習」をさらに充実・発展させるため、中1から「ワールドデイ」を実施。環境・国際などをテーマに自ら問題を発見し、自分なりの答えを出す力を養う。高杖での中1グリーンスクール、中2の京都・奈良研修、中3のニュージーランドホームステイなど、体験学習の機会も多い。1人1台のノートパソコンをもち、中2からは全員が教材Webページ作りのコンテスト「Webコンテスト」に参加するのは、中学校開校時から続く特色の1つ。クラブ活動は、原則として月・水・金・土曜日の活動。野球、サッカー、吹奏楽、演劇、鉄道研究など18のクラブ・サークルがあり、一部を除き中高別に活動する。ノーチャイム制。