シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

暁星中学校

2016年08月掲載

暁星中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.自分が進む道は自分の責任で切り拓く

インタビュー3/3

教えすぎないことで生徒自身に考えてもらう

曽根先生 数学は解法パターンを暗記するような学習では、あるレベルを超えると全く通用しなくなります。特に医学部を目指す生徒には「それでは将来行き詰まるぞ」と繰り返し話しています。

生徒には「なぜ」を問いかけて考えてもらうようにしています。数学はいろいろな定理がありますが、「なぜ」を意識しながら学習すると、共通点が見えてきます。すると、本当に覚えなければならないことはさほど多くないことに気づくでしょう。

教員があれこれ言い過ぎると生徒が「考える」ことを遮ってしまいます。私の授業では必要最低限のことだけ教えて、それをどのように使うかなど、それを子どもに投げかけるようにしています。

企画広報部長/髙橋秀彰先生

企画広報部長/髙橋秀彰先生

適時・適切な声がけで生徒に自信を持たせる

曽根先生 生徒が数学嫌いになってしまうきっかけの1つが、自信を失ったときです。自信回復の“妙薬”は「問題が解けた」という成功体験です。特に苦手な生徒には、問題が解けたら「できるじゃないか!」とほめます。すると生徒も乗ってきます。「もっとがんばろう」とやる気になってくれたらしめたものです。

元来、やればできる力はあるので、マイナス思考のスパイラルに陥らないうちに教員が手を差し伸べます。生徒の変化に素早く気づいてあげられるのは、目配りが利く少人数制だからということもあるでしょう。

数学は積み重ねの教科ではありますが、単元が変われば1からスタートするようなところがあります。単元が変わったときも自信回復のチャンスです。「次の単元はしっかりやれよ」と声をかけて励まします。

髙橋先生 男子はモチベーション次第なところがあります。どうやって生徒を乗せるか、そこは教員の腕の見せ所です。

授業をきちんと受けていた学年トップの生徒

数学で目立った力をつけた卒業生や在校生はいらっしゃいますか。

曽根先生 一昨年、私が担当した学年に、毎回非常に簡潔かつ不足なく答案を書いてくる生徒がいました。時間制限のある試験でそうした答案が書けるのですから、採点するたびに感心させられました。

梅津先生 数学は得意中の得意でしたね。その生徒は塾に通わず東大理Ⅲに現役で合格しましたが、いつもきちんと授業を受けていた姿が印象に残っています。成績が学年トップの彼の姿勢に周りも影響されて、授業は引き締まった雰囲気でした。

結局、普段の学習をきっちりやれる生徒が伸びていきます。英単語を覚えるところまで教員はついてあげられません。教員の手を必要とするところを手助けするというのが本校のスタンスです。

曽根先生 もっと学びたい高校の希望者対象に、放課後、90分の講習を行っています。教科書の範囲にとらわれず、やりがいのある難しい問題に取り組む場になっています。

暁星中学校 創立者 アルフォンス・ヘンリック

暁星中学校 創立者 アルフォンス・ヘンリック

大学の教養科目とのギャップを埋める

曽根先生 高校の数学と大学の教養科目の数学とではかなりギャップがあります。大学の数学は証明問題が中心です。無理なく接続できるように、中高6年間は論理力や表現力に注力して教えています。「なぜそうなるのか」を意識して考えることは証明問題の対策にもなります。毎年大学入試を検討しながら、ギャップを埋めるように教材を進化させています。

相手の立場で考えられる「共感力」を養う

梅津先生 私は現在中1の担任をしています。彼らを見ていると、自分がこう言ったら相手がどう思うか、もう少し配慮できればと感じることがあります。思ったことをそのまま口にしてしまうので、中学の間はもめ事が起こりやすくなります。

本校の教育方針は「他者のために生きることのできる生徒の育成」です。他者に奉仕するためには、まず「個」を確立しなければなりません。ここで注意したいのが、他者と違うことが個性ではないことです。また、「自我の確立」と「我を通す」ことをはき違えないようにしなければなりません。

相手の立場で考えられる「共感力」や気持ちを伝えるコミュニケーション能力がついてくると、生活面が整います。すると学習に身が入るようになり、部活動も楽しめるようになります。すべてがいい方向に回り始め、充実した中学校生活を送れるようになると思います。クラスの雰囲気もぐっと明るくなります。

暁星中学校 図書室

暁星中学校 図書室

自分で下した決断なら、失敗しても次につながる

髙橋先生 世の中の傾向かもしれませんが、近頃の生徒はおとなしくなりました。よく言えば「従順さ」や「素直さ」の表れですが、「消極的」な態度とも取れます。親や教員が敷いたレールに乗ることに慣れすぎてはいないでしょうか。中にはレールを敷いてくれるのを待っている生徒もいます。

けれど、それではいつまでたっても実力はつきません。誰かにレールを敷いてもらうのを待つのではなく、間違っていてもいい、失敗を恐れずに積極的に自分の考えを述べる姿勢がほしいですね。

梅津先生 親に言われたから、教員に言われたからと受け身では伸びません。自分は何のために勉強しているのかをきちんと考えた生徒が、大学受験にしても社会人になってからも自分の足で歩んでいます。

生徒によく「最後は自分で決断しよう。責任は自分で取ろう」と言っています。他人任せの選択は、失敗したとき誰かのせいにしてしまい、なかなか前に進めません。自分でとことん考えて決断したのであれば、たとえ失敗しても受け入れられるし、失敗を糧にステップアップできると思います。

本校は広い視野を持ち、決断できるリーダーを育てていきたいと思っています。

インタビュー3/3

暁星中学校
暁星中学校1888(明治21)年、フランスの修道会、マリア会が築地明石町に生徒数6名で開校した、長い歴史を持つカトリック男子校。1890年に現在地に移転し、小学校を併設、1969(昭和44)年には幼稚園を設立し、「幼・小・中・高」の一貫教育体制を整えた。長崎の海星学園、大阪の明星学園、札幌の光星学園、調布の晃華学園などが姉妹校である。2001(平成13)年に高校募集を停止した。
皇居に程近い九段の丘に位置し、都心にありながら落ち着いた環境に恵まれている。創立100周年を記念して建設された中・高校舎、事務棟は、伝統を保ちつつも時代の先端を行く同校のシンボルとなっている。300名を収容できる聖堂や、人工芝のグラウンド2面なども完備されている。
同校は、キリスト教の精神に基づき、「自らの個性を輝かせるとともに、他者との関わりを学び、社会の核として多くの人々の幸福のために指導的役割を果たす」ことが教育目標である。語学教育に定評があり、国際的で広い視野を身につけるための基礎力として、英仏2カ国語を履修させている。
難関大学の受験を見据えた6年間のカリキュラムが、細部にわたり入念に組まれており、中学では習熟度別授業や先取り授業も行っている。とくに語学では、中1から英仏2カ国語の並行学習を行う。中学では英語を必修とし、第2外国語としてフランス語を学ぶ。高校ではフランス語を第1外国語として選択することもできる。英語は『プログレス』、フランス語ではオリジナル教材を使用している。高2で文系・理系に分かれたクラス編成となり、高3ではさらに細かい、進学希望、受験科目に合わせたコースが設置されている。東京大学には毎年平均して10名程度が合格し、早慶上智大など難関私立大にも多くの生徒が合格している。医歯系大学への進学が多いのも特色である。
高2修学旅行(北海道、6月)、中3研修旅行(広島平和学習、11月)をはじめとして、6月の運動会、中1宿泊学習や高1海外語学研修(夏休み、語学研修は希望者)、2学期の文化祭など、学校行事も多彩である。また、「暁星シャリテ」という委員会活動があり、施設慰問や街頭募金などに参加する。クラブも運動部、文化部合わせて約30あり、中でもサッカー部は、進学校にもかかわらず全国大会への出場経験があり、強さと洗練されたスマートさを併せ持つその実力は高く評価されている。文化部では競技かるた部が有名。全国大会にも出場し、去年9連覇を達成した。