シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

佼成学園中学校

2016年08月掲載

佼成学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.実験、観察、学問的なものの見方を通して、これまで気づかなかったことに気づけるようになる。

インタビュー2/3

理科が好き、という気持ちを大事にしたい

ここ数年、受験生の答案から変化を感じますか。

石井先生 理科に関しては、好きな子は好き。知識の有無ではなく、単純に興味を持っている子はたくさんいます。小学校や塾で教えていただく中で、4科で受けてくる子の解答を見ていると、問題を投げてしまうような、理科が嫌いな子はいないような気がしています。

ですから、入学後も、『理科が好き』という気持ちを持ち続けてくれるよう、実験や観察をたくさん取り入れて、楽しさや驚きを感じたところで、『理由を考えてみよう』と仕組みや原理に入っていく、という流れを大切にしています。

たとえば、どんなことをしていますか。

石井先生 中1の理科の授業は、1分野、2分野ともに2時間続きなので、基本的に実験、観察中心の授業になります。中1では、岩石を2つに切って、ひたすら紙やすりで磨いてペーパーウエイトを作ったり、(有機物、無機物では)大豆から豆腐を作ったり。中2、中3になっても、できるだけ本物を見せたり、実験をしたりしています。中2の1分野では、電気分解の実験をします。ペットボトルの炭酸飲料を開けると曇りますよね。あれを実際にやらせて、雲ができる原理を教えたりもしています。

理科・高1学年主任/石井学先生

理科・高1学年主任/石井学先生

生物的なものの見方で興味を引く

石井先生 僕自身は、今まで気に留めていなかったことに気づける授業や入試問題にしたいという思いを強くもっています。これは脊椎動物の骨格ですが、背骨(脊椎骨)の数は、動くスピード(瞬発力)とつながっているんですね。骨は硬いですが、小さい骨がたくさんつながることで曲がりやすくなります。ヘビがカエルを捕まえることができるのは、背骨の数が多いから。カエルはジャンプしますが、それは主に足の力で、陸上を歩くスピードは遅いのです。哺乳類でいえば、シマウマよりも、チータの背骨の数のほうが圧倒的に多いですし、魚も速く泳ぐには脊椎骨の数が必要です。私が全力で巻いたルアーを追いかけるのにも、脊椎骨の数が必要なのです。そんなことを中学の授業で話すと、動物の背骨に興味をもつようになります。生物的なものの見方ができるようになります。

理科では、こういうことに気づかせてあげられる機会が教科書1冊分あります。雑草にも、生き残る戦略がある。完成形にはすべて意味があるのです。意味がないものは淘汰されて、必要なものだけが残っていますから、自然界で生き抜くためにどのような意味があるのかを考えてほしいと思っています。

長期休みには希望者による体験学習を実施

石井先生 中学生の長期休み(夏休み、冬休み、春休み)には、授業ではできない体験学習を行っています。英数国は必修ですが、理社は希望制です。

たとえば今年の磯採集では、鎌倉の海岸で蟹を捕まえます。生き物の形は生活環境を表しているので、そういう視点で観察します。過去には多摩川の河原では化石掘りをしました。また、高2、高3がニワトリの解剖をやっているので、3年に1回程度、中学でも解剖をします。魚、ミミズ、ニワトリ、ネズミ(冷凍)などです。最近、虫が嫌いな男子が増えてはいますが、男子校の生徒は純粋なので、案外おもしろがってくれます。生物以外では、大気圧の延長で、一斗缶をつぶしたり、アルカリ金属を水の中に投げ込んだりと、いろいろなことをやっています。

佼成学園中学校

佼成学園中学校

生徒と教師の信頼関係が成績の伸びにつながっている

大学進学実績も伸びていますよね。

石井先生 ちょうどいい人数なんですよね。中学は例年4クラス(1クラス約30名)。僕が担当している学年(高1)は、たまたま少なかったのですが、高校からたくさん入ってきてくれて、1学年の人数が6学年の中でもっとも多くなりました。クラス分けに苦労しましたが、1クラスは26名と少ないので、一人ひとりに目が届きます。先生と生徒の距離が近いと思うので、こちらの思いが伝わりやすいのも、本校の特色です。子ども達も、少しでも成績を伸ばして希望の進路を実現したいと思っていますから、双方の思いが重なり合って、実現していく。(進学実績が伸びているのは)教え方はもとより、信頼関係が成り立っていることが大きいと思います。

試験前の勉強にしても、計画を立てて勉強するよう指導します。高校では先輩がチューターとして入って後輩の面倒を見たり、自習室を整えたりと、勉強できる体制が近年、確立されてきました。勉強合宿(希望制)も行っています。僕も本校(高校)の出身。在校生だった時もよく面倒を見てもらいましたが、その頃よりも関係が深くなっていると感じます。教師になって14年目。当初と比べても、進学実績は上がっていると思います。

中学4クラス、高校8クラス

一貫生は高校から入学した生徒さんと混ざるのですか。

石井先生 現在の高1は8クラスあり、一貫生だけのクラスが3クラス。高入生だけのクラスが4クラスです。基本的には混ざりませんが、難関国公立クラス(1クラス)は混ざります。高2になると、6クラスの生徒が混ざって、文理に分かれます。希望によりクラスが形成されますが、文系はだいたい3クラス。理系は2クラスまたは3クラスです。難関国公立クラスは、今年2年目です。初年度の学年(現高2)は、高2に上がる時に多少の入れ替えを行いました。

佼成学園中学校

佼成学園中学校

今年から一人1台、タブレット

石井先生 ICT化も進み、今年から一人1台、タブレットを持たせています。学習記録をつけさせて、生徒がコメントし、教員がチェックする、ということをやっています。1クラス分のコメントに目を通すには30〜40分かかってしまうのですが、それで学習習慣が身につくのであれば、頑張りがいがあります。休んでいる子に、こちらの様子を伝えられるツールとしても役立っています。一律の情報共有ができるので、全クラスに同じ情報を流せるのもメリットだと思います。

授業でも活用されていますか。

石井先生 授業は、ICT機器を積極的に使いつつ、黒板を使いながら説明する、これまでの形式も依然として主体です。ICT機器の授業での使い方については、取り入れたばかりで、まだ模索中ですが、今はメリットを感じることのほうが多いです。たとえば授業中に「問題を解いてみようか」と投げかけた時に、提出しているかどうかが一目でわかるアプリが導入されているので、一目で「わからない」「できない」子に気づいて、働きかけができるようになりました。

自分よりももっと使いこなしている先生がいますが、僕の実感や聞いた話では、使いやすい場面と、使いにくい場面があると思います。たとえば数学では、細かい数式などはやりにくいですが、グラフなどはタブレットのほうが使い勝手がいいようです。

持たせたからには、使い方のマナーも教育していかなければならないと思っています。中1から高3まで、6学年が一度に持ったので、この機会にしっかりと教えることが大切だと思います。ただ、中1と高3が同じルールではいけません。段階的に、任せる部分を大きくしてあげなければいけないと思います。

インタビュー2/3

佼成学園中学校
佼成学園中学校「建学の精神」は、「法華経の精神に基づき、豊かな宗教的情操を培い、知に偏らず、情・意の教育にも力を注ぎ、心身一如の円満な人格をもった平和社会の繁栄に貢献できる人間を育成する」ことである。
一人ひとりが素晴らしい心を持っていることを知り、多くの人とともに生き、磨きあい、助け合いながら、現実の社会と積極的にかかわろうとすること、また、生涯にわたり自らを支える豊かな心と幅広い視野、そして確かな学力。一人ひとりがそんな「自ら育つ力」を身につけることを目指している。
機能的で広さや採光に十分に配慮された校舎は、伸び伸びと気持ちよく過ごせる空間になっている。また、コンピュータ教室、LL教室、音楽教室などの本格的な設備も完備し、全ての普通教室に電子黒板機能つきプロジェクターおよびWi-Fi環境が整備されている。 2015年度高校入学生より導入のタブレット端末とあわせて、新しい学びの形の実現がすすめられている。
生徒と先生の距離が近く、職員室ではいつも、気軽に先生に相談する生徒の姿が見られる。生徒同士、生徒と先生、先生同士という、その人と人との関係の強さが、東京大学に5年連続で合格者が出ているのを始めとして、年々、難関大学への進学者が増加という成果につながる。もちろん、勉強面だけではなく、数多くある体育系・文化系のどちらの部活動も盛んである。